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時還りの姫と光の巡守士  作者: 本郷美弥
第1章 魔獣討伐編
12/18

11 諦めない


『弱そうなお前から犠牲になってもらう』


ニナの背後で、低く冷たい声が落ちてきた。


(…───来る!)


反射的にニナは短剣を握り直して、振り返ると同時に、自身へ向けられた攻撃を受け止める。


雷の魔力を纏った拳を、短剣ひとつで受け止めるには、あまりにも重い一撃だ。

無意識に呼吸を止めていたため、小さな息がこぼれた。


「……っ!」


細い腕は衝撃でビキンと痺れて、足は地面を削りながら滑って後退してしまう。

その先には、まだ逃げきれていない村人の姿が目に入って、ニナは1度左腕につけている星マークのバンドに触れた。


(ここで倒れられない、あたしだってレイルのように…笑顔を守るために戦う!)


「女だからって舐めていたが…少しはやるようだな」

「ここから先は行かせない」


力いっぱい睨んでハンスと対峙する。


ニナは前の時も、誰かが傷つくとなると迷わず戦い、自分のことなんて後回しのお人好しだ。

だから、今の彼女はどんな格上の相手でも、初めて人を傷つけることになっても、戦うことを諦めないだろう。


「怖くて震えてるくせに立ち向かうか」

「あたしは…星紋巡守団(スタークレクト)だから」


意思に反してニナの身体は、小さく震えていてそれを目の前の男は見逃さなかった。

ハンスは、嘲笑うように口端をつりあげて、乱暴に桃色の髪を掴んだ。


「いっ……!」

「今度こそ終わりだ」


頭皮が引き裂かれるような痛みに、ニナは顔を歪ませる。けど、髪を掴む男は容赦なく反対の手に雷の拳を作り、振り下ろそうとした。


───刹那


「その手を離せハンス!」


男と少女の間に、眩い光が割り込んだ。

掴まれていた髪は解放され、身体が後方へよろける。

代わりに前へ出た影は、銀色の髪をなびかせていた。


「レイル…?」

「ニナ、お前を星紋巡守団(スタークレクト)に誘って良かった。誰かを助ける仕事向いてるぞ」

「…──────っ」

「て、わりい遅くなったって言うのが先だよな。後は俺に任せろ、10秒で終わらせる」


ニナを見る横顔は笑っていて、『初めてでよく頑張った』と褒められているみたいだ。

そしてレイルの一言は、まだ終わっていないのに彼女を安心させるには充分である。


(まだ…泣けない。あたしにはまだやることが残ってる)


レイルに背を向けて、最後村人をジェットの攻撃範囲外に避難させた。


「あともうちょっと一緒に走って!」

「ああ、お嬢さんありがとう…」


ニナは、おじいさんの腕を肩にかけて走るのだ。



◇◇◇◇



「ったく、キリがねえぜ」

「弟子が頑張ってる、もう少しだ」


一方、カインとジェットは背中を合わせて、村人の方へ攻撃がいかないように戦っていた。


怪我して動けなくても、気絶させても、後ろで守られながら回復魔法を使う人物によって、敵の戦力は落ちない。


「つか、あの回復魔導士(ヒーラー)の魔力バケモンすぎんだろ」

「それは我も思っていた」

「魔力切れ起こさねえかな」

「望みは薄い」


『だよな』とカインは鼻で笑い、向かってくる攻撃を防御しながら、氷の結晶を瞬時に生み出して放った。

ジェットは、双剣に雷を纏い敵を切り裂いていく。


氷壁展開(アイスウォール)からの氷晶創成(アイスクリエイト)

雷瞬連斬(ボルトラッシュ)


それからも倒し復活する戦いがしばらく続いた頃。

遠くから力強い、透き通った声が合図を送った。


「カイン!師匠!お待たせ、こっちは全員避難し終えたよ」

「ナイスだニナ!行けジェット」

「参る、雷撃崩壊(イナズマブレイク)


