第328話 裏口からの侵入
グレン、クレア、キティル、レイナの四人はソーラに連れられて森を進んでいた。ソーラが森に寄り添うに立つ二本の背の低い木の前に立った。二本の木は一メートルほど間が開け隣り合って立って幹がねじれて絡み合っていた。
「ニャーオ!」
木の間の隙間に向かって猫のように鳴くソーラだった。彼の鳴き声に反応し二本の木の間が青白い縁どられたように光り出す。
「これで猫の抜け道でガーラム修道院の近くに行けるよ。ツリーローダーと違って結界が破壊されてないから中には行けないけどね」
振り向いてソーラがグレン達に説明をした。クレアは静かにうなずいてソーラに答え、肩から掛けた鞄を開け手を突っ込み視線を横に動かした。
「大丈夫です。じゃあグレン君…… これをそして今回の目標を伝えてください」
「あぁ…… そうだな」
クレアは鞄からフードを二つ取り出しグレンに渡した。フードを二つ受け取ったグレンはレイナの前に行きフードを差し出した。
「二人共これを被れ」
「なんでフードなんて……」
フードをグレンから受け取ったレイナが首をかしげる。グレンは体をキティルに向けフードを差し出す。キティルはフードを受け取るとグレンはレイナに答える。
「今から正体を隠し…… グルファーブルを大陸から排除するんだ」
「うん?」
「えっ!?」
これからグルファーブルを排除するというグレンに、表情がこわばるキティルだった。レイナは排除の意味が分からず首を傾げていた。
「グレン君…… 排除ってなに?」
「ノウレッジからグルファーブルを追い出すんだよ」
「そうなんだ…… でもそんな素直に出て行ってくれるかなぁ」
顎に指を立てて話すレイナだった。彼女はグレン達がグルファーブルに出て行くように説得しに行くのだと思っているようだ。グレンは少し困った顔でクレアを見た。クレアは真顔で小さくうなずいた。
「違う。グルファーブルは教会から脅威として判断された。だから死体にして大陸から排除する」
「それって…… 殺すってこと?」
目を大きく見開いて尋ねるレイナにクレアとグレンは同時にうなずいた。レイナはグレンの袖を手でつかみ引っ張った。
「グレン君…… あの……」
そっとグレンはレイナの手を自分の袖から外した。グレンはレイナが何を言おうとしているのかわかっており、まっすぐに彼女を見て首を横に振った。
「これが俺達の仕事だ。嫌なら帰ってもらう。もちろんここで聞いたことは忘れてもらうけどな」
「そんな…… うっ……」
淡々とグレンは農場の方角を指してレイナに告げた。彼女に覚悟がなければグレンは本気で帰らせるつもりだ。
「行く! グレン君と一緒に! グレン君とクレアちゃんがやることに文句はいわない!」
「そうか…… じゃあフードを被りな……」
「でっでも! 二人に危ないことはさせないよ! 私はお姉ちゃんだもん!」
フードをつけながらレイナは目に涙をため、グレンとクレアに叫ぶように話す。グレンは呆れた顔でレイナを見た。
「危ないことって…… 敵の本拠地に乗り込むだぞ……」
「いいの! 私が危ないって思ったらだから!」
「はいはい……」
グレンとクレアは顔を見合わせてほほ笑んだ。クレアは前に出てグレンと入れ替わるようにして、レイナとキティルの前に立った。
「今から行うことは全て教会は関与していません…… 良いですね?」
「どういうことですか?」
「これからは歴史に残るのはグルファーブルが正体不明の賊に排除されたということだけです。教会も冒険者もいません……」
話しているクレアの声が徐々に低くなっていく。クレアはキティルとレイナを交互に見て殺気のこもった真剣な表情をする。
「だから余計なことを漏らしたら…… 私とグレン君が排除します…… これに同行するというのはそういうことです」
キティルとレイナは怯えた青ざめた顔でうなずいた。静まり返った森に明るい声が響く。
「はいはーい。話は終わったかな? じゃあガーラム修道院へ行こう!」
