15 王都復旧~盗まれたものを探せ~
本日、2話同時公開しております。
こちらは2話目になりますので、ご注意ください。
王都復旧5日目───
星紋巡守団の拠点は、簡易的なものにはなるが仕事をするための部屋のみが完成した。
その受付カウンターには、長老の怒号が響き渡る。
「わしの宝が盗まれたんじゃ!寝ている隙に。はやく探しだしてくれ!」
「もっと詳しく話してもらえないだろうか」
対応したのは、切れ長の瞳のリーダーだ。落ち着きを保ち、ゆっくりと質問をする。
「まず宝はどんなものだ?」
「拳よりも小さなルビーの宝石じゃ」
「ほう、では寝ていた、ということは犯人の顔を見ていないのだな?」
「そうじゃ、確かに寝る前まではあった…はずじゃ…」
怒りで真っ赤に染まっていた長老の顔は、リーダーが質問を繰り返すうちに元に戻っていた。
しかし、確信的に断言していた言葉は、落ち着きを取り戻すと同時に、段々曖昧になっている。
「つまり、昨日は1日出かけていて、都度確認をしておらず、寝る前もあったか不明…ということだな?」
「ああ…だが、昨日起きた時はあったんじゃ」
「なるほど。ならば、昨日行ったことをもう一度繰り返して欲しい。盗まれた可能性も捨てきれないが、落とした可能性のほうが大きい」
リーダーは受付に、あるメンバーを呼ぶように頼んだ。
そして、数分後に集まったのは先日、拠点復旧の際に、問題を起こしたレイル達。
レイルとカインは、その後もリーダーの長いお説教という名の、ゲンコツや平手打ちを身体のあちこちに放たれた。
ちなみに、ルディは荷物を運べて空を飛べるため、今回の任務からは外れ、王都復旧に貢献中だ。
「リーダー!なんでも俺に言ってくれ」
「ああ、できるかぎりやるぜ」
そのためレイルとカインは、不自然なほどリーダーに従順である。
2人とも、未だに顔色が真っ青だ。
そして、いつもの通り1番やる気に満ちている少女は、にんまり微笑みながら言う。
「おじいちゃん!あたしが絶対に宝石見つけるからね」
「おお…!お嬢さん、ありがとう」
***
王都の門を抜けた近くにある森林。小鳥や兎、リスが住むその森は、穏やかだ。
カインは、満月の瞳を細めて問いかけた。
「で、じいさん。昨日の朝は何しにこの森に?」
「ここでは、キャラカワリタケという少しだけ珍しいキノコがあってな。それを取りに来たんじゃ」
「なんだそのキノコ」
カインは、更に眉根を寄せる。彼も物知りな方だが、さすがに聞いたことがないらしい。
目を輝かせるのは、レイルとニナだ。
ニナの食欲旺盛で、何でも美味しく食べる性格は、ここ最近ずっと一緒にいるレイルが似てきた。
「美味いのか?」
「あたし食べてみたい!」
「あれは食べてはダメじゃ」
長老はトラウマが蘇ったように、怯え目を見開く。
「あのキノコは…恐ろしい。人格が変わりそれを見られたものは、そこで生きていけなくなり墓に入りたくなる」
「ええ…怖いよ。おじいちゃん、人格が変わるって人を襲うとか?」
「いいや、別の意味で恐ろしい…!!!」
「やだよ〜~!」
「じいさん!必要以上に怖がらせるんじゃねえ」
ニナを脅かす長老に、カインは思わず頭をはたく。
「ったく、とにかくお前ら。ここら辺に宝が落ちてないか探すぞ」
それからニナ、とカインは片手を額に添えて言う。
「レイルから目を絶対離すなよ?まじでこいつの方向音痴ひでーから」
「うん、知ってる!レイルの面倒はあたしに任せて」
「おい!!これぐらいの範囲なら大丈夫だっての」
「どうだか。おにーさんがリーヴェ村の近くまで送ってやったのに、迷子になってただろ」
「ほら!レイル、一緒に探しに行こ?」
またもや喧嘩が始まりそうな雰囲気を察して、ニナはレイルの腕を引いた。
ジェットはすでに木の上に登って、捜索を開始している。
レイルとニナは、ジェットとは反対の森を探していた時───
「あのじいちゃん、なんで宝持ってこんな森入るんだよ」
「それほど大事なものなんじゃない?」
「……───ニナ」
「ん?」
レイルは言おうか言わないかずっと迷っていて、とうとうそれを口にする。
「そんな俺信用ない……?」
レイルから目を離すなと、カインに言われて以降、ニナはずっとレイルの袖を掴んでいる。
2人3脚の状態で捜索しているため、大変要領が悪い。
「ルディがいないから、もし迷子になったら探すの大変だもん」
「だからこんなところで迷子にならないって」
「念には念を、って言うでしょ?」
「──────はい……」
結局、ニナの圧に負けて2人3脚の状態で探すことになった。
◇◇◇◇
一方、ジェットは……。
長老の面倒を見つつ、ルビーの宝石を探している。
「金髪の少年よ、すまないのう」
「気にする事はない」
仕事熱心のジェットは、会話をしていても視線は長老に向いていない。
