第319話 反撃の準備
二手に分かれるというクレアの言葉に皆静かになり考えていた。沈黙を破ったのはルドルフで、彼はテーブルに広げられた地図のツリーローダーを指して口を開く。
「私はウォルターを助ける。助けてやると約束したからな」
自らの部下であるウォルターを助けるというルドルフ、クレアは彼の言葉に大きくうなずく。
「わかりました。じゃあ…… クロースちゃんたちもルドルフさんと一緒に行動してください」
「了解です」
クロースはうなずいて答える。彼女は視線をクレアに向けたまま尋ねる。
「お二人は?」
「俺とクレア義姉ちゃんはガーラム修道院だ……」
グレンが自分とクレアを指して答えた。二人はウォルフとグルファーブルへ天使の涙を実行するためガーラム修道院へと向かうと言う。
「わっ私も行きます!」
「私も! グレン君と一緒に行く」
キティルが手を上げグレン達と一緒に行くと言いレイナが続く。グレンは小さく首を横に振って二人に断ろうと口を開く。
「いや…… これは俺達だけで……」
「嫌です!!!! ガーラム修道院にはエリィが居るんです。彼女を私は連れて帰ります!!!」
「キティル……」
横からグレンに顔を近づけ大声を出すキティルだった。彼女の迫力にグレンは押され体を後ろに下げた。隣に座るクレアに助けを求めるように尋ねる。
「どうする? クレア義姉ちゃん?」
「わかりました。いいですよ。キティルさん…… 一緒に行きましょう」
「はい!」
真剣な表情でキティルは大きくうなずいて返事をした。気合の入った表情をするキティルの横でグレンは心配そうに彼女を見ていた。彼はすぐに横を向きクレアに口を開く。
「いっいいのかよ?」
「大丈夫です…… 彼女が一緒の方が多分……」
グレンはクレアの言葉に何も言わずに黙っていた。二人の間に背後からレイナがやって来て肩から顔をだした。
「ねええ! 私は?」
「うわ!? レッレイナ姉ちゃん? なっなんだよ」
「なんだよ。じゃないでしょ。私も連れてって! 言ってるの! 忘れないでよ! プクー」
自分の事を忘れられたレイナは頬を膨らませている。グレンは呆れた顔で首を横に振り彼女の額を押して下がらせる。
「ダメだ! そもそもレイナ姉ちゃんはここに居て留守番だ!」
「なんでよ! 私も冒険者だよ」
「冒険者でもダメだ! 危険だからな」
ムッとした顔をして次にレイナは自分を指した。
「じゃあ私はお姉ちゃんなんだから! 二人について行く義務があるのよ」
「はぁ!? なんだよそれ」
「だって! 二人とも何か危ないことするでしょ! だから私が監視するのよ」
「いやいやいらないよ。監視なんて!」
レイナは必死に二人に付いて行こうとする。その目にはいつしか涙が浮かんでいる。彼女は必死に付いていく理由を考えさらに口にする。
「それに私はガーラム修道院に入って来たんだから」
「俺も一緒に行っただろ」
「むぅ! 嫌だ! 絶対一緒に行く!」
涙を目からこぼして一緒に行くと駄々をこねるレイナだった。グレンは姉の行動を見て諦めた様子でため息をつき義姉を見た。
「はぁ…… こりゃ置いて行ったら勝手に付いて来るな…… クレア義姉姉ちゃん…… 悪いけど」
「えぇ。レイナさんも一緒に来てください」
「わーい!」
グレンの言う通り置いて行けば勝手に付いてくると、判断したクレアはレイナが付いて来るのを了承した。喜ぶレイナに向かってクレアは真面目な顔で口を開く。
「ただし…… グレン君と私に指示に従ってください。それが出来ないなら連れて行きません」
「わかったわ! 二人の言う通りする」
胸を張って答えるレイナ、グレンは心配そうに首を横に振るのだった。
「僕とソーラさんは状況を見ながら皆さんをフォローします」
「あぁ。頼んだ」
