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姫と破壊神  作者: 森崎優嘉
第3章 魔界
17/21

3-(5)ユーリス

私が生まれたときから分かっていた…自分のやらなければならない事を。

だから父から知らされたときは納得できた。





私には宿命がある…それは『すべて』のバランスを保つこと。あの子と世界とのバランスを保つことが私の宿命。…それは永遠に終わらない宿命。





彼と出会ったのは私が5歳の時だった。父から自分の宿命を聞いてからも必死で宿命の力に耐えていた時、私と彼は出会った。

「今回はこの子が宿命を…」

彼は夜に私の部屋に来た、彼は誰にも内緒でここに来たと言った。

「あなたは、誰?」

「僕はユージア、破断神ユージア」

「ゆーじあ?」

そう、と言って彼は優しく頭を撫でてくれた。

「君の名前は?」

「…ユーリス」

「ユーリス…綺麗な名前だね」




それから毎日、私は彼と遊んだ。

「ユージア、早く早く!」

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」

…あの日もいつものように遊んだ。いつもと変わらない、平凡で楽しい日。





でもそんな日々は続かなかった。





それはいきなりだった。

目の前には割れた花瓶の欠片、ボロボロになった絨毯、叫ぶ使用人たち、そして自分を覆う紅い光…。




その瞬間、私が大好きな彼に抱きしめられ、気を失い、目が覚めたときにはもう…





…感情が無くなった…本当に一瞬のことだった、あの力は生まれた時から私を蝕んでいたのだ。





彼は

「絶対に君を守るから」

と言った…でも、無理よ…私の中はもう蝕んでいる、感情も何も思わない、ただの生きた人形…。





でも…あの子と出会って私は変わろうと思った。何も分からないあの子を守ろうと思った。


宿命だからではなく、親友として、私はあの子を守りたい、守らなくてはならない。


あの子と出会って、私は少し感情を戻すことができた。まだほんの少しだけど…これからも戻すことができるかもしれない。






そうすればいつか…いつか…昔の私に戻れるのだろうか…父に、母に甘えていた頃に、使用人とたくさん話したあの頃に、そして…ユージアと笑って遊んだあの頃に。







「戻れるよ、きっと」

「本当に?」

彼は言った、優しく私の頭を撫でながら。

「あぁ、たとえユーリスの力がバランスを崩してしまっても…僕が守ってあげる」

「本当?…約束ね、ユージア」

「約束だよ」

そう言って彼は笑った。




今でも怖い…あの子…ナオが魔界に来たとしても、私がバランスを崩してしまったら…そう考えると震えが止まらない。



「大丈夫?ユーリ」

本当は大丈夫じゃない…けど

「大丈夫だよナオ」

ついそう言ってしまう…彼女だけは傷つけたくないから。

「ユーリスも大変ですものね」

「それを絶望の魔女に言われたくない」

「…大丈夫だから」

私は少し震える声で言った。誰も気づいていない様だけど、やはり彼は分かってしまうか。

「ユーリスも疲れたようだし…僕とユーリスは部屋に戻りますね」

「あぁ、お疲れ」

「ユーリス、しっかり休んでね」




「ユージアには適わないよ」

「え、そうかい?」

私は頷いた。

「…昔からお前を見ていたからな」

口調が昔に戻ってる…やはり私と2人だけの時のユージアは私の知っているユージアなんだ。


「今のユーリスは、あの時のユーリスよりも僕が好きなユーリスに近くなっている…姫のおかげかな」

「ナオには…いろいろと助けてもらったし、宿命だからじゃなくて…自分から彼女を守りたい、そう思ったの」

部屋に入り、私はベットに座って静かに呟いた。でもその呟きを聞いたらしくユージアは口を開いた。

「いい事じゃないか」

その一言だけ。




私はユージアに抱きついた。

「私ね…今でも怖いの、でも、ユージアが守ってくれるから…そう思ってずっとがんばってこれたの、まだ昔のようには戻れないけれど…


……いつか、戻れたら一緒にお話をしたい、また遊びたいの!」


「ユーリス!?」


!?…自分でも驚いた…私は、笑っているのだ…昔のように…。


「ユーリス!君が戻れたら…約束の通りになろうね」

「…うん!」


私たちは抱き合った、お互いの熱を確かめるように…。


誤字・脱字がありましたらお知らせください。

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