09 戦う理由
今更ながらはじめまして!思いつきで書き始めた作品です…そして次から戦闘シーンに入ります…!!
戦闘が終わったあと、森に静けさが戻っていた。足元には、気絶した黒曜影団の構成員たちが転がっている。
風が木々を揺らす音が、やけに大きく響く。最初に口を開いたのは、ジェットだった。
「…早すぎる」
「確かに、副リーダーが行ってるにも関わらず、ここまで来てるのは早いな」
カインも眉を顰める。
「レイル、どうする?」
「急いでノワール村に向かう。何かトラブルがあったのかもしれねえ」
レイルは大剣を背負いなおして、ノワール村の方向を睨みつけた。
1人の少女は、先程まで短剣を握っていた腕を、抑えて不安そうに瞳が揺らいだ。
「待って、レイル」
「どうしたニナ」
「ルディに乱暴した組織を許せない、それは変わらないけど…人が人を傷つけるのが怖くてたまらないの」
(これから向かうノワール村は、リーヴェ村の時と違う。魔獣ではなく、人間なんだ)
ニナは、俯き思っている不安を紡ぎ始める。
「もし誰かの命を奪ってしまったらって考えたら、震えちゃって。でも、何もしなかったら今みたいに迷惑かけちゃうのに、あたしは魔獣から身を守るための戦いしか知らない」
「迷惑だなんて思わない。俺だって、人を傷つけるのは怖い」
「レイルも…?」
少女を救う目の前の少年は、いつだって前向きで強くて、怖いもの知らずだと思っていた。
その少年は、ほんの一瞬だけその瞳に影が落ちた気がする。
「物心ついた頃から俺には家族がいない。俺だけじゃなく、カインもジェットも…。だから星紋巡守団の仲間は俺にとって家族みたいなものなんだ」
レイルの話を、ニナはまっすぐサファイアの瞳を見て聞いた。
「だから、その家族を脅かすものは許さない。俺は…家族の笑顔を守るために剣を振るう。大切な人を失わないために」
「笑顔を守るため…」
「そうだ。ニナはまずおにーさんを見つけること。だから今のままでいいよ、無理に戦わなくてもいい」
「でも…!それだとみんなに─────」
ニナが言おうとした『迷惑かけちゃう』という言葉は、彼女の腕を掴み前へ進むレイルによって遮られる。
「大丈夫、俺がついてる。お前を守るって約束しただろ?」
「…──────っ!」
エメラルドグリーンの瞳を見開いて、それから小さく頷いた。
「うん…!ありがとう」
そのやり取りを見ていた、仲間たちもニナの隣に立つ。
「仲間になった昨日から、俺もニナを守るし一緒に仕事をしたい」
「弟子のために、我が修行をつけよう。あと、我の特性護身道具も後で作ろう」
「カインとジェットもありがとう」
(私も皆と冒険したいから…こんなところで落ち込んでいられない)
4人はレイルを先頭に、ノワール村へ行こうとした時に、白き狼が申し訳なさそうに引き止めた。
「ノワール村は逆じゃ、レイル」
「んなっ!?また方向音痴が出ちまった」
こうして改めてルディの案内で、急ぎノワール村に向かうのだ。
◇◇◇◇
「急ぎたいところだが、今夜はここで休もう。見張りは交代でいいか?」
「そうだな、俺が先にやるからレイルはニナと休め」
オレンジ色の夕日が木々に隠れ、完全に夜が訪れた頃───
拓けている土道で荷物をおろした。
カインは見張りのために、木の頂上へ登って腰を下ろす。
ジェットもカインとは反対側の木に登りながら言うのだ。
「我も先に見張りをしよう」
「ああ、2人とも頼んだ」
レイルは2人分の寝袋を広げて、そのひとつをニナに寝るように促す。
「ニナ、先に休もう」
「う、うん…」
(いいのかな…副リーダーも安全かわからないのに)
「大丈夫、副リーダーは簡単にやられるほど軟じゃない。今は明日のために休もう」
「ワシもニナについてる」
「レイル、ルディ…ありがとう」
ニナの考えていることを、見透かして安心させるようにひどく優しい声色で、レイルは言った。
それから数分も経たぬうちに、あどけない寝顔を晒し、静かな寝息が聞こえてくる。ニナにとって、レイルは兄とは違う安心感があり、触れ方やニナに向ける言葉ひとつひとつが落ち着かせるのだ。
昨日と同様、そんな彼女の寝顔を見ながらレイルは思う。
(ニナはおにーさんを探すために、少しだけ戦いを身につけた普通の女の子。だから、俺が守るんだ)
そして、レイルも目を瞑り少し休息を取るのだった。
◇◇◇◇
夜が明けたノワール村は、霧に包まれていた。
昼間だというのに視界は悪く、黒ずんだ建物が並んでいる。
村の中央広場には、微かに人影が集まっているのが見えた。
───嫌な気配が、濃すぎる。
「っち、村人を人質にとられたか」
眉を顰め、舌打ちをするのは、満月の瞳を歪ませるカインだ。
レイル達は、ノワール村が見える崖の上から顔を覗かせている。
その視線は広場の中央。地面に膝をつかされ、両腕を縛られている男がいた。
筋肉質で、左頬に古傷が残っているいかつい顔立ち。
地黒の肌に合う、赤色の衣服はボロボロになっていて、その服から覗く肌や顔は傷だらけだ。
「敵と思われる人物は、合計30人でその中でずば抜けて魔力が高いやつがおる」
「ルディ、気づかれず近付けそうな場所はあるか?」
「東側なら大丈夫じゃ。あとは、1人ワシの背に乗れば空から奇襲ができる」
ルディは、ふさふさの毛並みを逆立たせ、耳をピクピクして敵を感知している。
この中で1番頭のキレるカインは、顎に手を当てて計画を練っていた。
レイルというと、ルディに近づいて背に乗った。
「俺が空から行く。ルディ、頼む」
「うむ、しっかり捕まっておれ」
空を飛ぶルディは、特に羽が生える訳でもなく、高く飛躍したまま、空中に留まるように滑空する。
少年の行動パターンをよく知る2人は、特に驚く素振りはなかった。
むしろ、そうなることを前提に、カインは作戦を練っているのである。
「奴らは、魔法弾を放ってくる。俺が氷壁を作るから、ジェットはレイルと合わせて攻撃してくれ。」
「承知」
「あたしは…?あたしも星紋巡守団だよ」
ニナはカインを真っ直ぐに見つめて、昨日の不安さは残っていなかった。
その瞳を見たカインとジェットは、『守られていればいい』なんて言葉を、言えるわけもなく頷いた。
「ニナは、副リーダーの解放と村人を避難させてくれ」
「我が目くらましの技で道を作ろう」
「うん!頑張る…!」
副リーダーと村人の救出のため、ニナ達も崖をくだり、戦闘準備に入った。
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