草むらをかき分けて漁るジェットに、長老はある物を差し出した。
「少年、火を通したこのキノコ食べてみよ」
「我はいい。そんなことより、宝を探さねば」
「これは力がみなぎるキノコじゃ」
ジェットは渋々、引かない長老に視線を向けて、差し出されたキノコを手にする。
(焼いているからか、見た目は東方の国にある椎茸にそっくりだ)
躊躇いなく焼かれたキノコを口にしたジェットは、目を見開いたのだ。
余程美味しいのか、その謎のキノコを一言も言葉を発さず食べた。
「どうじゃ、力が漲るだろう?」
「はい、とても美味しいわ」
長老の問いに、女性口調で答える。
いうまでもなく、この周辺にいる人物は長老とジェットだけ。
……つまり、女性口調はジェットということになる。
長老は顔を引き攣らせ、やってしまった、という絶望の表情でジェットを見た。
そう、女性口調だけで済まず、普段のポーカーフェイスも崩れて、爽やかな笑顔なのである。
「おじさま、そんなびっくりしてどうしましたの?」
「あ……いや、何でもない…」
ツンツンした金髪に、凛々しいつり目、そして鍛え上げられた逞しい身体から、品のいいお嬢様にキャラが変わるジェット。
正直、きも───
いいや、訂正して……違和感がありすぎる。
「はやくおじさまの宝を見つけましょうね」
「す、すまん…本当にすまん」
(少年に食べさせたのは、キャラカワリタケ……チカラミナギルタケと柄が似ているから見間違えてしまった)
◇◇◇◇
しばらくして、森の出入口に全員が集合した。カインは、戻ってきたメンバーに問いかける。
「ニナ達の方は見つかったか?」
「ううん、全然見つからない」
「鳥が咥えたんじゃないかって、巣も見たけどなかったな」
「だよな……恐らくここじゃなく別の可能性もあるな」
カインは、顎に手を添えて考え込んだ。
(つか、このじいさんが胡散臭いんだよな。そもそも持ち歩いていたのかすら信用ならねえ)
ジェットにも視線を向けて問いかける。そこには爽やかな笑顔があり、もしかしたら、と一瞬だけカインは期待した。
「ジェット、お前の方は見つかったか?」
「いいえ、いくら探しても見つかりませんでしたわ」
「……─────────」
今の言動は、端的でクールに言うジェットとはかけ離れていて、場が凍りつく。
ただ1人だけうふふ、と笑うジェット。
かなりの地獄絵図だ。
「し、師匠……?レイル、なんか師匠の様子変だよ」
「それは言われなくてもわかってるって。どうしたんだジェット」
「ニナちゃんにレイルくん、そして、カインくん。どうしてそんなに驚くの?」
引き気味の3人に目をうるうるさせる。
「お前なんか変なものでも食ったか?」
カインは質問しながら自分でハッとした。ここの森へ長老が来た理由を思いだして。
キャラカワリタケ、死にたくなるほど恐ろしいもの。本当ならば普段クールのジェットは、元に戻った瞬間に、絶望するはず。
「おい、じいさん!ジェットに何食わせた?」
「チカラミナギルタケを食べさせてやろうと思ったら、キャラカワリタケと間違えたんじゃ」
「……~~っ!んの、じじい余計なことすんじゃねえ」
今度はゲンコツが飛ぶ勢いで、カインは長老に迫った。しかし、その間に入るのは金髪の青年。
「カインくん、おじさまに乱暴はいけませんよ?」
「あーもう!てめえは一旦黙ってろ」
「ひ、ひどいですわ。わたくし泣きます」
「調子が狂うな……」
頭を抱えてげっそりするカインに、涙目になるジェット。完全にカオスである。
「カイン、とりあえず宝を探してからジェットは考えよう」
「はあー、じゃあ次の目的地に行こう」
いつも方向音痴をいじられて、レイルが深いため息を吐くが、今回はカインの方が深いため息を吐き出した。
それから、市場に友人宅をくまなく探したが、宝は見つからずで長老の家へ戻った時だ。
「やっぱりなかったのう……、昨日は帰ってきてから、宝をいつもとは違う隣の棚に入れたんじゃ」
「───は?」
長老が指差す棚を、レイルが慌てて引くと、キラキラと輝くルビーの宝石が大切そうにしまわれていた。
ジェットを除く3人は、しばらく宝石を見ながら言葉を失う。
その空気を笑い声で吹き飛ばしながら、長老は長い髭をとかして言うのだ。
「ふぉふぉふぉっ!そういえば昨日は、帰ってきてここにしまったのを忘れておった」
みんなすまないのう、なんて言いながら上機嫌の長老に対して、レイルとカインは拳をわなわなさせていた。
「なあ、カイン。殴っていいか……?」
「奇遇だな、俺も聞こうと思ってた」
そして2人は揃えて叫ぶのだ。
「くそじじーー!」
───後日
ジェットは数日後に元に戻り、絶望しながら斬る、と言って長老の家へ向かうのだった。
これにて第1章完結となります(短いですが)
来週は、第1章の登場人物一覧を投稿予定ですので是非!




