第352話 ダートドラゴン
グレンとクレアは地面を蹴って飛び上がった。続いてキティルも二人を追いかけ飛んだ。直後に十字にひび割れた地面が大きく裂けていく。大きく地面が裂け縦横五十メートル、幅十メートルほどの巨大な十字型の穴が開いた。ウォルフのサーベルが刺さった地面は直径一メートル大きさの円形に残り青い光が空へと伸びている。
青い光は消えていく。すぐにサーベルの光に代わり、今度は赤い炎のような長い棒状の光が地面の底からせり上がって来る。
「あれは……」
赤く光った角がゆっくりと穴から地上へと姿を現す。現れたのは地中に生息ダートドラゴンという魔物だ。ダートドラゴンは巨大で全長は三十メートルほどの大きさで、短い舌のような先端が丸い頭の先にサーベルのように湾曲した赤く光るが生え尻尾は五メートルと短く先端が丸く硬いコブがある。地中を生息地としており、目は退化して小さく口は大きい小さな牙が鋸のように生えている。前足の先が巨大で大きな爪が四本生えている。大きな爪は地中の硬い土をいとも簡単に掘り起こし、サーベルのような巨大な炎の力を宿し硬い岩などを破壊する。地中の支配者と呼ばれ、世界の北側のウィンターツリー魔法王国では天と対照の地獄の使いと言われ恐れられている。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
口を開けながらグレン達を威嚇するように大声を上げていた。グレンは地中から姿を現し吠えるダートドラゴンを見つめつぶやく。
「あれはダートドラゴンか…… でもあいつ……」
「銀色ですね……」
グレンの横にクレアが彼の言葉に反応する。ダートドラゴンは皮膚は茶色で薄い黒の毛皮に覆われている、しかし地中から現れたのは銀色であった。
「ウォルフのサーベルが光って出てきたってことは…… あいつは古代遺跡を操作できたのか……」
「わかりません…… 彼が古代人の末裔なんてはずが……」
首を横に振りダートドラゴンを見つめるクレアだった。グレンとクレアの横に居た
「エリィ!! 待って!!!」
「はっ!?」
キティルが声を上げグレンが視線を地面へと向けた。ダートドラゴンの後方、サーエベルを挟んだ裂けた大地の穴の上でディーアはウォルフに肩を貸して浮かんでいた。二人の真下にある裂けた大地は深く真っ暗で底が見えない。
視線を下に向け大地に開いた穴を見つめたディーアは顔を横に向けウォルフにほほ笑む。
「これからはあなたと共に闇に生きます」
「私はあなたをずっと守ります…… 神聖騎士として!」
ウォルフとディーアは見つめあったまま抱きうと、地面の裂け目へ急速で落ちていった。
「えっ!? エリィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
真っ暗な底へ落ちていき消えていくディーアにキティルが悲痛な声で叫ぶのだった。姿が見えなくなるとキティルは拳を強く握りしめる。
「エリィ…… どうして…… なんでよ……」
悲し気にディーアとウォルフが消えた裂けた大地の穴を見つめていた。
「逃がしたか…… クソ! 追いかけて排除しなきゃな…… あいつが邪魔だけど……」
「悲しむのも悔しがるのも…… 後です!!! 来ますよ!! 二人共!!」
クレアが叫ぶ。直後に三人が赤い光に照らされる。視線を下に向けるグレンとクレアだった。ダートドラゴンの上半身が地面からせり上がっており。大きくがっしりとした前足を縁のかけて姿勢で三人を見つめていた。キティルは帽子に親友の槍の柄をしまい、眉間にシワを寄せダートドラゴンを睨みつけた
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ダートドラゴンが口を開け鳴き声をあげながら、赤く光るどろどろとした液体に包まれた球をグレン達に吐き出した。
