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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第4章 深い森に迷う二人の姉

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第311話 始まりは屋台から

 夕刻のツリーローダー。

 村外れへの広場へ向かう道を、グレゴリウスの屋台を目指して福音派の信者たちが歩いていた。百名ほとの福音派の信者たちを案内する、ウォルターを先頭に彼の横にウォルフが並んでいる。通りを抜け福音派の信者はグレゴリウスの屋台へと到着した。


「はい! こちらへどうぞ!」

「君達はこっちだ」


 オリビアとクロースの二人が福音派の信者たちを席へと通す。彼女らの指示に従って静かに福音派の信者たちは席に着いていく。


「今日は大人しいですね…… やっぱりウォルフさんがいるからですかね」

「うーむ」


 席に着く福音派は普段なら騒ぎを起こしていたが、今日はウォルフがいるせいか静かに黙って席に着いていた。席はあっという間に埋まり、座り切れなかった福音派の信者二十人ほどが立って広場の入り口で待っている。オリビアとクロースが注文を取りグレゴリウスに伝える。

 

「はーい! 今日も頑張りますよー」


 屋台の奥では注文を受けたグレゴリウスが元気に返事をする姿が見える。


「エミリアさんだ…… 今日もかわいいなぁ」


 ウォルターがすぐに振り向いてグレゴリウスを見てほほ笑んでいた。ウォルフは苦い顔で彼を見つめていた。料理は次々と出来て福音派の信者たちに食事が運ばれていく。福音派の信者たちは黙って静かに食事を進めたのだった。

 食事を終えた福音派の信者は、五人ずつ席を立って一緒に屋台から出て行く。ウォルフはその様子を見て小さくうなずいていた。彼は食事を終えても立ち上がらず静かに食事をとる信者たちを見つめていた。

 福音派の信者たちはみな席に着き入り口に出来ていた列はなくなった。席を埋めた全員に食事が行き渡るのを確認するとウォルフは右腕をあげた。彼に気づいたオリビアが近づき声をかける。


「どうした?」

「シェフを呼んでくれないか。少し話がある」

「えっ!? あぁ。わかった。ちょっと待っててくれ」


 オリビアはウォルフに答えると屋台に向かって歩いていく。屋台の裏に回りグレゴリウスにウォルフの要求を伝える。


「グレ…… ウォルフが話があるんだと」

「わかったよ。すぐに行くから待っててもらって」

「おう」


 右手をあげグレゴリウスは答えオリビアはウォルフの席に戻り待つように伝えるのだった。作業が空いた直後にグレゴリウスはコックコートに身を包み客席へと出て来た。出て来たグレゴリウスにオリビアが付き添い二人でウォルフの元へ向かう。しかし……


「おい! ちょっと水をくれ」

「えっ!? クックロース」

「大丈夫…… オッちゃん行ってあげて」


 離れたところに座る福音派の信者が水を要求した。クロースに振ろうとしたが彼女も接客中でありオリビアが向かった。グレゴリウスはオリビアを見送ると真顔でウォルフの元へと歩いていく。

 ウォルフが座る席の脇に立ったグレゴリウスは、右手を胸に持って行き頭を下げた。


「なにか不手際でもございましたか?」

「いや…… ちょっと君に頼みたいことがあってな」


 前を向いたまま視線をグレゴリウスに向けウォルフは話を続ける。


「二日後の聖者の復活日にガーラム修道院で君の料理を振舞ってもらいたいのだ」

「えっ!? それは…… 復活祭の祝宴を私が用意しろと?」


 自分を指して驚いてたずねるグレゴリウスにウォルフは黙ってうなずいた。グレゴリウスは申し訳なさげにウォルフの顔色をうかがいながら答える。


「申し訳ありません。今からでは準備が……」

「準備はこちらでしている。君は料理だけしてくれれば良い。それに……」


 ウォルフは自分の向かいに信者に顎で合図を送った。彼の隣に座る信者はローブを着たガイルだった。ガイルがうなずくとウォルフはすっと左手を伸ばした。


「お前に断る権利はない」

「なっ!?」


 グレゴリウスの手首を強くつかむウォルフだった。急に手首をつかまれ驚くグレゴリウスだった。


「あの…… はっ離してください! オッオッちゃん!!」

 

