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時還りの姫と光の巡守士  作者: 本郷美弥
第1章 魔獣討伐編
13/18

12 誰にでも魔力はあるから


副リーダーと村人の救出に成功したレイル達は、一足先にアークレイン王国に向かっている最中。


戦いで疲れているはずなのに、全員が行きより帰りの方が足どりが軽やかである。

これは、ニナとルディを加えた新チームで、任務達成した嬉しさと、その新しい2人が大活躍をした喜びからなのだろう。


先頭を歩き、両手を頭の後ろで組みながら話すのは、銀髪の少年だ。


「やっとアークレインが見えてきた!ニナ、帰ったら何食う?」

「いっぱい食べれるならなんでもいいんだけど…強いて言うならケーキかな!」

「おいおい、ケーキはデザートだろ…」


星紋巡守団(スタークレクト)の拠点で食べたフルーツケーキは、ニナにとって珍しく相当お気に召したらしい。

レイルは呆れ顔でツッコミを入れた。


話を聞いていた3人も、思わず笑みが溢れる。

そんな平和な会話をしていた時だった。


─────ゴゴゴゴ…っ!


地面が大きくうねり、石畳が跳ねるように震えたのだ。


「地震…!?」

「違う、アークレインから強い魔力反応を検知」


レイルはニナを支えながら、身を屈めると、ルディは毛を逆立たせアークレインを見ていた。

まもなくして、城壁の内側から警鐘と悲鳴が混ざった音が響いてくる。


「急いでアークレインに向かう!」

「まじかよ、ここのところ災難続きだぞ」

「それほど黒曜影団(オブシディアンコーズ)が我らを潰したいのだろう」


レイル、カイン、ジェットは走りながらそんな会話をしている。

後ろをついて行くニナを、ルディは静かに引き止めた。


「ニナ、ワシの背に乗るのじゃ」

「え?それならレイルの方が…」

「いつもの魔獣と違う気がしてのう…ワシらは空から核を見つける」

「─────わかった!ルディ、お願い!」


ニナは、ルディのふさふさな毛並みの背に乗って、レイル達よりもはやく空を滑空する。



***



レイルが門の前に駆けつけた時、すでに王国騎士団と、星紋巡守団(スタークレクト)が応戦していた。


「魔獣だ!市民の救助を優先に仕留めろ」


前線に立ち、声を張り上げながら指示する褐色の肌の男。

───王国騎士団団長のアルバートだ。


「アルバート!なんで魔獣が?」

「レイルか。急に空から中央区に卵が落ちてきて、割れた瞬間このザマだ」


先程の地響きの原因は、どす黒い卵が落ちてきた衝撃波。

建物よりも大きく、中から大量の魔獣が出てきている。そして、核持ちの魔獣を知らない騎士団は苦戦を強いられている状態だ。


「倒しても体が修復しやがるからキリがねーよ」

「この魔獣はただの魔獣じゃねえ。黒曜影団(オブシディアンコーズ)からの宣戦布告ってやつだ」

「なんだと?」

「こいつらは兵器と言った方が正しい。各々に拳程の核を持ってて、それを壊さねえと復活する」

「その核はどこにある?」


アルバートの問いに、言葉より先に見せた方が早いとレイルは、背に乗ってから驚愕した。



「──────核がねえ」



背中全体を見ても核がなく、野生の魔獣と同じに見える。

けど、普通に攻撃しても復活するあたり、やはりどこかに核があるのだと推測する。


「おい、レイル!どうした?」

「わりい、前の魔獣は背にあったんだけど、こいつは探さねえとだ」

「おいおい…魔獣はこいつ一体だけじゃなくて、他にもでてきてるんだぞ?」

「その他の魔獣には、カインとジェットが行ってる」


とりあえず攻撃をしかけ、核を見つけていくしかないと判断したレイルは、部位ごとに大剣で切り裂いた。


(だめだ、これじゃあ時間がかかる)


応戦したアルバートは、冷や汗を垂らしながらレイルに言う。


「頭、両腕、両脚を攻撃しても復活しやがる」

「ほぼ全身に攻撃したはずなんだけどな」


そんな会話をしていた時だった。

空から短剣を構えて、魔獣の頭を突き刺したのは────


その後、リーヴェ村の時のように灰となり消えていった。そして、その場所に綺麗に着地をきめたのは、ニナだ。


「…よっと!」

「に、ニナ!?どうして核の場所が?俺も、頭は攻撃したぞ?」

「ここにいる魔獣はみんな核が体内で移動してるの。すでにルディがカインたちに伝えに行ってくれてるよ」


空を見上げてルディが飛んで行った方向見ながら、レイルに言った。

核持ちの魔獣でも驚いたのに、その核が移動する新種が現れて、レイルは困惑続きである。


(黒曜影団(オブシディアンコーズ)…何を企んでいるんだ)