「どいてよ!!! 私はエリィに会いに行くの!!! ファイアボール!!!」
素早く杖を抜き赤く光るドロドロの液体に包まれた球に向け叫んだ。彼女の杖の先端から火の球が出て飛んで行った。うなりをあげ激しい炎を巻き上げて火の球は、赤いドロドロ液体に包まれた球に命中した。
「えっ!?」
「下がれ!!!! ルナレーザー!!」
火の球は赤いドロドロした液体に触れると、激しい炎をあげ飲み込まれて吸収されてしまった。驚くキティルを押しのけるようにしてグレンが左手を前に出し、赤いドロドロした液体に包まれた球に向けた。
グレンの周囲に月菜っ葉が飛んで来て一斉にルナレーザーを発射した。黄色い光の光線が赤いドロドロした液体に包まれた球を貫く切り裂いていく。切り裂かれたドロドロした赤い液体に包まれた球の破片が地面に落ちるとその場で火が上がる。
呆然とするキティルの横にクレアがやってきて声をかける。
「溶岩弾ですよ…… あれで硬い岩や土を溶かして大きな手で掘って地中を自由に移動するんです。ファイアボールは吸収されますよ」
ダートドラゴンが吐き出しの刃溶岩弾というものだ。ダートドラゴンは体内で溶岩を作り出し蓄えている。地中を徘徊する際に手ごろな石を飲み込んで置き溶岩を巻き付けて吐き出す。溶岩弾は炎に強くファイアボールなどの炎魔法をぶつけても吸収されてしまう。
「じゃあ…… 私は相性が悪いですね…… はっ!!!」
「えっ!? キティルちゃん!?」
キティルは垂直に急降下した。いきなり視界から彼女が消え驚くクレアだった。慌てるグレンとクレアにキティルは降下しながら右手を二人に向けた。
「後は二人でよろしくお願いします。私はエリィを追いかけますので」
「こっこら! 待て!」
「もう!」
どうやらキティルはダートドラゴンをクレアとグレンに任せ、一人でディーアの後を追いかけるつもりのようだ。止めるグレンにあきれるクレアだった。頭を下に向けキティルは一気に降下する、彼女の目に底が見えない真っ黒な穴が迫って来る。
「えっ!? えぇ!? なんでよ!! キャアアアアアアアアア!!」
キティルが地上に到着する直前に地面は戻って激しい音を立てる。キティルは慌てて姿勢を戻して地面に着地しようとした。間に合わずにキティルは地面に叩きつけられ腹を強くうって悲鳴をあげた。
「もう…… なんなのよ…… えっ!?」
苦痛に顔をゆがめながら、体を起こし膝をついた姿勢でキティルは悔しそうに閉じた穴を見つめる。しかし、彼女の大きな影に覆われて振り向いた。
「いやああああああああああ!!!」
振り向いたキティルの目の前にダートドラゴンの大きな右前足が迫っていた。ダートドラゴンは穴から這い出てキティルを見つけキティルを叩き潰そうとしていた。
「動かないで!!!」
「!? はっ!!!」
飛んで来たクレアがキティルを追い越して行った。大剣を構えた彼女は叩きつけられる巨大な前足へと向かって行く。
「はあああああああああああああああああああ!!!」
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!」
気合を入れクレアは大剣をダートドラゴンの前足を叩きつけた。ダートドラゴンの前足はクレアの大剣で弾かれた。前足を弾かれたダートドラゴンは後ろの下がっていく。
クレアは大剣を戻すとすぐにダートドラゴンに背を向けて、地面へと向かって行きキティルを左腕一本でかっさらっていく。クレアはキティルを左腕一本で抱えてグレンの元へと飛んで戻っていく。
「うう…… ごめんなさい」
キティルはクレアに謝るのだった。自分の腕に抱かれてしょんぼりする、キティルにクレアは優しくほほ笑む。
「ふふ。冒険者らしくなりましたね…… 詰めが甘いですけど……」
「それは…… 面目ない……」
クレアはキティルを抱きかかえたままグレンの元へと戻るのだった。




