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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第1章 魅惑の新大陸

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第9話 死体の情事

 遅い昼食を終えてハモンドとグレンが、冒険者支援課へと戻ってきた。まだクレアは戻って来ておらず部屋はガランとしていた。二人は席につきクレアが戻ってくるのを待っていた。二人が戻ってきて数分で、扉が開きクレアも昼食から戻って来た。


「ただいまー。遅くなってごめんね」


 二人がすでに戻ってくるのを見て謝るクレア、グレンは立ち上がり、部屋の奥に一時的に置いた棺桶へと向かい。ハモンドは冒険者の死体が持っていた遺品を詰めたリュックを背負う。

 グレンは棺桶から伸びた紐を握ってクレアに声をかける。


「じゃあ教会に行くか。一階に寄ってミレイユに……」

「それなら大丈夫です。冒険者の名前はスロリットさん。最後の宿泊地はセントウォーレン地区のリアンローズっていう長屋です」

「いつの間に調べたんだ? 昼飯食ってたんだろ」


 ニコッと笑ってクレアは、ポケットから指輪を出した。彼女が出したのは死んだ冒険者の指輪だった。


「ミレイユを誘って一緒に昼食を食べたんですよ。帰りに受付によって調べてもらいました」


 冒険者に配布する指輪には、冒険者のランクの他にどこで行動していたかの位置情報が乗ってる。

 ただし、その情報を閲覧するには受付にある水晶に、冒険者の指輪をかざさないといけない。クレアは事前に冒険者の情報を調べて来たようだ。


「そっか手間が省けたよ。しかし…… ミレイユの飯も遅いんだな」

「しょうがないですよ。昼でもカウンターは開けてないといけませんからね」

「ミレイユも部長なのに大変だな」

「まぁ人気の新大陸はどこも人手不足ですからね」


 クレアとグレンは顔を見合せ笑うのだった。冒険者支援課は受付部の傘下にある。ミレイユは受付部の部長なのでグレンとクレアの上司に当たる。

 三人は冒険者ギルドを出て死体を教会へと運ぶ。町の中心にある小高い丘の上あり、白い壁の三階建てで屋根に鐘が設置された尖塔をもつ建物が教会だ。

 教会の周囲は広い敷地に緑の芝生がびっしりと生え、噴水の周りに花壇とベンチも置かれている。敷地は解放され老人が散歩したり子供が遊んでいたり公園のようになっていた。

 三人は花で飾られた小さな門をくぐり、教会の脇に立つ死体安置所へ向かう。死体安置所は小さなレンガ造りの小屋で、ここにテオドールの周辺で亡くなった死体が埋葬されるまで保管されている。

 扉をノックすると中から、黒いローブを着た男性の修道士が出てきた。慣れた様子でグレンは死体が入った棺桶を扉の前に置いた。

 グレンと入れ替わるようにして、クレアが前に出て修道士に向かって口を開く。


「冒険者ギルドのクレアです。大樹の森で死体を見つけたので持ってきました」

「ありがとうございます。お預かりします」

「はい。お願いします」


 慣れた様子で男性修道士は、棺桶の紐を引っ張って死体安置所の中へ戻っていった。

 この後、死体は処理されて教会裏の墓地に埋葬される。ちなみに死体はノウレッジ大陸から持ち出せない。以前、他大陸へ持ち出した死体に寄生した魔物が繁殖し町を滅ぼした事件があったからだ。よほど高貴な身分の死体か事情がない限り死体はノウリッジ大陸で埋葬される。

 棺桶を見送り扉が閉じられるとクレアが振り返り、グレンとハモンドに声をかける。


「じゃあ次は部屋の片付けに行きますよ」

「セントウォーレン地区か……」


 浮かない顔をするグレンだった。テオドールの南にあるセントウォーレン地区は、貧民街で治安があまり良くないからだ。


「大丈夫ですよ。僕はウィンディーネの日に教会の炊き出しで行きますけどみんないい人ですよ」


 不安そうなグレンにハモンドは明るく声をかけた。休日に行われる教会の炊き出しにハモンドは毎回参加しており、セントウォーレン地区の人間と交流があり大丈夫だと自信ありげに語る。

 ちなみにノウレッジ大陸では曜日は精霊の名前が使われており、ウィンディーネは日曜日に当たる。以後、月曜日は火の聖霊サラマンダー、火曜日は土の聖霊ノーム、水曜日は風の聖霊ジン、木曜日は木の聖霊ドリアド、金曜日は月の聖霊ルナとなっている。また、午前と午後も精霊で表しており光の聖霊ステアと闇の聖霊レイテが使われる。夏は午前がレイテで午後がステアとなる。冬は逆で午前がステアで午後がレイテとなる。午前と午後の精霊は春分と秋分で入れ替わる。


