第340話 立ちはだかる者は蹴散らして
踏み込んだヴァンパイアは上半身を伸びあがらせるようにして槍をグレンへ突き出す。鋭く彼の首を目掛けヴァンパイアの槍が伸びて来る。動かないグレンにヴァンパイアの口元がわずかに緩む。
「ブハアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
グレンはすっと体を横に向け、腕を引き大剣を突き出した。グレンの大剣は向かって来る槍を破壊しヴァンパイアの胸を貫いた。グレンはそのまま大剣を横に勢いよく振った。
「うわ!!」
「ぎゃ!!」
大剣からヴァンパイアが抜けて飛んで行った。二体にヴァンパイアがぶつかって地面に落ちる。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ブギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
地面を蹴ったグレンは倒れヴァンパイアとの距離を詰めた。起き上がろうとしたヴァンパイアの頭から大剣を振り下ろす。ヴァンパイアの一体は頭の中心から腰のへその辺りまで切り裂かれた。グレンは表情一つかえずに横へ視線を向けた。グレンを見て腰を抜かし後ずさりするヴァンパイアにグレンは腕を引いて剣先を突き出した。
グレンの大剣はヴァンパイアの胸を貫いた。腕を引いてグレンは大剣を引き抜くと視線を上に向ける。襲い掛かって来たヴァンパイア空で止まっていた。
「なっ!?」
「ブハアアア!!!」
一言もしゃべらずに飛び上がったグレンは、ヴァンパイアの前に移動し斜め下から大剣を振り上げた。左脇腹から大剣はヴァンパイアの右肩まで切り裂いた。力なく浮力を失ったヴァンパイアの左肩と頭が地面に落ちた。残った下半身も少し遅れた地面に落ちて内臓と肉片を地面にぶちまける。
「ウギャアアアアアアア!!!」
淡々とグレンは横に飛びヴァンパイアの前に移動した。横から大剣でヴァンパイアを切り裂く。真っ二つ
切り裂かれたヴァンパイアは上半身と下半身に別れて地面に叩きつけられた。グレンはすぐに落ちた上半身の横に移動し胸を大剣で貫く。
「クソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
剣を持ったヴァンパイアが上からグレンに飛んでい来る。グレンは持っていた大剣をヴァンパイアから引き抜きながら上へ振り上げた。
グレンへと振り下ろされるヴァンパイアが持つ一メートルほどのロングソードより早く、グレンの二メートル近い大剣は早く鋭く伸びていった。
大剣はヴァンパイアの肘から下を切り落とした。動きが止まり苦痛に顔を歪ませるヴァンパイア、グレンはすぐに大剣を戻し彼の胸に突き刺した。
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」
グレンは左手をヴァンパイアの肩に伸ばしつかんで押さえると右手を引いて剣を抜いた。さらに剣を持ったヴァンパイアが左かグレンへと迫って来ていた。
「ちきしょう!!! うぎゃ!!!」
左手に持っていた右腕のないヴァンパイアをグレンは投げた。投げられた右腕のないヴァンパイアは向かって来たヴァンパイアにぶつかった。バランスを崩し飛んでいたヴァンパイアは地面に落ち、その上に腕が切り落とされたヴァンパイアが重なる。
「うぎ!!! やめ…… うぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」
グレンは逃げないように上からヴァンパイアを踏み、大剣でヴァンパイアに振り下ろした。音がしてヴァンパイアを大剣が貫いた。すぐに地面から大剣を抜き肩にかつぐと、グレンは残るヴァンパイアたちを見つめ地面を蹴った。飛び上がったグレンはヴァンパイアを次々に倒していく。
「グハ!?」