「うん!? 珍しいな? ソーラも一緒に行くのか?」
「ガーラム修道院にいる猫たちが心配だからね。あっ! もちろん! 敵がいるときは隠れているからね。戦いは任せたよ」
グレンの背中をポンとソーラは叩いた。グレンは呆れた顔で彼を見たのだった。グレンとクレアもフードを被ると五人は木の間出来た猫の抜け道を抜けたのだった。
「ここは…… ガーラム修道院か…… どこだ!? ここ?」
「グレン君! ここエリィさんが居た家ですよ」
猫の抜け道が抜けた先はガーラム修道院の近くではなく、エリィが滞在していた家の近くだった。五人の正面に月灯りに照らされた赤い屋根の家が見える。
グレンとクレアがソーラに視線を向けた。視線に気づいたソーラは平然と二人に答える。
「うん。正面は城門で硬いからねぇ。地下道を通って強襲しよう!」
「確かにこちらは警備が薄いでしょう…… グレン君」
「あぁ。行こうか」
近くにある石の階段を指してグレンはうなずいた。五人は地下遺跡へ下りて行った。地下遺跡の通路を進む五人。クレアを先頭にソーラ、キティル、レイナ、グレンの順で歩く。
「すごい…… これが古代の遺跡……」
「ここはガエロの怒りの断崖を越えてつながっているんだ」
グレンの前を歩くレイナは初めて訪れた古代遺跡に興奮し、壁に手をあて興味深く眺めている。グレンは彼女の様子を微笑ましく見つ彼女の声をかけた。
「へぇ…… 冒険者ってこんなとこに行けるのねぇ」
「何言ってんだ? レイナ姉ちゃんも冒険者だろ」
「えへへ。そうだったわ…… 私も冒険とかしちゃおうかな」
「やめてくれ……」
首を横に振るグレンにレイナは嬉しそうに笑った。にんまりと笑ったレイナはやや勝ち誇った口調でグレンに答える。
「うふふ。やっぱりお姉ちゃんのこと心配なんだね」
「はっ!? ちげえよ。レイナ姉ちゃんが問題起こしたら弟として恥ずかしいだからだ!」
「なっ!? なんですって!!!」
両手をあげレイナはグレンに詰め寄ろうと近づく。先頭を行くクレアはすぐに振り返った。
「レイナさん。グレン君! 静かに! 何かあります」
「えっ!?」
「悪い……」
クレアに注意された二人はすぐに謝った。クレアは振り返りじっと前を見つめている。
「あれは…… しまっていた鉄格子…… はっ! あれは!」
「クレア義姉ちゃん!?」
通路の先には鍵がかかっていた鉄格子が見えた。クレアは何かに気づき鉄格子に向かって走り出した。慌ててグレン達はクレアを追いかける。
「グレン君! これを見てください」
鉄格子の前に立ち止まったクレアは振り返りグレンを呼んだ。グレンが近づくと彼女の足元に転がる魔族の死体が見えた。
「魔族か…… 頭がないな」
「吹き飛ばされたみたいですね……」
「なにがあったんだ」
「さぁ…… とにかく前に進みましょう」
鉄格子の前には頭が破裂した魔族の死体が放置されておかれたままになっていた。グレンは鉄格子の扉を確認した。
「鍵は…… 閉じられているな…… 壊すか?」
「待って! ここは僕に任せて!」
扉には鎖がかけれら向こう側で南京錠で封鎖されていた。破壊しようというグレンをソーラが止めた。彼はポケットから細長い金属の棒を出して、鉄格子の前に座った。両手を鉄格子の隙間から向こう側にだして南京錠に鉄の棒をつっこんだ。
「開いたよ」
「おぉ!」
すぐにソーラは南京錠を開け鎖を外していく。彼の後ろからグレンが声をかける。
「器用だな…… どこで覚えた?」
「動物をみんな檻に閉じ込めるからね…… それでさ」
グレンに笑顔で答えるソーラだった。ノウレッジに来る前のソーラは密漁された動物の救出を一人でやっていた。その時に鍵の開錠を覚えたという。ちなみにソーラはへまをこいて密猟者につかまり、タワーに助けられたことがあり彼はタワーに頭が上がらない。
「じゃあ行こうか!」
鎖を外したソーラは立ち上がり扉を開けた。通路にキーっという金属の擦れる音が響くのだった。




