第365話 少女の覚悟1
ララはハンナがロボイセにいるヴァンパイアの話を始める前に口を開いた。
「あぁ…… 出張教会ね…… わかったわ」
視線を横に向け天井を見上げにっこり微笑みうなずくララだった。
「なっ!? 知っていたのか?」
出張教会にヴァンパイアがいると答える、ララにハンナは驚き尋ねる。笑顔でうなずいたララは腰に付けているチェーンがついた石を持ち上げハンナに見せた。
「これよ……」
「それは…… ブラッディチェリー…… 君は退魔師なのか……」
「うん。家はずっと退魔師だったわ……」
うなずいてララは寂しそうな表情を浮かべる。彼女は石を見ながら話を続ける。
「この石が出張教会の近くで点滅していたからわかるわ。彼女は吸血症が進んでヴァンパイアになる寸前……」
花形の意思はブラッディチェリーという石だ。古くから悪霊や悪魔祓いを行うシャーマンなどが使っているもので邪悪な気配に反応し光りだす。
「終わったらそのままサンドロックに行くんだ…… 騒ぎになるからな。サンドロックで砂上船プリンセスシェリーに乗って蜘蛛を探すと良い」
「蜘蛛? まぁいいわ。任せておきなさい」
ララは返事をするとハンナに右手をあげ背中を向け去って行った。意気揚々と歩くララの背中を見てブライアンが笑った。
「ふふ。威勢が良く生意気。お主にそっくりじゃな」
「ふん…… そうだな。私と違って近くに頑固な爺さんはいないからやりやすいだろう」
「この! バカ弟子が!」
「黙れ! 耄碌じじい!」
ハンナとブライアンは顔を突き合わせ互い睨み合うのだった。
夜のロボイセのトンネル…… 灯りはあるが薄暗く数メートル先も見えず人通りもなくなった、長いトンネルは静かに佇み不気味な空気を漂わせていた。
リュックを背負った一人の中年男性が急いでいた。商人である彼は朝一の魔導起動船に乗りさらに東へ向かうため、夜のうちにロボイセを離れダグオン港に向かっていた。
「うん!? あぁ。出張教会か…… 昔はもっと賑わってたのにな……」
暗いトンネルに灯りに照らされた、テントの出張教会が見えて来た。光を見た男性が安堵したようすでつぶやいいたその直後……
「どうぞ…… 神父様がお待ちですよ」
「えっ!? ええ!? あっああああ……」
どこからともなく男性の背後に赤い瞳のシスターが現れにこやかに彼に声をかける。驚いていきおいよく振り向く男性に優しくほほ笑むシスターだった。
どうやら薄暗いトンネルで男性はシスターの接近に気づかなかったようだ。
「さぁこちらへ」
「いやでも…… まだ行くとは……」
「よろしいですよ。主はいつでもあなたを待っています」
「あっ!? うわ」
シスターは男性の背中を押して出張教会へ連れて行く。少々強引に男性はシスターに出張教会へ押し込まれた。前のめりになり転びそうになりながら、出張教会の中ほどまで行ってなんとか踏ん張って止まった。
後ろを向いてシスターを睨み彼を前を向いた……
「えっ!? うああああ……」
祭壇の前には下半身が裸の神父が立っていた。股からは大量の血を出し、神父のシンボルが食いちぎられていた。神父の姿に男性は恐怖し口をパクパクと動かしながら固まっていた。
「残念ですが…… 彼は主へ召されました…… 身分を偽り不浄なる行為を繰り返したんです」
「えっ!? あっああ…… 体が……」
振り向くとシスターが目を赤く光らせて立っていた。商人の男性はシスターの赤い目を見た瞬間に体がしびれて動かなくなった。これは相手を拘束し麻痺させるコールドパライズだ。
「全てを任せてください。大丈夫ですよ。ふふ」
「なっなにを!!」
焦る男性だった。手慣れた様子でシスターは彼を立たせたまま、ズボンを下し下半身をあらわにする。必死な男性を見てシスターはにっこりと微笑む。彼女の口元から長い牙がのぞく。
「心配しないで…… すぐに慣れます」
ゆっくりと床にシスター服が落ちていく。彼女は紫色の派手で透けた下着姿になった。悲しいかな恐怖で震える男性だったが、肉付きが良いシスターの下着姿に股間が徐々にたぎって来る。