二分ほど後…… グレンは大剣を振り下ろし、ヴァンパイアを真っ二つに切り裂いた。左右に別れて落ちていった。開かれた視界の先に最後に残った、ヴァンパイアが青ざめた表情で地面に立っていた。
「うっ嘘だろ……」
二メートルほど上空で大剣を振り下ろした姿勢で、自分を見るグレンにヴァンパイアは声を震わせていた。グレンとヴァンパイアの目が合う、グレンは優しくヴァンパイアにほほ笑み遭遇して初めて口を開く。
「もうお前だけだな……」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
悲鳴をあげヴァンパイアはグレンに背中を向け飛んで逃げていく。グレンはゆっくりと腰を落とし剣先を逃げるヴァンパイアへと向け地面を蹴ろうと左足に力を込めた。
必死に飛んでレンガ造りの建物へ向かって逃げようと急ぐヴァンパイアだった。振り向いてグレンがまだ地面に立っているのを見てすぐ前を向く。
「なんだ!? あいつ!? 化け物…… ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
グレンが地面を蹴り飛び上がって、あっという間にヴァンパイアへと追いついた。グレンの接近にヴァンパイアは気づかず前を向いたまま飛んでいた。グレンは大剣を突き出しヴァンパイアの背中を貫く。声をあげヴァンパイアは心臓を串刺しにされがくっと首を前に曲げ、手足がだらんとなって力が抜ける。
「即断即決即死…… 人間なら手加減がいるが…… ヴァンパイアなら遠慮はいらねえよ…… なっ!!!!」
大剣を横に振ったグレン、ヴァンパイアの体が大剣から抜け近くの家屋の屋根に落ちて穴を開けて落ちていった。
静かに着地したグレンは左腕を曲げ、袖に大剣の刀身をはわせて血を拭った。肩に大剣をかついだ彼の足元に猫がかけてくる。
「ニャー!」
「じゃあ行くか」
足元で顔をあげ鳴く猫にグレンはニコッとほほ笑み前に歩き出す。猫はグレンとやや距離を取り二メートルほど前を歩く。猫の丸い尻尾が左右に揺れるのを見てグレンはほほ笑む。
ふわりと風が吹いたように猫の耳がかすかに揺れ足が止まった。笑っていたグレンの表情が真顔に変わり肩に担いだ大剣を持つ右手に力を込めた。猫はすっと足をまげ体勢を低くする。
「よっと!!」
グレンは大剣を円を描くようにして地面に向かって水平に振り抜いた。甲高い金属音が町に響いた。グレンの大剣に矢が当たり地面に落ちた。視線を下に向け落ちた矢に見るグレンだった。地面には全体が銀色に輝く矢が落ちていた。
「銀の矢…… 本当に俺を狼男だと思っているのか…… まあ変わらないか…… チッ!!!」
矢が大量に振って来たグレンは剣を戻ながら猫をかばうように前に出た。大剣の刀身に左手を置き前にだす。太い刀身に銀の矢が当たり落ちていく。何本かの矢はグレンにもあたるが強靭な彼の体に弾かれ地面に落ちていく。
「ニャー!」
「あぁ。もういいぜ。ありがとうな。ソーラのとこに戻れ」
グレンの後ろから猫が声をかけた。振り向いてグレンが猫に答えると、走ってガーラム修道院へ戻り暗闇に消えて行く。
「じゃあ…… 派手に…… 行こうか!」
大剣の刀身から手を離しグレンは胸に置く。腰につけた袋から月菜っ葉の酢漬けが入った瓶が浮かび上がる。瓶の酢漬けが黄色く光り出して瓶が割れて、十枚ほどの光った月菜っ葉がグレンの周囲に浮かぶ。別に一枚の月菜っ葉がグレンの口元へ近づく。
口を開けたグレンは月菜っ葉を食べた。酸っぱいのか顔をややゆがめてグレンは月菜っ葉を飲み込んだ。彼の目の奥に赤い強い光が宿り、纏っていたオーラが青くなり体が通常のサイズへ戻った。
「さぁ…… 全部…… 焼き尽くせ!!! ルナレーザー!!!」
グレンは左胸に置いていた手を前に出して叫んだ。十枚の月菜っ葉が強く黄色く光り出し光線を放ち飛んでくる矢を消し飛ばしていく。
矢が消えグレンは大剣を肩にかつぎ、左腕を空へと向けた。光った十枚の月菜っ葉は空に浮かぶ月の前で円を描くように浮かぶのだった。