そんな苦虫を噛んだような表情のレイルに、アルバートは肩を組んでニナを見た。


「思った以上にやるな」

「核を見つけてくれたのは、ルディだけどね!」

「レイルのように鍛えがいがありそうだ」


はははっ!と陽気に笑うアルバートに、ニナも微笑みを返して、まだ何体もいる魔獣の方向を見据える。


レイルはニナの隣に立って、剣を構え直した。


「アルバート、俺たちは他の魔獣を倒しに行く。住民の避難、頼んだ」

「ああ、2人とも無理はするなよ」

「わかってる、行くぞニナ!」

「うん!」


2人はアルバートに背を向けて、別の魔獣の所へ向かう。その様子を見ていたアルバートは、1人呟いたのだ。


「いいコンビだな」



***



「で、ニナ。なんで核が移動してるのがわかったんだ?」

「レイル達のあと追おうと思ったら、ルディが嫌な予感するって言って、先回りしてたの」


2人並んで走りながら、ニナは話を続ける。


「それでね、ルディの能力は魔力感知だけじゃなくて、魔力が色濃く出てみえるんだって!だから、ルディは移動する核を見つけられる」

「それはすげえ助かる能力だな」

「けどその核は、意志を持っているみたいに、攻撃される場所より違うところに移動するから、奇襲が必須って言ってたよ」


中央区に向かおうとしていた2人の前に、ズシンと、建物と同じくらいの巨体が道を阻む。

二足歩行で、なんでも噛み砕きそうな丈夫な牙と顎。そして剣よりも鋭い長い爪を持つ魔獣だ。


今いる場所は、両脇に建物が並んでいるものの、既に避難が完了しているところ。

2人をつき刺そうとする、爪を避けながら戦闘態勢に入った。


「さーて、ニナ。核の場所がわからなくて、俺たちしかいないこの状況どうする?」

「あたしたちのチームワークなら、何とかなりそうだよね」

「──────楽観的だな…」


(でもニナが言うとほんとに何とかなりそうだ。俺にも考えはあるしな)


魔獣の死角に入ったところで、大剣に魔力を纏ったレイルが言う。


「ニナ、短剣に魔力を流せるか?」

「え?あたし短剣に流せるほどの魔力なんてないよ?」

「自分の魔力量を自覚してないだけだ。今のお前ならできると俺は信じてる」


サファイアの瞳は、少女をまっすぐに見つめて、そのまま話を続けた。


「この魔獣を倒すには、核を誘導させなければならない。そのために、身体に剣を突き刺すんじゃなくて、切り裂くんだ」


(足を攻撃すれば自然に上へ移動する。そして再生する前に頭を狙って核を追い詰める)


核が移動するとわかった時点で、少年の実力であれば一人で核を破壊することは容易いだろう。それだけの連続攻撃の技を持っているのだから。


それでも少女に攻撃を促すのは、数日前に言った『ルディに乱暴した組織を許さない』という気持ちを尊重しているからだ。

そして、自分にできることはやりたいという彼女の好奇心旺盛な性格を知っていて。


レイルが自分を信じている、その思いが伝わった彼女は大きく深呼吸をした。


「あたし、やってみる!」


意気込んで、集中力を高めるために目を瞑る。


(魔力はないって思ってたけど…レイルの言葉を信じたい。あたしに魔力があるなら、もっとみんなを助けられる力が欲しい)


彼女は、ノワール村へ行く道中に襲われた時と、ハンスの出来事を思い出していた。握る剣が震えて、何もできずにレイルやみんながニナを庇って戦ってくれたことを。


ドクン──────


ニナの心臓が1度だけ大きく波打った。何かが解放されたかのように、熱いものが身体中を巡る。


「今流れているのが魔力だ。それを短剣に纏わせれば、今よりも更に威力が上がる」

「これが魔力…あたしの魔力」

「そう、ニナは下半身を連続して攻撃して。それは、頭から一気にいく!」

「うん!わかった!」


2人は再び魔獣の前へ立ち、レイルは薄黄色の魔力を帯びた大剣、ニナは乳白色の魔力を纏った短剣を構えた。

そして、レイルの合図によって再生が追いつかないくらいに攻撃を仕掛ける。


以前は、短剣を突き刺し自らが陽動になっていた少女は、見違えるほど力強い太刀筋で圧倒していた。


「レイル!右腕に移動してる」

「これできめる、光刃(ライトカッター)!」


晴天の空に灰が舞い上がったのを、見届けてから何も言わずに、まずはパチンとハイタッチをしたのだ。


「やったねレイル!あたし…お兄ちゃんも見つけるし、もっとみんなを守れるくらい強くなるから」

「なら、俺はそれよりももっと強くならなきゃだな」


戦うことに躊躇いを見せていた少女の姿は、もう、どこにもなかった。前を向いて強くなると誓った言葉に、レイルは無邪気な笑顔で続けた。


「ニナを守るって約束したから」


ニナは、目を見開いて驚きすぐにいつもの人を引き寄せる、優しい笑顔に戻る。

まだ魔獣のいる中央区に、レイルと新しい戦いを身につけたニナは向かうのだ。

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