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時還りの姫と光の巡守士  作者: 本郷美弥
第1章 魔獣討伐編
8/8

07 前夜


星紋巡守団(スタークレクト)の拠点に、夜が訪れた。


昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、白い廊下にはランプの柔らかな光だけが灯っている。

遠くから聞こえるのは、打ち合わせしている話し声や、鍛錬している金属音。


ニナは、自分の部屋でルディと共に悪戯っぽく笑いながら、ある企みをしていた。


「ルディ、準備はいい?」

「うむ…ワシはいつでも準備満端じゃ」


東の国にいる忍者のように、『抜き足差し足忍び足』で部屋を抜け出したのだ。



◇◇◇◇



一方、銀髪の少年は、仲間達と大浴場にいた。


「なあレイル、ニナとはどこで会ったんだ?おにーちゃんに教えな」

「誰が俺の兄ちゃんだよ」

「いーじゃん、ほら教えてみ」

「…迷子になった森で会った」


レイルの肩を組んで尋ねるのは、カインだ。


年齢はカインの方が上で、兄弟のように周りから見られているが、本人たちはライバルだと思っている。


幼い頃から星紋巡守団(スタークレクト)に入って、競い合ってきて苦楽を共にしてきたのだ。

レイルを揶揄うために、カインは今のようにたまに兄貴風を吹かせている。


「へえ、あんな可愛い子が1人でか?」

「兄を探してんだって。だから、ほっとけなくて誘った」

「なるほどね〜、確かにあの容姿に愛嬌あればほっとけないわ」

「…──お前ね、ニナは仲間だぞ」


(やっぱこいつ面白がってる)


ははっ!っと愉快に笑うカインを、横目でレイルは睨んだ。

───その瞬間、2人が横に並んでいる正面から、ブクブク泡が立ち浴槽から何かが出てくる。


「我は弟子を仲間に入れて良かったと思ってるぞ」

「お前、いきなり現れるのどうにかならねえ?ジェット」

「そうは言ってもこれがクセだからな」

「しかもな!いつニナがお前の弟子になったんだよ!?」


声がいつもより響く浴場で、レイルとジェットはわーわー言い合っていた。

その2人を静かに見つめているカインは、ふと思う。


(レイル、男が女をほっとけないって思うのは、仲間以上の感情…答えはひとつしかねえよ。…あーあ、いい女捕まえられたと思ったけど、次見つけるか)


「なーに、1人でかっこつけてんだカイン!お前もお湯鉄砲くらえ!」

「てめえいつになってもガキだな!?」

「我も参戦する」


レイルは子供のような無邪気さで笑いながら、両手を握手のような形にして、お湯をカインに向かってかけた。

ジェットも腕組みをして、微笑んでいる。


明日から、任務だというのに緊張感はまるでなく、【お湯鉄砲】で3人は一戦交えたのだ。



◇◇◇◇



それから銀髪の少年は、お風呂に上がって自室に向かうために、長い廊下をぼんやり歩いていた。


少しのぼせているせいか、ほんのり顔が赤くて…乾いていない濡れた髪がいつもより幼く見える。


肩に白いタオルをかけて、いつものように扉を開けた時────


「おかえりレイル」

「随分長い風呂じゃのう」

「おーーいっ!!」


いるはずがない人物が、ベッドに腰をかけているのだ。レイルは、目を見開いて食い気味にツッコミを入れる。


「ニナ、ルディ。お前らなんで俺の部屋にいるんだよ!?」

「部屋広いし、寂しいから遊びにきちゃった☆」

「遊びにって…まあ、まだ寝ないからいいけど」


歯並びのいい白い歯を見せながら、笑うニナにふと表情が曇った。


(あ…この表情はリーヴェ村でも見た)


「どうしたニナ」

「遊びに来たのは嘘じゃないんだけど、一緒に寝ちゃだめ…?」

「…─────へ?」


突拍子もないお願いに、ぽかんと口が開くレイル。彼は、明日の初任務が緊張しすぎて、気持ちが落ちていたのばかり思っていたのだ。


ニナは、その予想をあっさりと裏切った。

レイルの視線はふとニナの後ろにいってみると、小さな背に自室から持ち込んだ枕を隠している。


(男女で寝るのはどうかと思うけど、この状態をほっとけねーし、ルディもいるからいっか)


レイルはニナの前に膝をついて、頭にぽんと大きな手を乗せた。ルディもニナの寂しさを察して、ニナの身体に擦り寄る。


「そんな顔すんなよ、ここで3人で寝よう」

「ほんと…!?ありがとう、レイル。じゃあおやすみ」

「感謝するレイル、ワシも寝る」


ニナは一瞬にして目を輝かせ、レイルの布団に潜り込んだかと思ったら、目を瞑った。ルディも、素早く布団に潜る。


「お前ら寝るのはやっ!!!」


またもや、目を見開きツッコミを入れるのだった。



────────────

──────



数時間後──すっかり部屋も外も静まり返り、月の光が照らす部屋で3人仲良く眠っている。


わけではなく、1人の少年は目が覚めていた。


(…眠れねー、普通に考えて眠れるわけねえ)


隣を見ると、ルディを抱き枕にしてすーすー静かに寝息をたてるニナがいる。

黒いキャミソールのネグリジェは、膝下までの丈で寝返りをしてめくれ上がっていた。


「…ったく、ほんと世話が焼けるやつ」


口元にかかった桃色の髪を、骨ばった長い指でそっと退けて、しばらくあどけない寝顔を見ていたのだ。


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