「お願いします。じゃあ…… 皆さん準備をしてください」
オリビアとウォルターを救出する班はルドルフ、ジャスミン、クロース、メルダの四人。グレゴリウスの救出に向かうのはグレン、クレア、キティル、レイナの四人だ。マウラとラックスは農場のカルロスが預かってくれる。
グレン達は準備を始めた。グレンはテーブルに道具や装備を広げて確認している。
「うん!?」
振り向いたグレンの前にあるテーブルに大量の瓶に入ったポーションが置かれている。
「皆さん! 店から持って来たポーションです! 持って行ってください」
マウラとラックスが店から持ち出したポーションを配っているようだ。レイナが駆けて来て二人のテーブルの前で金色に輝く粒が浮かぶ青色のポーションの入った瓶を持ち上げてまじまじと見つめた。
「これ…… エクスポーションじゃない…… すごい? 良いの? こんなのただでもらって?」
エクスポーションは希少薬草であるグランドゴールドアロエから出来る、強力などんな傷薬で深い傷でも一瞬で治療できる。もちろんその分通常のポーションの十倍以上で取引されている。
マウラはレイナに向かってニコッとほほ笑み視線をグレンへ向けた。
「大丈夫です。料金は後で冒険者ギルドに請求しておきます」
「あぁ。回してくれディープスグランの冒険者ギルド宛でな」
マウラは配ったポーションを冒険者ギルドに請求するという。グレンはうなずいて右手の親指でジャスミンを指して答える。ジャスミンは驚き眉間にしわを寄せた。
「なっ!? それはないでござるよ! グレン氏! 半分はテオドールで持つでござる」
「だってさ…… どうする?」
「えぇ。かまいませんよ。テオドールで半額請求してください」
グレンは横で準備をしていたクレアに話を振った。話を聞いていたクレアはすぐにうなずき、ポーションの料金半分をテオドールの冒険者ギルドで持つと答えた。
「ただ…… マウラさんが面倒になるので一旦そちらで請求を処理して後でテオドールに請求してください」
「わかったでござるよ」
ジャスミンは納得してうなずいた。レイナは笑ってエクスポーションを一本自分に鞄に入れてさらに一本をもらってグレンの元へ向かう。
「はい。グレン君も持って行きなよ」
「あぁ…… そうする」
グレンが装備を広げたテーブルの上にエクスポーションを置くレイナだった。グレンはエクスポーションを取って隣にクレアに差し出した。
「ほらよ」
「はーい」
クレアは差し出されたエクスポーションを受け取った。グレンはそのまま自分の分を取りにマウラたちの元へと向かうのだった。
「優しいわねぇ。お義姉ちゃんを優先なのねぇ……」
「チッ!」
グレンの行動を見ていたメルダが隣で準備をするキティルに聞こえる声でつぶやいた。キティルは悔しそうに顔をゆがめて舌打ちをし顔を膨らませた。グレンを睨んだ彼女は口を開く。
「ちょっとグレンさん!」
「どっどうした?」
大声で呼ばれて驚くグレンにキティルは右手を差し出した。
「私にも! エクスポーション取ってください!」
「えっ!? あぁ。わかった」
エクスポーションを取れと言われたグレンは首を傾げてマウラの元へ向かい、キティルの分のエクスポーションを取って彼女に渡した。
キティルはエクスポーションを大事に両手で受け取り満足そうに笑う。
「ふふふ…… ふふふ」
ニヤニヤと笑いながらエクスポーションを見つめる、キティルにメルダは首を横に振ってあきれていた。
「あんた悲しいわね」
「イー!!! メルダ嫌いだよ!!!」
「はいはい…… はぁ」
眉間にしわを寄せメルダを睨むキティルだった。メルダは肩をすぼめるのだった。しばらくしてグレン達は準備を整えツリーローダーへと向け出発する。