地面は電気がビリビリ走っている。そして、その中央にジェットが剣を突き刺した瞬間、範囲内にいたものは全員感電した。


「ったく、厄介な回復魔導士(ヒーラー)だったな」

「我らももっと修行に励まねばな」


倒れた黒曜影団の下っ端を見下ろしながら、2人は一息つく。そこに、笑顔で走りながら向かってくるのがニナだ。


「2人共、あたし頑張ったよ!」

「ああ、えらいな。上出来だ」

「さすがは我の弟子」

「レイルのやつも終わったみたいだぜ」


カインが視線を促し、その方向を見ると倒れるハンスに、それを捕縛する副リーダーと剣を背中にしまうレイルの姿があった。

視線に気づいた銀髪の少年は、ピースサインをニナ達に送ったのだ。



***



───時は遡り、レイルとニナが別れた頃


ハンスに狙われていたニナを、レイルは遠ざけて大剣に魔力を纏い構え直した。


「ガキがふざけやがって。俺を10秒で倒す…?笑わせんな」

「ああ、間違えた…5秒だ」


レイルの煽りにまんまとハンスは乗ってしまい、ブチッと青筋をつくる。

そんなのはお構いなしに、レイルは言葉を紡いだ。


「お前達は俺の仲間を傷つけようとしたんだ。星紋巡守団(スタークレクト)の名においてお前を倒す」

「余程殺されたいらしいな。お前から殺してやる」


自身の服が破けるほど身体に、ビリビリと雷を纏った。

これがハンスの隠し玉だったのだろう。


しかし、レイルにとって雷相手で苦戦するのは、同じチームであるジェットだけ。

どんなに強力な技を持っていても、銀髪の少年がハンスに驚くことはない。


「この技は魔力を膨大に使う奥義、雷獄崩拳ライジングフィスト

「雷を扱うスペシャリストが俺の仲間にいるんだ。お前の攻撃は当たらねえよ、閃光断(ルーメンスラッシュ)!」


(スピード攻撃はジェットだけじゃねえ)


レイルが剣を振ると、ハンスに瞬きと同じ速度でダメージが入った。

普段はスピードに特化したジェットがいるため、爆風や衝撃波がメインの攻撃だが、レイルも劣らないぐらい速いのだ。


今の攻撃はまさに高速の一閃。


「うあああっ!」


ハンスは背から地面に倒れ、肩で息をしていた。


「はあっ、はあ…てめえ、銀髪に青い瞳そして光属性…まさか黒曜潰しのレイル」

「俺は星紋巡守団(スタークレクト)のレイル・ノルドレイクだ。人々の笑顔を奪うやつは許さねえ」


ハンスを見下ろしながら背に剣を収めると、レイルの頭を誰かがわしゃわしゃ動物を愛でるように撫でまくる。


「随分と腕を上げたなレイル。俺は嬉しいぞ、ありがとうな」

「ガキじゃねんだ、それやめてくれよ。…それと、いつかは副リーダーも超えっから!」


レイルは、副リーダーの心臓にコツンと、右の拳を押し当てた。

白い歯を見せながら無邪気に笑って。


副リーダーは、フッと余裕そうに笑いながら言うのだ。


「まだ負けられねえな!」

「で、こいつはどうする?」

「ああ、お前たちが来る前に応援要請を出していてな、そのうち来るだろうから後は任せろ」

「そっか、じゃあ俺たちは拠点に帰って、リーダーに報告しておく」

「頼んだ」


そうして、レイルは誰かの視線を感じてその方向を見ると、戦いが既に終了していたニナ達が目に入る。


ニナはルディと一緒に満遍な笑みを浮かべて、カインは相変わらずすかした顔して、ジェットは腕組みをしていた。


そんなニナ達に終わったという意味も込めて、ピースサインを送れば、桃色の髪の少女はレイルに駆け寄る。


「レイルー!初任務成功だねっ」

「初めてでだいぶ難易度は高かったけど、よく頑張ったなニナ」

「みんなが助けてくれたからだよ」


少女は仲間たちに囲われて、先程まで緊張して強ばっていた身体が開放されたように、膝からカクンと力が抜けた。

後ろに倒れそうになったニナの腕を、レイルが掴んで支える。


「───っぶね、大丈夫か」

「えへへ、ホッとしたら立てなくなっちゃった」

「仕方ねえな」

「わっ!?」


その後すぐにニナの足は宙に浮いて、レイルの顔がどアップになった。

レイルは、ニナの膝裏を掬ってお姫様抱っこをしているのだ。


「お、重いから…!もうちょっとしたら歩ける」

「今更だろ」

「レイルのバカ」

「いてえって」


デリカシーのないレイルを、ニナは頬ふくらませて怒り、耳を思い切り引っ張った。

その様子を見ていたカインとジェットとルディは、呆れている。


そしてルディとカインが、レイルに向けてダメだしを入れるのだ。


「レイル、デリカシーなさすぎじゃ」

「おにーさんが、もっとレディの扱いを教えないとだな」

「ちげえって!もう何度も抱えてるから慣れてるって意味だ!」


(初めて会ったときは、吹っ飛んできたニナを受け止めてるんだ。しかも受け止められるほどニナは軽い)


その後も『言葉足らず』など言われて、銀髪の少年は拗ねて、桃色の髪の少女は笑顔で初任務が終了したのである。

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