第327話 教皇の正体
深夜のガーラム修道院。
住民は皆就寝しているのか最低限のわずかな灯りだけで、ひっそり静まり森の中にたたずんでいた。
わずかな灯りが照らす聖堂、祭壇には巨大な蛇の十字が掲げられている。祭壇の前に膝をつきディーアが祈りを捧げていた。暗がりからウォルフが姿を現してディーアに優しく声をかける。
「ディーア様…… そろそろご就寝を……」
「ウォルフ。ありがとうございます。でも…… まだ皆さんが戦っておられます」
振り向いたディーアは小さく首を横に振った。ツリーローダーを襲撃にする前に見せた毅然とした彼女でなくどこか儚げで切ない。ウォルフは彼女を黙って見つめていた。ウォルフを見たディーアは立ち上がり彼の元へと向かう。
「えっ!?」
「ウォルフ…… あなたは……」
「なっなんですか?」
ウォルフの前に来るとディーアは彼の手を取ってギュッと握りしめた。ウォルフは驚き目を大きく開いて激しく動揺し顔を真っ赤にする。
「あっあの…… ディッディーア様?」
「もっもし…… よろしければ……」
ディーアは顔をあげ上目遣いでウォルフを見つめた。彼の手をはなしゆっくりと体を前に体をだした。ウォルフの胸のディーアの体がすっぽりとおさまる。ウォルフの胸に頬をつけ彼女は声を震わせ泣きそうな様子で話をする。
「あっあなたと共に…… 私も永遠の時を過ごさせてほしいのです!」
「ディーア様……」
手を震わせウォルフは彼女の肩を抱いた。ウォルフの視線にディーアの首筋が入る。上唇の隙間からウォルフの長い犬歯が覗き瞳の動向が開きわずかに赤い光を灯す。
ハッとしてウォルフは首を横に振り、ディーアの肩をつかんでいた腕を伸ばし遠ざけた。ディーアは寂しそうにウォルフを見つめた。ウォルフは寂しさを漂わせながらゆっくりと口を開く。
「あなたには果たすべき使命があります…… まずはそれを全うしてください」
「…… はい……」
ディーアは悲し気に瞳に涙をためてウォルフを見つめ小さくうなずいた。また小さく首を横に振りウォルフは彼女に優しくほほ笑むのだった。
聖堂の脇に教会に奥につながる扉がある。数センチほど扉は開いており、隙間からグルファーブルが二人を覗いていた。
「ふっ…… ちょっと積極的にしすぎたかな…… ウォルフよ。また聖女に逃げられる前に…… 覚悟を決めなさい」
笑ったグルファーブルの口元に細長い牙のような犬歯が見える。彼はウォルフに気づかれないように静かに扉を閉めた。
真っ暗になる廊下、グルファーブルの足元に二つの赤い丸い光に照らされる。二つの赤い光は廊下の奥へと消えて行った。
ガーラム修道院の尖塔、最上階には小さな部屋がある。ベッドと二脚の椅子に置かれたテーブルがあり、小さな窓には鉄格子がついていた。天蓋がついたベッドの上にグレゴリウスが座っている。グレゴリウスは真っ白で下着の透けた薄い裾の短い寝巻を着せられていた。
グレゴリウスは座って窓の外から見える空に浮かぶ月を見つめていた。
「はぁ…… オッちゃん…… 大丈夫かなぁ……」
心配そうにつぶやくグレゴリウスの耳に入り口の扉の鍵が開く音がした。彼は横を向き扉へ視線を向けた。ゆっくりと扉が開きにこやかな笑顔でグルファーブルが部屋に入って来た。
「いやぁ…… グレゴリウス殿…… いや皇子とお呼びした方がよろしいかな?」
「えっ!? ぼっ僕のことを……」
グルファーブルは笑みを浮かべながらグレゴリウスに声をかける。グルファーブルは彼が皇子であることを知っていた。グルファーブルが自分のことを知っているのにグレゴリウスは驚いていた。
驚くグレゴリウスを見てグルファーブルは小さくうなずく。
「えぇ。あなたの幼い頃のことをよく覚えています。面影がヴォルガー二世の幼い頃にそっくりでした…… 今もですがね……」
横を向いてグルファーブルはグレゴリウスが見ていた月に視線を向けた。グレゴリウスは驚愕の表情でグルファーブルを見ていた。グレゴリウスはかなりショックを受けているようだ。それもそのはずである。ヴォルガー二世とは……
「ヴォっヴォルガーって!? 僕の曽祖父の幼い頃を知っているの…… あっあなたは……」
「ふふふ。私は深き闇と永遠の時間に捕らわれておりましてね……」
ゆっくりと振り向くグルファーブルだった。グレゴリウスは彼を見つめハッとした表情をした。
「グルファーブル…… はっ!? そうか! あなた…… もしかして」
