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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第4章 深い森に迷う二人の姉

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第316話 やっぱり気になるあいつ

 深夜過ぎて二時間ほどの宿屋の部屋。

 テーブルに置かれたティーカップにはクロースが淹れた茶が注がれている。カップの横にはタワーが用意したクッキーが包まれた布を皿にして置かれていた。カップとクッキーに囲まれツリーローダーの地図が広げられていた。クロースとタワーはテーブルを挟んで向かいあって座っている。


「オリビア達の状況はなにかご存知ですか?」

「二人はウォルターさんと一緒に教会の地下牢に閉じ込められているようです…… ただ…… グレゴリウスさんだけはすぐにガーラム修道院へと護送されるでしょう」


 ツリーローダーの中心にある教会に指し次に正面の門を指すタワーだった。クロースは難しい顔で彼の指の動きを追って口を開く。


「そういえば…… ウォルフさんが聖者の復活日に料理人が必要だとおっしゃってましたわね……」


 うなずくタワーだった。オリビアとグレゴリウスとウォルターは教会へと連行され、拘束されているという。茶に口をつけるタワーにクロースはクッキーに手を伸ばし小さくかじった。

 クロースはクッキーを持ったまま視線を地図に書かれている教会へ向けた。彼女は顔をあげ向かいに座って茶をすするタワーを見た。


「三人をわたくしたちだけで助けだす…… 無理でしょうか?」


 オリビア達を二人で助けだせないかとい尋ねるクロース、口調は遠慮がちだが目の奥の瞳が輝き彼女がわずかに期待しているのが分かる。彼女は特殊能力者で勇者の仲間として魔法を退けた一人だ、彼女が自分の実力にそれなりに自身を持つのは当然だった。ただ、クロースのわずかな期待にタワーは気づかずに冷徹に答える。


「そっそれは…… 無理ですね。ウォルフさんが警備に付いてます。彼に遭遇したら僕とクロースさんでは対処できません」

「ウォルフさんですか? でも、彼に特殊能力は……」

「はっはい。いまでも彼に特殊能力はありません。でも今の彼はそこらの辺の特殊能力者を凌駕しています」


 タワーは淡々とクロースに今のウォルフは二人でも止められないと告げた。クロースは自身を特殊能力を持たないウォルフが実力で上回っているのが信じられなかった。


「特殊能力者を凌駕ですか…… 彼は何をしたんですか?」

「しょっ詳細はまだわかりませんが…… おそらく福音派が教会の禁忌に手をだしたんだと思います」

「禁忌…… 前にクレアが言っていたゴールド司教のような……」


 静かにうなずくタワーだった。クロースはタワーの言葉に渋々納得した。

 

「そうですか…… ならクレア達と合流するしかないですか……」

「はっはい。ここから脱出して南の農場へ行きましょう。ただ……」


 タワーは村の地図に目を落とす。


「逃げる前に…… 一つだけやっておかないといけないことがあります」

「なんですの?」


 顔をあげたタワーは指で村の中央の教会、北の宿、東の薬屋、西の鍛冶屋、南にある正門を順に指して行く。


「ツリーローダーに結界が張られています。僕の部下の情報収集が阻害されているんです……」

「結界?」

「はい。魔法や透視を阻害するものです。今指した場所に結界道具が置かれているはずです」

「わかりました。その結界を破壊するのですわね」


 クロースはタワーの言葉にうなずき答えた。彼女の答えを聞いたタワーは地図にまた視線を向けた。


「結界は一つだけ破壊すれば良いので一番近い薬屋に向かいましょう」

「わかりましたわ」


 二人は宿の近くにある薬屋に置かれた結界を発生させる道具を破壊することになった。話が終わったクロースはクッキーにまた手を伸ばし頬張った。食べながら寂しそうにつぶやく。


