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時還りの姫と光の巡守士  作者: 本郷美弥
第1章 魔獣討伐編
1/10

プロローグ

今から15年前のセレスティア王国───


静かな夜空は震え、まるで天が裂けたような光の奔流が大地へ降り注ぐ。

それは祝福ではなく、滅びの合図だった。


「攻め込め!一人残らず殺せ」

「前衛、押し返せ!王城に誰一人入れるな!!」


アストリア大陸の6カ国連合軍の怒号と、セレスティア王国軍の叫びが混ざり合う。

大地は揺れて、石畳はひび割れ、キーンと金属同士がぶつかり合う音に、魔力の衝突音は雷鳴よりも激しかった。


王城では、裏切られた憎しみを抱き、星に還っていく魂の悲鳴に目を瞑りながら、王家の血を継ぐ2人の子供を守っていたのだ。


「ここは私たちが足止めをする。お前達は必ず生き延びろ」

「父上、母上!僕も戦います。みんなの大魔力を使えば…」

「だめだ」


国王は少年の肩に手を置き、首を振った。


「その力はすでに使ったが…未来は変わらない。だから、お前たちには別の場所で普通に過ごしてほしいのだ」

「ごめんなさい、小さいあなた達に辛い想いをさせて…どうか幸せになって。私の可愛い子供達」


8歳くらいの少年は、こんなにも騒がしい状況でも静かに眠っている赤子を背負い、国王と王妃に抱き締められていた。

お互いが、もう二度と会えない最後の別れをするように涙を流しながら…。


「さあ、行きなさい」


王妃は涙を拭い微笑んだ。


「会えなくても、私たちはずっとあなた達を守るから」


国王は背を向け、迫る敵影の方へと歩みだす。


「もう時期ここも堕とされるだろう。お前達が国を出るまでなんとかする」


少年は歯を食いしばり、胸の奥が張り裂けそうなほどの痛みに耐えながら、叫んだ。


「…父上、母上。必ず生き延び、妹を幸せにしてみせます」


(妹だけは、何があっても僕が守る)


小さい身体の少年は、隠し通路を渡り誰かに狙われることなくセレスティア王国を出ることができた。


両親が全魔力を注いで、少年たちに感知されない護りの魔法をかけられていたことも知らずに。


こうして、刻の加護を受けた美しい国は、一夜にして炎と絶望の地へと変わり、消えていった。


そしてまだ、世界は知らない。

炎の中で消えなかった2つの命があることを。


王家の血、“エルシオン家”の子らは生き延びたのだ。


その逃亡こそが15年後、大陸全土を揺るがす運命の始まりとなる。

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