グレゴリウスは言葉をため間を開ける。風が吹き雲が流れて雲が月を覆い真っ暗になった。グルファーブルの瞳の奥が怪しく赤く光った。すぐに雲はどき月灯りが部屋へと差し込んだ。
「ヴァンパイア!?」
やや甲高いグレゴリウスの声が部屋に響く。彼の言葉を聞いたグルファーブルはにっこりと微笑み両手を広げた。彼の目は赤く光り口からは牙が覗く。
「さすが…… 皇帝陛下のご子息だ。私の正体を当てるとは見識が深い」
「いつから…… 福音派はヴァンパイアに……」
愕然とするグレゴリウスにグルファーブルは笑顔を向けた。
グルファーブルはヴァンパイアだった。ヴァンパイアは人間の血を吸う魔物だ。血を吸われ者はヴァンパイアに変貌し人を襲うようになる。空を飛び魔力は人より秀でるが、魔族と違い容姿は人間とほぼ同じで古来から人間に紛れ人を襲っていた。
アーリア教は古くからヴァンパイアを敵視し闘争を繰り広げいた。それはヴァンパイアがリア族を弾圧した王ピエトロの末裔だからだ。彼は捕らえたリア族の子供の生き血をすすりヴァンパイアになった。そのためヴァンパイアは女神に背く不浄の存在とされ、古くからアーリア教はヴァンパイアは禁忌の存在とされてきた。
「魔王討伐の末期…… 福音派は我々と秘密裏に接触し和平を結んだ」
グルファーブルが話をつづけた。福音派は魔王討伐が始まった直後に秘密裏にヴァンパイアとの停戦協定を結んだという。
「なっなぜ…… そんなことを?」
「特殊能力者さ…… 福音派は戦争末期になっても一人も出せなかったのさ! 彼らはそれが自分達が縮小した原因だと考えてね」
「それで…… ヴァンパイアに助けを……」
笑顔でうなずくグルファーブルだった。魔王討伐末期、福音派は威信を取り戻そうとヴァンパイアに接触した。身分が低い者をヴァンパイアにさせ特殊能力者だと偽り魔王討伐で功績を上げようとしたのだ。
「バカな奴らさ。今度はかつて戦った魔族と手を結ばされるんだからな…… ククク」
嬉しそうに笑うグルファーブルを見て怯えた顔をするグレゴリウスだった。
「ヴァンパイアが…… 福音派だったなんて……」
「ふふふ。大丈夫。心配はいらない!」
「えっ!? キャッ!!」
ベッドに座るグレゴリウスに向かってグルファーブルが駆けて来た。彼は手を伸ばしグレゴリウスの肩を押せベッドに押し倒す。
「なっなにをするんですか!?」
「私は君を気に入ったんだよ…… その若く柔らかい血肉…… 素晴らしい!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
興奮した様子で力強くグルファーブルはグレゴリウスを仰向けに転がした。グルファーブルは右手てグレゴリウスの背中を押さえつけ、左手を太ももから上に滑らせて服の裾をまくり上げていく。
「ただ血を吸うだけなんてもったいない! 僕は楽しませてくれよ!」
「いや! やめて…… いや! いやあああ」
鼻息を荒くしてグルファーブルの左手がグレゴリウスの下着の中へと滑り込まされた。グレゴリウスが悲鳴をあげる。悲鳴を聞いたグルファーブルは心地よさそうに半目になり彼の下半身は熱くたぎり出す。
「やめて…… やめてええええ」
「いいねぇ…… 心配するな。いずれこの大陸は我々のものだ…… まぁ。その時に君は僕の虜になっているがね」
たぎった下半身をグルファーブルは執拗にグレゴリウスの尻に擦り付けていく。顔を歪ませて必死に抵抗しようとするが、華奢なグレゴリウスの力ではグルファーブルはビクともしなかった。
「いっ!? いや!!!」
グルファーブルがゆっくりとグレゴリウスの下着をずり下していく。
「敵襲です!!!」
「チッ!! わかった! すぐに行く!」
激しくドアが叩かれ声が聞こえた。舌打ちをしたグルファーブルは体を起こす。彼の視線に仰向けにベッドに寝かされ尻が半分出ているグレゴリウスが見えた。彼はグレゴリウスのあられもない姿に我慢できずに口を開けた。
「キャッ!!!」
グレゴリウスの尻にグルファーブルが噛みついた。彼の尻にグルファーブルの牙が刺さり血がにじみ出る。尻に噛みつかれたグレゴリウスに激痛が走り、体から力が抜け意識が遠くなり彼は気を失ってしまった。グルファーブルは尻から口をはなし立ち上がった。口を手で握ってベッドの上に倒れているグレゴリウスを見た。
「終わったら楽しもうなプリンス…… いや…… もう君は僕らの仲間だ…… ふふふ」
グレゴリウスの服の裾を戻し彼の頭を優しく撫でるグルファーブルだった。嬉しそうに笑いグルファーブルは部屋から出て行くのだった。