「はぁ…… もぐもぐ…… 普段はこうしてれば勝手にやって来るのに…… あのアホンダラ!!!」

「クロースさん?」

「なんでもありませんわ」


 首をかしげるタワーにクロースは頬を赤らめ首を横に振るのだった。二人は茶と菓子を食べわずかな休息を取り行動を開始する。

 立ち上がったタワーは腰につけた袋からフードを取り出した。彼が取り出したフードは銀色に輝き縁は金色でかなり派手だった。タワーはクロースにフードを差し出す。


「この”溶け込みフード”を被ってください」

「派手ですわね…… これでは逆に目立つのでは?」


 受け取ったフードをクロースはまじまじと見つめている。


「そっそのフードに僕の能力の一部を授けあります。被っている間はみんなに察知されません」

「すごい! いわゆる認識阻害と言うやつですね」


 フードを首に巻き笑うクロースにタワーは小さく首を横に振った。


「ちょっと違います! 何かを阻害することはありません。空気や石ころ道端の草木のようになるんです」

「えっ!?」

「クロースさんも石ころや空気がそこにあってもいちいち反応しないですよね? そいうことです……」

「はぁ……」


 タワーがクロースに渡したのは溶け込みフードという魔法道具だ。魔物から作られる魔法繊維である雨音シルクを使って編まれたフードでタワーの特殊能力の一部が授けられ存在を風景と同化し敵に察知されなくなるという。


「僕みたいですね……」

「へっ!? そっそんなことありませんわ。ほら行きますわよ」


 自虐的なこというタワーに慌てて話しそらすクロースだった。彼女はフードをつけタワーの手を取り部屋から出て行くのだった。

 クロースとタワーは階段の手前で立ち止まり下を覗き込む。朝も近くなる時間だが、カウンターにはまだ主人が居るのが見えた。


「騒がれたくないですわね」

「はい」


 クロースの言葉にうなずくタワーだった。クロースは彼から受け取ったフードを目深にかぶった。二人はそっと階段を下りてカウンターの前を通る。

 椅子に座った店主はカウンターで作業をしていた。二人はカウンターを通りすぎ静かに扉を開け出て行った。


「うん!? 風か……」


 静かに扉が閉じられわずかな音に店主が反応した。しかし、彼は気のせいだと思い作業にすぐに戻るのだった。

 宿から出て歩き出す二人、クロースはフードに手を当て視線をタワーに向け弾んだ口調で話す。


「気づかれませんでしたわ。すごいフードですわね!」

「僕はつけてませんけど…… はぁ……」

「ほっほら行きましょう!」

 

 ため息をつくタワーにクロースは彼の背中に手を当て先に行くようにうながすのだった。二人は村の東にある薬屋へと向かう。深夜と言うこともあり人はおらずひっそりと静まり返っていた。

 宿を出てツリーローダーの大通りへと差し掛かる。


「あれは……」


 クロースが通りの先を見てつぶやいた。魔族が二人並んで歩いて来るのが見えた。


「大丈夫です。端に寄ってすれ違いましょう」

「えっ…… えぇ」


 通りの端にタワーがクロースを連れて行く。端に寄った二人は慎重に歩いて魔族とすれ違う。魔族たちは二人にまったく気づかずにすれ違い通りの先へ消えていった。


「ふぅ。急ぎましょう」

「はい」


 二人は顔を見合わせてうなずき急いで通りを進むのだった。タワーの先導で大通りを進み、しばらく行くと一本奥へ入り小さな通りへやってきた。


「あっちです…… 店の名前は…… ”輝く竜の瞳”といいます」


 通りの先を指しタワーだった。二人の目的地はマウラとラックス姉弟が経営する”輝く竜の瞳”だった。


「!!!」


 激しい物音が聞こえた。何かがひっくり返されるような大きな音だった。


「急ぎましょうか」

「はい」


 クロースが声がかけるとタワーは大きくうなずいた。二人は通りを駆けて”輝く竜の瞳”へと急ぐのだった。

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