表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/203

第99話 月に照らされて

 駆け出したゴールド司教はグレンに向けて左手を向けた。赤い光が彼の手に集約していく。


「くらえ! ファイアボール!!!」


 グレンの二メートルほど手前でゴールド司教の左手から炎の球が飛び出した。グレンはすぐに反応して飛び上がった。グレンが立って居た場所に炎の球が飛んで来て爆発する。グレンは足元から黒い煙に包まれる。


「!?」


 背後に気配を感じグレンが視線を横に動かす。グレンの背後に笑顔のゴールド司教が右腕を引いた状態で立って居た。ゴールド司教はファイアボールでグレンを仕留めようとしたのでなく、かわして飛び上がるように誘導したのだ。グレンは即座に左側からゴールド司教へ振り向こうとする。


「遅い!」


 剣を突き出したゴールド司教に、グレンは振り向きながら左手を上に向けた。グレンは左手でゴールド司教の突き出す剣を防ごうとしていた。


「馬鹿め素手でとめられるか!!!! なっ!!!」


 グレンが左手にはめている、アンバーグローブにゴールド司教が突き出した剣が当たった。剣はアンバーグローブを突き破りグレンの手を貫く…… ことはなかった。アンバーグローブ内部でゴールド司教の剣は止められた。同時に左手が強烈な光を放ち周囲が白く染まっていく。


「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


 光に目がくらんだゴールド司教は、光から上に顔を向いて背け右手を引き左手で目を覆いながら声をあげる。グレンは彼の様子を見ながら右手に持った大剣に力を込め、右腕を横から後ろへと伸ばす。


「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 横からグレンの大剣はゴールド司教を斬りつけた。鋭く伸びた大剣がゴールド司教の左脇腹の上部に命中をする。チャッという音がしてゴールド司教の体は横にくの字に曲がりグレンの視界から消えた。

 吹き飛ばされたゴールド司教は礼拝堂の壁に叩きつけられた。激しく礼拝堂が揺れ天井から砂埃が落ちる。


「小僧……」


 壁にめり込んだゴールド司教はすぐに振り向き顔をグレンへと向け彼を睨つけた。グレンは天井の近くに静かに浮いていた。黄色のオーラを纏った彼は大剣を肩に担ぎジッと黙ってゴールド司教を見下ろしている。体を揺らしながらグレンはどこか余裕があるように見え、舐められていると感じたゴールド司教の顔が怒りに満ちていく。


「許さん!」


 左手を壁につけ腕を勢いよく伸ばしてゴールド司教は飛んだ。空中に浮かんでいたグレンへと猛スピードで一直線に向かって行く。右手を振りあげたゴールド司教、グレンは大剣を担いだままジッと彼を見つめている。

 ゴールド司教がグレンの手前まで飛んで来て、彼の頭を目掛けて剣を振り下ろした。グレンの目が鋭く赤く光り右腕に力を込めた彼は、大剣を軽く持ち上げ額の前で水平にした。

 音がしてゴールド司教の顔をしかめる。グレンはいとも簡単にゴールド司教の剣を受け止めたのだ。さらに彼はグッと腕を伸ばしゴールド司教を押し返した。押されたゴールド司教は耐えられずに、二メートルほど後方へと下がった。


「グっ! なっ!?」


 グレンはゴールド司教が離れると、すぐに前に出て腕を返して大剣を体の横へと持って行った。一気に距離を詰めたグレンはゴールド司教を横から大剣で斬りかかる。


「小僧!! 舐めるな!!」


 声をあげたゴールド司教はグレンの攻撃に反応し、体を左に向け右肘を曲げ剣先を上に向け大剣の軌道へと持っていた。大きな音がしてグレンの大剣とゴールド司教の剣がぶつかる。グレンがまた大剣を押し込みゴールド司教を後ずさりさせる。だが、ゴールド司教も負けじと、体勢をすぐに立て直しまたグレンに斬りかかる。天井の近くでゴールド司教とグレンの攻防がしばらくの間続く。

