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姫と破壊神  作者: 森崎優嘉
第4章 七つの大罪
20/21

4-(1)進展

お久しぶりです。遅くなって申し訳ありませんでした。

「どうだった?」

「少しの時間だったけど楽しかったわ、ありがとう」

魔界に帰ってきたナオレイアとユーアストは魔城の最上階にいた。

「私がいなくなってから向こうでは結構進んでいるのね…別に寂しくはないわ、寧ろすごくうれしい」

「…そっか」

ずっとナオレイアを見つめていたユーアストが何かを思い出したように声を上げた。

「そういえば!魔女…ユーリスから預かり物があるんだ」

そう言ってユーアストが渡したものは手紙だった。

「ミナリーからだ!!」

あの騒ぎから一度も会っていない大切なもう一人の親友の顔が頭によぎった。





『ナオ、元気にしているかしら?ユーリがよく貴方のそちらでの話をしているから大体の事はわかっているわ…でも実際に会わないと確かめることはできないわね。今度ユーリに聞いてみるわ!

こっちでの暮らしはまったく変わりはないわ、ただ貴方が消えてしまたのがすこし淋しいわね。でもユーリから聞く貴方と彼との話は私の楽しみになっているから今後の行動に期待してるわ!!

健康には気をつけてね?貴方は無理をする人なのだから、ユーリにも伝えておいてね!

がんばってね         

                                   ミナリーゼより     』




「今後の行動ってなによ…」

(心配してくれてありがとう…)

そう思いながら遥か彼方を見つめていた。

「ナオが優しいのはケンタイロスたちの教育もそうだけど、彼女のおかげでもあるんだろうな」

「そうかな?…確かにミナリーはすごく優しいけど」

「ナオが優しいのは元からよ…どこか抜けているけど」

ナオレイアが声がする方を向くとユーリスがいた。

「ユーリ!」

「魔女…」

「破壊神、ナイを見なかった?」

「絶望の魔女?見ていないぞ」

「そう…」

(絶望の魔女…結構綺麗な人だったな)

ナオレイアは空に輝く星を見つめた。

「…え?」

「どうした…は?」

ユーアストがナオレイアの声に上を向くと、星が降ってきていた。

「は!?何アレ、落ちてくるぞ!」

「…星ではなさそうね」

「二個落ちてくる!」

3人が落ちてくる何かをじっと見ていると、それは人型をしていることが分かった。

「ひ、人!?」

「ナオは部屋に隠れろ!」

ユーアストの言葉にナオレイアは急いで部屋の中へ入った。

「あれは…ナイ?」

「もう一人はなんだ?」


『いいところにいたわ!』

ネイの声が頭に直接響いた。

『ユーリス、今私が追いかけている男が器を持っているわ!』

「なんだと!?」

『あなたたちも手伝って!でも姫はしっかり守るのよ?』

「魔女、ナオを頼む」

「ちょっと、破壊神!?」

「お前だってまだ不安定すぎる、それにユージに怒られたくないしな」

「よく分かっているじゃないか」

いつの間にかユーリスの隣にユージアとタツータがいた。

「ユーア!援護するよ」

「頼んだぞ、タツ」

2人は空を舞った。



「さて、と僕は2人の姫を守るとしますか」

「あの…ユージアさん」

「なんだい?」

「上から降ってきたのはナイさんと人間なんですか?」

ナオレイアの質問にユーリスが小さくため息をし、ユージアは苦笑いを浮かべた。

「人間、ではあるのだけど…人間だった、の方が正しいかな」

「人間だった?」

ユージアは頷いた。

「前に七つの大罪のことは話したけど、大罪にはそれぞれ器があって器というのは身の周りのあらゆる物の事なんだ。例えば鏡とかね…今魔女が追いかけていたアレは大罪の一つを持っている、その中の悪魔と契約をした人間はもう人間ではない」


悪魔という言葉を聞いてナオレイアはぞっとした。魔族という言葉に聞きなれているというのに…前にユーアストが自分を原罪だった初代国王の生まれ変わりだと言った。ならば自分は…


「ナオは人間よ、正真正銘のね」


ナオレイアの思考を遮ったのはずっと黙っていたユーリスだった。いつもはツインテールのユーリスが珍しく髪をほどいているため一瞬驚いた。


「そう、なんだ…ねえ、ユーリ」

「なに?」


ナオレイアは静かに手を挙げ…


「その髪型ナイス!!」


ぐっと親指を立てた。


「……」

「ふっ」


ユーリスは黙りユージアは小さく吹いた。その場は謎の空気になったが誰もそのことに突っ込むことはしなかった。


「…ナオ」

「なに?」

「私の髪型はどうでもいいけど、今破壊神達が戦っているのは…」


ユーリスは空を見た。空ではユーアスト達が戦っているのが見える。


「…今戦っているのは七つの大罪の一つ、強欲(avaritia)よ」

「強欲…」


ナオレイアはそう呟きながら空を見た。ユーアスト達が戦っているのはおぞましい化物、あんなものが元人間だったとは思えないくらいだった。


「…一体何を欲したのかしらね、宝、権力それとも強い力なのか」

「いつの時代の人間も願うことは一緒だな…愚かなことだ」

「いくら善人な人にも誰にも分からない裏があるの…もしかしたら自分ですら気づかない」

「それが人間さ」


ナオレイアは黙ってユーリスとユージアの会話を聞いていた。自分が口を出してはいけない、そう感じたから。


「人間にも化物にもなれない」

「人間だよ、君は」

「人間って何かしら?」

「それは難しい質問だね」


ユーリスはナオレイアを見た。


「善な人間、悪の人間、輪廻、悪魔に逆らえず自分の意思で悪にとりつかれる…いろんな人間がこの世にいるわ。そしてたくさんの種族もいる。」

「輪廻」


ナオレイアは呟いた。


「大いなる罪を背負ったミナユーイア王国初代国王。その魂は長い年月を経て輪廻し、ナオレイアに生まれ変わった…幸いなことに記憶までは引き継がれなかった。でも…宿命は引き続いている。」


ユーリスはすぐにユージアの方を見たのでよく見えなかったがその顔は今までナオレイアが見たこともない表情をしていた。…何かに耐える辛そうな顔、今でも泣きそうな…そんな顔だった。


宿命とは一体なんだろう。ナオレイアはこの言葉を心の中で質問し、いまだ空中で戦い続けているユーアストを見たのだった。




誤字・脱字があったら教えてください。

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