05 アークレイン王国
ニナのおかげで迷子にならずに、アークレイン王国に到着して、厳重な門の前に立っている。
「すごーい…!実際に見ると立派だね」
「着いた、アークレイン王国」
生まれて初めて見る王都の景色に、開いた口が塞がらない。
口をポカーンと開けるニナに、いつもなら迷子でもう少し時間がかかるところ、スムーズに着いたため安堵の息が漏れたレイル。
ニナがいなけば、今頃げんなりした表情で帰ってきてたであろう。
「ふむ、ワシも初めて来たが中々の景色だ」
ルディは、レイルが抱えていた(ニナがリーヴェ村でもらったもの)荷物の半分を背中に乗せて、関心する。
「星紋巡守団の拠点はこの先だ」
「楽しみだな〜」
城壁に囲まれた街に足を踏み入れ、コツコツ、と大通りの石畳を歩きながら、サイドに並ぶ露店や、時計塔の役割も兼ねている教会などを見て心を躍らせていた。
人々は落ち着いた服装で、女性はドレスを身にまといレイルらに手を振る。
星紋巡守団は、人々にとって正義の味方であり、腕に星マークのバンドをつけているから、目立つのだ。
「レイル、可愛い子連れてるじゃん!彼女?」
「な、ち、ちげえって!」
「照れるなよ」
すれ違う甲冑を着た騎士に、からかわれて顔を赤く染めるレイル。
その様子を横から見ていたニナの、白くて細い腕を掴んで、レイルは自分の方へ優しく引き寄せた。そして、自分がニナに巻いた星マークのバンドを見せつけるように。
「ほら見ろ。新しい仲間のニナだ」
「よろしくね!」
「騎士団長のアルバートだ、こいつとはよく手合わせしてる仲なんだ」
「あたしもやりたい!」
アルバートは、レイルよりも少しだけ身長が高くて、体格がいい。その鍛えられた腕で、剣を本気で振られたら大地が裂かれそうだ。
褐色の肌に顎周りには、整った髭が生やされていて、とても貫禄がある。
見た目の年齢は、30歳後半ぐらい。
「威勢のいい女の子だね」
「えへへ、あたしも強くなりたいの」
「今度レイルと訓練場に遊びに来な」
「やったー!ありがとう、アルバート」
はしゃぐニナの頭に、手を置くアルバートの姿を見たレイルは親子みたいだと感じた。
もちろん、自分もアルバートのことは父親のように慕っている。
(物心ついたころには両親がいなかったって言ってたよな)
「ニナは不思議な子だ」
「お前もそう思うか?ルディ」
同じくルディも、はにかんだ笑顔でアルバートに、自身の短剣を見せて話す姿を見ていたのだ。
「ワシの一生をかけて守ってあげたくなる」
「でも、あいつはお前を守るって言ってたぞ」
「年齢で考えたら確かにワシの方が下じゃが…」
「…──お前いくつだ?」
貫禄のある琥珀色の瞳は、ケロッとした顔で言った。
「2歳じゃ」
「話し方がなんでそんなジジくせえんだよ!?」
レイルは、目玉が飛び出るほど大きく見開く。
「知らぬわ」
「…はあ、でも癖強いのはうちの仲間にもいるし、いいだろう」
片手で額を押さえて、ふらついた足取りでニナのもとに行った。
「ニナ、そろそろ行くぞ」
「そうだね!アルバート、今度遊びに行くからね」
「待っているぞ。それと、レイルの方向音痴の方も頼んだぞ」
「うん、任されました!」
敬礼をするように片手をピシッと、目の横に添えてから手を振った。
この会話で、いつもなら『おいっ!』っていうツッコミがあるかと思ったが、先程のルディに対してで疲れたらしい。
そこからまたしばらく歩いて、中央区という場所着いた。
「着いたぞ。ようこそ星紋巡守団へ」
案内された建物は、白い石造りで中央に星紋巡守団の星の紋章が掲げられていて、屋根にもその紋章が入った旗が風になびかれている。
「うわあ…大きいね!」
「中でうちの仲間が待ってる。入れよ」
「では、お邪魔します」
レイルが扉を開け、ニナとルディはドキドキしながら中へ入ったのだった。
「戻ったぞー!」
ニナとルディが入った背後で、元気よく大声をあげる少年。
建物内は大理石の床に、依頼などを受ける大きなカウンター。白い壁には、金色の彫刻が施されていて、全体的に明るくとても高級感が溢れている。
それでいて、人々は落ち着いている…わけではなく、活気いっぱいで片手にお酒を持つ人や、グループでわいわいはしゃいでる人もいた。
そして、1人の男がレイル達を出迎えたのだ。
「よお、レイル〜戻りが早かったじゃねえか…って何この可愛い子」
「あたしニナ!迷子になってたレイルを拾ったの」
流れるように口説こうと、ニナの肩を抱き寄せるのは、黒髪に満月のような黄色い瞳の男。
第2ボタンまで開けている黒いシャツから覗く、陶器のような白い肌は、色気が漂いテーパードパンツも黒で締めている。
身長はレイルよりも数cm高く、年齢も同じか何個か上な印象だ。
そしてニナは、そんな男に気にすることなく、ここでもレイルの方向音痴を弄り、悪戯っぽく笑った。
「カイン、ニナに抱きつくな近い。お前も男との距離感は考えなさい」
カインと呼ばれる男と、ニナの間にレイルが割って入り、お互いを引き離す。
その行動が意外だったらしく、新しい玩具を見つけたかのように、口端を吊り上げた。
「───へえ」
「んだよ、その表情」
「いいや?ただ、俺がニナを好きになったらお前どうすんのかなって」
「…はあ?ってか、ニナは俺らの仲間だ」
レイルは本当にカインの言っている意味がわからないらしく、眉を顰める。
そんな空気を読めない似た者が、レイルの半袖の袖を掴んでツンツン引っ張る少女だ。
「ねえねえレイル、あれ何食べてるの?」
「ああ、ケーキだよ」
「ケーキ…?」
「知らねえの?」
ニナの視線の先には、クッキーを砕いて固めた上に、彩りのいいフルーツが乗ったもの。
食べたことのないニナは、そのケーキが宝石のように輝いて見えているのだ。
「色々手続きがあるけど、リーダー達もいねえし食べて待ってるか」
「わーい!美味しそう、嬉しい」
目を輝かせている彼女を見て、カインはますます興味を持つ。
「俺もニナと一緒に食おうかな。つか、ほんとに可愛いな」
「カインも食べよう!ルディも行くよ」
「うむ…」
当たり前のように、ルディに話しかけるが初めて見る人は当然信じられないだろう。
「…───」
「紹介が遅れた、ワシはルディ。2歳じゃ」
カインはあんぐり口を開けて、しばらく固まったあと一言言った。
「狼が喋った!?しかも、ジジくさ!」
「レイルにもさっき言われたばかりなのじゃ」
「……」




