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時還りの姫と光の巡守士  作者: 本郷美弥
第1章 魔獣討伐編
3/8

02 リーヴェ村


***



「なあそういえば、ニナってなんで1人でこんなところに?」


レイルはずっと気になっていたことを問いかけた。あそこら辺にはニナが言っていた通り、森林しかなかったのだ。


最初は旅をしていて、偶然魔獣に遭遇してしまったという過程を立てたが、それにしては荷物が少なすぎる。

少女は、腰に短剣と一緒にウエストポーチが装着されているだけ。


「それはね…修行だよ」

「修行?あんなところで?」

「もっと強くなれるかなって」

「なんだその理由」


怪訝そうに眉根を寄せるレイルに、ニナは人差し指を顎に添えるように当てて言った。

そしてすぐにニカッと笑う。


「ごめん嘘」

「嘘なのかよ!?」


またお腹を抱えて笑う彼女は、謎が多く不思議な子。今まで関わった女の子の誰にも該当しない。


「あはは、レイルかわいいね」

「俺は男だぞ、嬉しくねえよそれ」


さっきまで戦っていたのが嘘のように、穏やかな会話だ。

後ろに手を組みながら、1歩先に踏み出してエメラルドグリーンの瞳がこちらを振り返る。


「…───お兄ちゃんを探してるの」


ほんの一瞬だけ、ニナの表情に影が落ちた気がした。


「お兄ちゃんと一緒に暮らしてたんだけど、1年くらい音沙汰がないんだ」

「心当たりはないの?」

「まったく!あたしに甘くてすごく優しいんだけど、大事なことは絶対教えてくれない」


(あたしにとってマイナスな事は、一人で背負い込んで解決しちゃうから…)


「だからね、こうしてお兄ちゃんを探すために飛び出して来ちゃった!」


てへって笑いながら言う彼女は、無鉄砲にもほどがある。

現に、レイルが迷子になりあの場にいなかったらニナは間違いなく怪我を負っていたのだから。


「じゃあ、リーヴェ村に用があるのもおにーさんを探すため?」

「そう、いるかわからないんだけどね」


少し考えるように空を見上げてから、ニナはサファイアのような深い青色の瞳と視線を合わす。


「さっきの魔獣は、1年前くらいに出現しだしたの。お兄ちゃんは、その原因を掴むために家を出た」

「だから、背中の核のことを知ってたのか」

「お兄ちゃん強くて頭もいいから!」

「リーヴェ村にいるといいな」


大きな手のひらがふわっとニナの頭を撫でた。


「レイルは?どうして巡守士になったの?」

「俺も自分の親を知らない。星紋巡守団(スタークレクト)のリーダーに拾われて、我が子のように育ててくれたから少しでも恩返しがしたい」

「それだけじゃないでしょ?」

「え?」


白くて細い人差し指が、レイルの額をつつく。

そして微笑みながら言ったのだ。


「人と関わるのが好きそう」

「…────!」


会ってからまだ数時間しか経っていないのに、レイル自身を見抜かれていて目を見開いた。

ふざけてからかって、見ていなそうで実はちゃんと人を見ている。本当に不思議な女の子だ。


「ほら見て!あれがリーヴェ村だよ」


指さす方向には森の木々の隙間から、小さな村が見える。

やっと着いたと安堵の息をついた瞬間───


さっきよりも唸り声や地響きがひどく、建物はすでに破壊されているところもあるのが見えた。


「ニナ、村人の避難を最優先に頼めるか?」

「任せて!レイル、あの魔獣もさっきと一緒で核を壊さないと復活しちゃうからね!」

「わかった」


2人は武器を構えて、同時に村へと駆け出す。



***



破壊された建物の中にいた、5歳くらいの男の子はニナのスカートをぎゅっと掴んで、泣いている。

この様子だと、母親とはぐれてしまったのだろう。


男の子の視線に合わせるように、彼女は肘をついて涙を拭ってあげながら言った。


────直後


また耳を塞いでも、鼓膜が破れてしまいそうな咆哮を、魔獣が放つ。


「あたしの後ろに隠れて」


どうやら、レイルが戦っている5体の他にも1体湧き出てきたらしい。ドシドシと1歩ずつ歩み寄ってくる度に、地面が揺れる。


(絶対にこの子を傷つけさせない。あたしも、レイルみたいに…やってみるしかない!)


ニナも足に魔力をためて、魔獣の背中まで飛び乗った。核を見つけると迷いなく握りしめていた短剣を突き刺す。レイルの戦闘を見よう見まねで。


引き抜いた後、魔獣は再び灰となって消えたのだ。


「おねーちゃん、強い」

「でしょ!キミも泣かなかったの偉いね」


男の子に、短剣を持っていない手でピースサインを作った。その後、小さい頃兄に頭をよしよししてもらった記憶を思い出して、その通りにやる。


すると、遠くからニナを呼ぶ声がしてその方向を見るとレイルも全ての魔獣を、あの短時間で倒してしまったらしい。


「ニナ!大丈夫か!?」

「大丈夫、1体倒せたよ」

「んとに、無茶すんなって」

「この子を守るって約束したから」


誰かを守るためなら自分の限界を知らない、そんな意思が言葉と表情で語っていた。

レイルは僅かに目を見開く。


「ああ…若き巡守士たちよ、本当にありがとう」


村の長老らしき老人が杖をつきながら、震えた声で頭を下げた。


「今夜はゆっくりここで休んでいってくれ。ご馳走を用意する」

「俺たちに構わず────」

「え、おじいちゃんいいの!?ありがとう」


任務を終えたレイルは、怪我人の様子を見て帰ろうと断りを入れようとしたところ、食い気味にニナが目を輝かせる。


「おい、ニナ」

「いいじゃん!あたし、美味しいもの食べるの好き」

「しょうがねえ、好意を無下にするのも悪いしお言葉に甘えよう」


桃色の髪をなびかせる少女は、『レイルわかってるね〜』なんて言いながら村人に駆け寄って行った。


「あたしも何か手伝う!」


その後ろ姿を1つため息を吐いて、ただ見つめている。ひとりっ子である少年は、妹ができたらこんな感じなのだろうと思いながら──



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