 オリビアに助けを求めようと声をあげた。オリビアが気づいてグレゴリウスを見た。彼女より先に屋台の前に居たルドルフとウォルターが駆けつける。


「やれ!」

「はっ!」


 ウォルフが声をかけるとガイルが立ち上がった。ガイルは屋台のテーブルの間に立って、駆けつけようとしたルドルフとウォルターの前に立ち塞がった。


「ちょっと!? どいてください」


 ガイルに道を塞がれたウォルターが前に出てどかそうと手を伸ばす。しかし、ガイルは体を横に向け彼の手をつかみ右手をローブの懐に手をいれた。


「邪魔をするな…… 堕落者!」

「うっ!?」


 懐から短剣をだしウォルターの首に突きつけた。ウォルターを見たルドルフが声をあげる。


「ウォルター!? ウォルフ殿…… どういうことですかな?」

「ふふふ。こういうことだよ。なぁ! ガイル!」

「はい! おい! お前ら!!!」


 福音派の信者たちが一斉に立ち上がった。彼れの体が大きくなり皮膚が赤や紫や緑に変わり額や頭から角が生えた魔族の姿に変わった。


「魔族!?」


 ルドルフが周囲を見渡し腰に差した剣に手をかける。グレゴリウスの手首をつかんだままウォルフは立ち上がりルドルフに笑顔を向けた。


「ツリーローダーは今より…… 福音派のものだ!!!」


 ウォルフが叫ぶと数人の魔族が口を大きく開け空に顔を向けた。


「ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」

「なっなにを」


 魔族たちが一斉に甲高い声をあげた。これは魔族の連絡用の音だった。


「クッ……」


 音がおさまり広場の周囲から物が壊れる音や悲鳴のような音が聞こえて来る。先に屋台から出て行った福音派の信者たちが魔族に姿を変え暴れ出したようだ。


「武器を捨てな! こいつがどうなっても良いのか?」


 短剣をウォルターに突きつけガイルがルドルフに叫ぶ。

 ルドルフは剣に手をかけたまま悔しそうな表情を浮かべた。そして彼はウォルターに視線をむけた。ウォルターはルドルフを見てすがりつく子犬のような表情をしていた。


「ウォルター…… すまんな。必ず助けてやる!」

「へっ!?」


 ルドルフは剣から手をはなし諦めたのか目をつむった。ガイルとウォルフが彼の姿を見て勝ち誇った笑みを浮かべた。一人の魔族がルドルフを捕まえようと近づく。


「はっ!!!!!!!」

「「「「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」」」」


 目をカッと開けたルドルフが声をあげた。同時に彼の体が光った。光は強烈で広場にた魔族たちの目がくらんだ。ルドルフが光魔法フラッシュを放ったのだ。彼はすぐに振り向いて逃げ出した。テーブルの脇に立っていたクロースに声をかける。彼女は稲妻の光に慣れており平気だった。


「時間は稼いでやったぞ。後はどうするか決めろ! 私は一足先に失礼する」


 クロースに声をかけルドルフは飛び上がり、屋台がある広場から出て行った。クロースはすぐにオリビアの元に駆け寄り彼女の手をつかんだ。


「逃げますわよ! オリビア!」

「でっでも…… グレが!」


 逃げるというクロースだったが、オリビアは躊躇して彼女の手を振りほどく。魔族たちは目が徐々に戻り始める。


「クソ! 堕落者め!! 殺せ!!」


 周囲の魔族から怒鳴り声をあげた。クロースはオリビアを見て首を横に振った。


「もう! おめさの勝手にせえ!!!」


 オリビアを怒鳴りつけクロースは地面を蹴って飛び上がった。ルドルフに続いて広場から彼女の飛び去っていった。

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