 しかし、二人の攻防は実力が競ったものでなくゴールド司教の攻撃は、グレンに軽くいなされることがほとんどで明らかにグレンが優勢だった。


「すごい…… でもあの黄色いオーラは…… 月に照らされているみたい……」


 ゴールド司教の攻撃を簡単にいなす、グレンを見つめながらクレアはつぶやくのだった。何度目かのゴールド司教の攻撃をグレンの大剣が簡単に弾いた。ゴールド司教は下がり彼の二メートルほど前に、腰を落とし大剣を持った右腕を斜め上に振りぬいた姿勢で止まるグレンが居る。

 グレンを苦々しく見つめ肩で息をするゴールド司教、彼の右腕の剣は細かい傷がいくつも出来ている。グレンはゆっくりと大剣を肩に担ぎまっすぐ立っている。グレンは息の一つ乱れさず静かにゴールド司教を見つめていた。


「はあはあ…… クソ! なぜ!? いや! 落ち着け…… 大丈夫だ…… イプラージは…… 私を…… はるかな高みに……」


 目の前に立つグレンを見ながら左手を胸元へと持って行き、自らに言い聞かせるように言葉をつぶやくゴールド司教だった。息を整えたゴールド司教はグレンへと向かって行く。速度を上げゴールド司教は、右腕を広げるようにして横に持って行く。グレンとの距離を詰めたゴールド司教は彼の首を斬り落としてやろうと横から剣で斬りつけてくる。

 だが、グレンは当然のようにゴールド司教の動きに反応し、大剣の刀身に左手を添え剣の軌道へと持って行こうとした。


「かかったな!!!」


 グレンの大剣が動くとゴールド司教は右腕を止め、素早く腕を引きしゃがみながら体を降下させた。ゴールド司教はフェイントをかけグレンを騙したのだ。しゃがんで視線を上に向けたゴールド司教に、大剣を自身の体の左へと持って行き正面ががら空きのグレンの姿が見えた。

 ニヤリと笑ったゴールド司教が、剣先をグレンにへと向けた。ゴールド司教は伸びあがるようにしてグレンの喉元へ剣を突き出す。鋭く尖ったゴールド司教の剣がグレンの喉元まで一気に迫っていく。ゴールド司教は

ニヤリと笑った。


「!?!?」


 グレンの喉元にほほ笑んだグレンは、すっと右肩を引いて体を横へ向ける。彼の目の前をゴールド司教の剣と続いて体が通過していく。すれ違うゴールド司教は目を見開きわずかに視線をグレンへと向けた。直後……


「グっ!!!」


 突き出されたゴールド司教の剣は天井に刺さった。グレンは右手を振り上げ大剣の握手に左手を添えて強くつかみ両手で持つ。


「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 


 ゴールド司教が剣を引き抜こうと必死に声を上げる。グレンは浮かびあがりゴールド司教の横から大剣を振り下ろした。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


 悲鳴のような声が上がる。真横から振り下ろされたグレンの大剣はゴールド司教の肩の先から腕を切り落とした。バランスを崩して落ちてていくゴールド司教。大剣をすぐに戻したグレンは体を浮かせ横の姿勢になると右足を振り上げ落ちていくゴールド司教を床に向かって蹴りつけた。

 斜め下に向かって落ちて行ったゴールド司教は壁の手前の床に叩きつけられた。横向きに倒れる焦げた彼の体がステンドグラスの色のついた光に照らされ輝いている。


「ぐぐぐ…… イプラージを凌駕するとは…… 小僧」


 傷つき痙攣するように震える体で左手を床につきゴールド司教は必死に立ち上がる。グレンは彼の礼拝堂の中央付近にいるクレアの側へと下りて来た。

 振り向いて彼女を見たグレンはすぐにゴールド司教に体を向け歩き出す。大剣を肩にかつぎゆっくりと近づいてくるグレン、ゴールド司教の体は今度は恐怖でガタガタと震えだすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