「ふふ…… 美味しそう…… いっぱいここから食べてあげますわ……」
「やっやめ…… やめ…… やめろおおおおおおおおお!」
シスターは男性の前にしゃがんで彼の股間にぶら下がるたぎった棒を持って嬉しそうに笑う。先ほど見た神父の姿が脳裏に浮かび、恐怖で顔を引きつらせ必死にやめおろと叫ぶ男性だった。
「やめませんよ…… あなたもやめてって言われても遊んだじゃない…… ここで……」
「なっなにを!? 僕は…… 何も……」
男性自信を強く握ってうらみがましい目を浮かべるシスターだった。彼の怯える顔を見たシスターは満足そうに微笑んだ。
「うふふ…… いただきまーす」
「うっぐ!!! やめおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
大きく口を開け男性に食いつこうとするシスターだった。自身に向かってシスターの生暖かい息がかかる。恐怖で男性は気を失ってしまった。
「ウギャ!!! 誰だ!」
シスターが声をあげ振り向いて怒鳴る。彼女の右肩に銀色の短剣が刺さっていた。振り向いたシスターの目には右腕を前に突き出した姿のララが見えた。彼女はシスターと目が合うと同時に叫ぶ。
「何をしているの? 薄汚い吸血鬼め!」
「なっ!? あなた……」
「私はララ!! ヴァンパイアハンターよ! 試験中だけど……」
自分を指してヴァンパイアハンターと名乗り声が徐々に小さくなっていくララだった。シスターは寛恕を見て首を大きく横に振った。
「そう…… あなた達が最近我が同胞を葬っていると言われている……」
しゃがんでいたシスターが立ち上がりララに振り向く。ララはベルトから一本短剣を引き抜いてシスターに向けた。
「ねぇ!? あなた吸血症じゃないの? だったらこの血清で治せる!」
「いらないわ! そんなもの!!」
腕を横に大きく動かしてララを睨むシスターだった。
「私は主に祈って力をもらったの! 私を汚したものを排するこの力をね!!」
胸に手を当て牙を見せつけるように牙を見せるシスターだった。ララはシスターの言葉を聞き悲し気にうつむく。
「そう…… ハンナの言葉がわかったわ。覚悟…… そういうことね!!」
「甘いわ!!」
シスターに向けてララが銀色の短剣を投げた。ララの短剣がシスターの心臓を狙ったが、シスターは拳を握り簡単に彼女の短剣を上に弾いた。
「ふふ…… 無駄よ。あなたもすぐに私の仲間に…… なっ!?」
短剣を弾きに余裕の笑みを浮かべるシスターだった。ただララは動揺することなくジッと彼女を見つめている。ララは右手の人指指をかすかに動かした。
「生意気な小娘め! うぐ!!!!! グハアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
話をしていたシスターの背中にいきなり短剣が飛んで心臓を貫いた。シスターが口から血を垂れ流し叫び声をあげ倒れたのだった。
「よそ見は厳禁なのよ。私の短剣は神出鬼没なんだから…… えっ!? やだ! どうしよう…… これって……」
倒れたシスターを見て得意げな顔で話してララの顔を急に真っ赤になった。倒れたシスターの向こうに男性商人のいきり立ったシンボルがあったのだ。まともに見れずに両手で顔を覆うララだった。
しばらくして……
「さて…… 次はグレートワインダー砂海ね。確か砂上船で蜘蛛を探すだっけ? まったく…… 人使いが荒いわね」
不満げにつぶやきながらララは出張教会を出てトンネルを歩く。彼女の後ろを気を失った男性商人が浮かんでついていく。彼らが去った出張教会には神父の遺体と、祭壇の上には心臓を銀の短剣によってシスターがよって張り付けにされていたのだった。
「ふう…… ここに居なさい。すぐに逃げるのよ。そうすればあんたに疑いがかかることはないわ」
トンネルを出たところでしゃがんでいるララ、彼女の前には男性商人が壁にもたれかかって座っている。ララは男性に声をかけると立ち上がり、ダグオン港へ向かって歩き出すのだった。