「ほら行きますよ」


 ハモンドは意気揚々とグレンとクレアに、声をかけ先導して歩き出した。グレンは歩くハモンドの背中を見つめつぶやく。


「そりゃあ…… 施しもらう時は良い子にするだろうよ」

「こら! ハモンド君には言っちゃいけませんよ」

「あぁ。わかってるよ」


 クレアはグレンを肘で突っついた。適当に返事をしたグレンは右手をあげハモンドを追いかけクレアも彼に続く。三人は町を南へと移動した。

 通りを挟んで同じ形を壁の汚い大きな建物が並んでいる。通りの向こう側がセントウォーレン地区になる。

 歩いて通りを渡った三人は路地を抜けてセントウォーレン地区の中へと入った。小さな路地を抜けると道幅は広くなったが物が散乱し、向かいの建物との通された紐に無数に干された洗濯物があり路地裏よりも薄暗く感じた。


「義姉ちゃん……」


 窓から髪を振り乱した下着姿の女や、路地の近くに立つ酒瓶を持った男がジッとグレン達を見ていた。三人は明らかに警戒され監視されていた。

 グレンは視線に気づきクレアの肩を軽く指で叩いて小声で話しかける。


「わかっています。ここはそういうところですからね」


 顔を動かさず視線だけを動かしクレアはグレンに答えた。彼女も監視されているのに気づいていた。

 周囲を警戒してる二人だったが、ハモンドは視線に気づいてないようで遺品の入ったリュックを背負い平然と歩いていた。

 三階建てのレンガ造りの連なった、数十メートルはある巨大な長屋へと三人はやってきた。軒下には円形の細長い棒状の金属に、棘の生えた茎が巻かれ中央にバラの花の看板がぶら下がっていた。ここが最後にスロリットが滞在した長屋リアンローズだ。


「こんにちはー」


 明るく声をかけハモンドは、扉を開けて中へ入りグレンとクレアも彼に続く。目の前には広い廊下で、すぐに階段があり階段の脇に左右に木製の扉が並んでいた。入り口横に小さなカウンターがあり、カウンターの中はくもりガラスの小窓で仕切られて見えない。


「ギルドの関係者か…… 部屋を借りるのかい? それとも……」


 音がして小窓から人が顔を出した。剥げてちょび髭の中年の男性だ。ハモンドが答えようとしたが、グレンが先に一歩前に出て男性に答える。


「ここに泊まってた冒険者のスロリットが死んだ。俺達はギルドの権限で遺品の整理に来た」

「へぇ。死んだのかい…… 三階の右手一番奥だ。勝手にしな」

「うわ!?」


 ピシャンという音がして勢いよく小窓が閉められた。ハモンドは驚いていたが、グレンとクレアは特に気にせずそのまま進む。

 キーキーときしむ音がする階段を上がって三階へとやってきた。


「うわぁ!? あっあの人達は……」


 薄暗い狭い廊下に扉が並び、その前に下着姿の女が立ってグレン達を見ていた。女性の裸などろくに見たこと無い修道士のハモンドが顔を真赤にして両手で顔を覆う。ハモンドの行動が面白かったのか、一人の女が妖艶なポーズをして投げキッスをして笑っている。


「えっと…… グッグレンくん。後輩の質問に答えなさい」


 クレアも恥ずかしそうに頬を赤くしグレンに話しを振った。グレンは平然とハモンドにここがどのような場所か説明を始める。


「ここは娼館なんだよ。死ぬ前日にスロリットは金で女を買って寒空で冷えた体を暖めったってわけだな」

「はっはあ……」

「どこの町にだってある場所さ。行こうか。この先だ」


 うまく理解できないハモンドにグレンは声をけ、廊下の奥を指さし先頭に立って歩き出した。顔が真っ赤なままで、まともに前を見れないハモンドはグレンの背中に隠れるようにして続く。


「ジー……」


 ハモンドの後ろからジッとグレンを見つめるクレア、グレンはすぐに彼女の視線を感じ振り返る。


「なんだよ。義姉ちゃん」

「グレンくんは買っちゃダメですからね」

「買えるかよ。安月給なんだから…… はぁ」

「ムゥ!!!」


 ため息をつくグレンだった。クレアは彼の回答が意図したものじゃないのか、不満そうに頬を膨らませるのだった。

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