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時還りの姫と光の巡守士  作者: 本郷美弥
第1章 魔獣討伐編
16/18

15 王都復旧~盗まれたものを探せ~

本日、2話同時公開しております。

こちらは2話目になりますので、ご注意ください。


王都復旧5日目───


星紋巡守団(スタークレクト)拠点(ギルド)は、簡易的なものにはなるが仕事をするための部屋のみが完成した。

その受付カウンターには、長老の怒号が響き渡る。


「わしの宝が盗まれたんじゃ!寝ている隙に。はやく探しだしてくれ!」

「もっと詳しく話してもらえないだろうか」


対応したのは、切れ長の瞳のリーダーだ。落ち着きを保ち、ゆっくりと質問をする。


「まず宝はどんなものだ?」

「拳よりも小さなルビーの宝石じゃ」

「ほう、では寝ていた、ということは犯人の顔を見ていないのだな?」

「そうじゃ、確かに寝る前まではあった…はずじゃ…」


怒りで真っ赤に染まっていた長老の顔は、リーダーが質問を繰り返すうちに元に戻っていた。

しかし、確信的に断言していた言葉は、落ち着きを取り戻すと同時に、段々曖昧になっている。


「つまり、昨日は1日出かけていて、都度確認をしておらず、寝る前もあったか不明…ということだな?」

「ああ…だが、昨日起きた時はあったんじゃ」

「なるほど。ならば、昨日行ったことをもう一度繰り返して欲しい。盗まれた可能性も捨てきれないが、落とした可能性のほうが大きい」


リーダーは受付に、あるメンバーを呼ぶように頼んだ。


そして、数分後に集まったのは先日、拠点復旧の際に、問題を起こしたレイル達。

レイルとカインは、その後もリーダーの長いお説教という名の、ゲンコツや平手打ちを身体のあちこちに放たれた。


ちなみに、ルディは荷物を運べて空を飛べるため、今回の任務からは外れ、王都復旧に貢献中だ。


「リーダー!なんでも俺に言ってくれ」

「ああ、できるかぎりやるぜ」


そのためレイルとカインは、不自然なほどリーダーに従順である。

2人とも、未だに顔色が真っ青だ。


そして、いつもの通り1番やる気に満ちている少女は、にんまり微笑みながら言う。


「おじいちゃん!あたしが絶対に宝石見つけるからね」

「おお…!お嬢さん、ありがとう」



***



王都の門を抜けた近くにある森林。小鳥や兎、リスが住むその森は、穏やかだ。

カインは、満月の瞳を細めて問いかけた。


「で、じいさん。昨日の朝は何しにこの森に?」

「ここでは、キャラカワリタケという少しだけ珍しいキノコがあってな。それを取りに来たんじゃ」

「なんだそのキノコ」


カインは、更に眉根を寄せる。彼も物知りな方だが、さすがに聞いたことがないらしい。

目を輝かせるのは、レイルとニナだ。

ニナの食欲旺盛で、何でも美味しく食べる性格は、ここ最近ずっと一緒にいるレイルが似てきた。


「美味いのか?」

「あたし食べてみたい!」

「あれは食べてはダメじゃ」


長老はトラウマが蘇ったように、怯え目を見開く。


「あのキノコは…恐ろしい。人格が変わりそれを見られたものは、そこで生きていけなくなり墓に入りたくなる」

「ええ…怖いよ。おじいちゃん、人格が変わるって人を襲うとか?」

「いいや、別の意味で恐ろしい…!!!」

「やだよ〜~!」

「じいさん!必要以上に怖がらせるんじゃねえ」


ニナを脅かす長老に、カインは思わず頭をはたく。


「ったく、とにかくお前ら。ここら辺に宝が落ちてないか探すぞ」


それからニナ、とカインは片手を額に添えて言う。


「レイルから目を絶対離すなよ?まじでこいつの方向音痴ひでーから」

「うん、知ってる!レイルの面倒はあたしに任せて」

「おい!!これぐらいの範囲なら大丈夫だっての」

「どうだか。おにーさんがリーヴェ村の近くまで送ってやったのに、迷子になってただろ」

「ほら!レイル、一緒に探しに行こ?」


またもや喧嘩が始まりそうな雰囲気を察して、ニナはレイルの腕を引いた。

ジェットはすでに木の上に登って、捜索を開始している。


レイルとニナは、ジェットとは反対の森を探していた時───


「あのじいちゃん、なんで宝持ってこんな森入るんだよ」

「それほど大事なものなんじゃない?」

「……───ニナ」

「ん?」


レイルは言おうか言わないかずっと迷っていて、とうとうそれを口にする。


「そんな俺信用ない……?」


レイルから目を離すなと、カインに言われて以降、ニナはずっとレイルの袖を掴んでいる。

2人3脚の状態で捜索しているため、大変要領が悪い。


「ルディがいないから、もし迷子になったら探すの大変だもん」

「だからこんなところで迷子にならないって」

「念には念を、って言うでしょ?」

「──────はい……」


結局、ニナの圧に負けて2人3脚の状態で探すことになった。



◇◇◇◇



一方、ジェットは……。


長老の面倒を見つつ、ルビーの宝石を探している。


「金髪の少年よ、すまないのう」

「気にする事はない」


仕事熱心のジェットは、会話をしていても視線は長老に向いていない。

草むらをかき分けて漁るジェットに、長老はある物を差し出した。


「少年、火を通したこのキノコ食べてみよ」

「我はいい。そんなことより、宝を探さねば」

「これは力がみなぎるキノコじゃ」


ジェットは渋々、引かない長老に視線を向けて、差し出されたキノコを手にする。


(焼いているからか、見た目は東方の国にある椎茸にそっくりだ)


