3-(3)すべて
「全てを…」
ナオレイアの呟きにユーアストは頷いた。
「すべてはナオが生まれてから始まった」
「私が生まれてから?」
ナオレイアは手を強く握り締めた。
「この世界には七つの大罪というものが存在します」
ユージアが腕を組みながら言った。
「傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲…これが七つの大罪」
ユーリスは何かを恐れているかのように静かに言った。
「元は一人の人間に宿っていた大罪がある者によって七つに分けられたんだ。」
「…それと私に何の関係があるの?」
「…大罪が宿っていた人間は、ミナユーイア王国初代国王なんだよ」
ナオレイアは驚いた。
「初代…国王?」
ユーアストは頷いた。
「初代国王は罪に穢れた王だった、王は大きな力を持っていたから…あのままにしておくと世界が壊れてしまう、だから初代国王の罪は七つに分けられた」
「そして、穢れがなくなった初代王は世界と自分のバランスが取れなくなった。そこでワータス家がその役目を担った。」
ユーリスは俯いた。ユージアは心配そうにユーリスの頭を撫でた。
「はっきり言うと…ナオは先代国王の生まれ変わり、つまりナオは穢れがあるんだ」
「は?」
ナオレイアは唖然とした。
「それじゃあ!!私は!?私はどうなるの!?」
動揺して叫ぶナオレイアにユーリスは抱きついた。
「落ち着いてナオ…大丈夫、ナオと世界のバランスは私が守っているから…だから、大丈夫」
そう言ってユーリスはナオレイアの背中をさすった。
「…ユーリが?」
「うん。ワータス家は代々王族を穢れに憑かれないように守ってきたの、でもナオに関しては特別…ナオをあの哀れな先代国王のようにさせてはならない…」
ユーリスはそう言って目を瞑り、ナオレイアの胸に顔をもぐらせた。
「ユーリス、決して無理はしないように」
ユージアが苦しげに言った。
「…分かってる、でも…守らないと…ナオを…あの悲劇を、二度と起こさせないように…」
ユーリスの言葉にユーアストは顔を顰めた。
「悲劇?」
ナオレイアは抱きつくユーリスに少し力を入れた。
「初代国王は…多くの民を殺したの」
「え…」
「初代国王は…罪のない民を殺した…それだけじゃない、王自身の親友を親を殺したの」
ユーリスが小さく呟いた。
「親も…?」
ユーリスが頷いた。
「あれは…酷かったな」
ユーアストが呟いた。
「確かに…あの時、初めてタツが切れたね」
「ん?そうだっけ?」
ユージアの言葉にタツータはわざとらしく肩をすくめた。
「そんなことがあったの…」
ナオレイアはユーリスを見た。
「ユーリ!?」
「ぐっ…」
ナオレイアはユーリスがいきなり苦しみだしたのを見て何かをしようと思ったが、ユーリスに強く抱きつかれていたため身動きが取れなかった。
「ユーリ!どうしたの!?」
「だ…いじょう…ぶ…だから」
ナオレイアは息を呑んだ。ユーリスの瞳は青緑色から赤色に変わっていた。
(あの時と同じ色…)
ナオレイアがそう思った瞬間ユージアが素早くユーリスを抱き上げ近くのソファーに座らせた。そして手をユーリスの目に覆わせた。そしてユージアが手を戻した時にはユーリスの瞳は元の青緑色になっていた。しかしユーリスの呼吸はまだ荒かった。
「はぁ…はぁ……ふぅ……もう大丈夫」
「本当に大丈夫か?」
ユーリスは頷いた。
「大丈夫…ありあとうユージア」
ユージアは笑顔で頷き返しユーリスの頭を撫でた。
「ユーリ、大丈夫?」
「うん、心配かけてごめん」
「大丈夫だよ」
ナオレイアは笑顔で答えた。
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