躊躇いなく焼かれたキノコを口にしたジェットは、目を見開いたのだ。

余程美味しいのか、その謎のキノコを一言も言葉を発さず食べた。


「どうじゃ、力が漲るだろう?」

「はい、とても美味しいわ」


長老の問いに、女性口調で答える。

いうまでもなく、この周辺にいる人物は長老とジェットだけ。


……つまり、女性口調はジェットということになる。


長老は顔を引き攣らせ、やってしまった、という絶望の表情でジェットを見た。

そう、女性口調だけで済まず、普段のポーカーフェイスも崩れて、爽やかな笑顔なのである。


「おじさま、そんなびっくりしてどうしましたの?」

「あ……いや、何でもない…」


ツンツンした金髪に、凛々しいつり目、そして鍛え上げられた逞しい身体から、品のいいお嬢様にキャラが変わるジェット。


正直、きも───


いいや、訂正して……違和感がありすぎる。


「はやくおじさまの宝を見つけましょうね」

「す、すまん…本当にすまん」


(少年に食べさせたのは、キャラカワリタケ……チカラミナギルタケと柄が似ているから見間違えてしまった)



◇◇◇◇



しばらくして、森の出入口に全員が集合した。カインは、戻ってきたメンバーに問いかける。


「ニナ達の方は見つかったか?」

「ううん、全然見つからない」

「鳥が咥えたんじゃないかって、巣も見たけどなかったな」

「だよな……恐らくここじゃなく別の可能性もあるな」


カインは、顎に手を添えて考え込んだ。


(つか、このじいさんが胡散臭いんだよな。そもそも持ち歩いていたのかすら信用ならねえ)


ジェットにも視線を向けて問いかける。そこには爽やかな笑顔があり、もしかしたら、と一瞬だけカインは期待した。


「ジェット、お前の方は見つかったか?」

「いいえ、いくら探しても見つかりませんでしたわ」

「……─────────」


今の言動は、端的でクールに言うジェットとはかけ離れていて、場が凍りつく。

ただ1人だけうふふ、と笑うジェット。


かなりの地獄絵図だ。


「し、師匠……?レイル、なんか師匠の様子変だよ」

「それは言われなくてもわかってるって。どうしたんだジェット」

「ニナちゃんにレイルくん、そして、カインくん。どうしてそんなに驚くの?」


引き気味の3人に目をうるうるさせる。


「お前なんか変なものでも食ったか?」


カインは質問しながら自分でハッとした。ここの森へ長老が来た理由を思いだして。


キャラカワリタケ、死にたくなるほど恐ろしいもの。本当ならば普段クールのジェットは、元に戻った瞬間に、絶望するはず。


「おい、じいさん!ジェットに何食わせた?」

「チカラミナギルタケを食べさせてやろうと思ったら、キャラカワリタケと間違えたんじゃ」

「……~~っ!んの、じじい余計なことすんじゃねえ」


今度はゲンコツが飛ぶ勢いで、カインは長老に迫った。しかし、その間に入るのは金髪の青年。


「カインくん、おじさまに乱暴はいけませんよ?」

「あーもう!てめえは一旦黙ってろ」

「ひ、ひどいですわ。わたくし泣きます」

「調子が狂うな……」


頭を抱えてげっそりするカインに、涙目になるジェット。完全にカオスである。


「カイン、とりあえず宝を探してからジェットは考えよう」

「はあー、じゃあ次の目的地に行こう」


いつも方向音痴をいじられて、レイルが深いため息を吐くが、今回はカインの方が深いため息を吐き出した。


それから、市場に友人宅をくまなく探したが、宝は見つからずで長老の家へ戻った時だ。


「やっぱりなかったのう……、昨日は帰ってきてから、宝をいつもとは違う隣の棚に入れたんじゃ」

「───は?」


長老が指差す棚を、レイルが慌てて引くと、キラキラと輝くルビーの宝石が大切そうにしまわれていた。

ジェットを除く3人は、しばらく宝石を見ながら言葉を失う。


その空気を笑い声で吹き飛ばしながら、長老は長い髭をとかして言うのだ。


「ふぉふぉふぉっ!そういえば昨日は、帰ってきてここにしまったのを忘れておった」


みんなすまないのう、なんて言いながら上機嫌の長老に対して、レイルとカインは拳をわなわなさせていた。


「なあ、カイン。殴っていいか……?」

「奇遇だな、俺も聞こうと思ってた」


そして2人は揃えて叫ぶのだ。


「くそじじーー!」



───後日


ジェットは数日後に元に戻り、絶望しながら斬る、と言って長老の家へ向かうのだった。


これにて第1章完結となります(短いですが)

来週は、第1章の登場人物一覧を投稿予定ですので是非!

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