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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第4章 深い森に迷う二人の姉

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第301話 薬師の実力

 必死の形相で自分を呼ぶグレンに緊急事態だと、理解してレイナは走ってやってきた。レイナはキティルを見ると駆け寄る。彼女を抱き抱えているメルダの肩をレイナは強く押す。


「どいて!」

「なっなによ!」

「メルダ! 大丈夫! 姉ちゃんに任せろ」


 グレンの言葉にメルダはキティルから手をはなし立ち上がった。レイナはメルダからキティルを受け取るとそっと地面に寝かせ。レイナは寝かせたキティルの右前腕に視線を向けた。


「蛇の牙による傷ね。ここからキメラの毒がまわったのね…… 急がないと……」


 レイナは傷口を確認した。次に彼女は流れる血に混じる青い液体に視線を向けた。


「毒の色は…… 青…… 麻痺毒ね…… なら……」


 うなずいたレイナは鞄から水筒を出して蓋を開け、キティルの右腕の傷口を洗った。


「ピンクセージにグレイコーラルだよな?」

「うん…… 後はね」

「それは……」

「チェリースパイダーよ!」


 レイナの言葉にグレンは驚いた顔をする。ピンクセージは世界中の山に咲く花で毒消と疲労回復の薬の材料として普及している。グレイコーラルはカイノプス共和国の南にあるライオネス諸島に生息する珊瑚で、古くから現地で解毒剤として利用されていた。チェリースパイダーは赤黒い巨大な蜘蛛で体に毒を持っている。


「えっ!? それって毒だろ?」

「いいから今は話している場合じゃないわ。お姉ちゃんを信じて!」

「わっわかった……」


 グレンと話しながらレイナは鞄から次々と物を出していった。彼女は乾燥させたピンクセージと灰色で石のようなグレイコーラルと、赤黒い液体のチェリースパイダーの体液が入った小瓶を取り出した。顔を上げたレイナはグレンに顔を向ける。


「グレン君! 手伝って!」

「わかった」

「メルダさんは農場から毛布をもらってきて!」

「えっ!? わっわかったわ」


 レイナはグレンとメルダに矢継ぎ早に指示をだす。グレンは彼女の横に座り手際よく石を砕く、メルダは農場の建物に走っていく。


「大丈夫…… お姉ちゃんに任せてね」


 キティルの額に手を置いてレイナは優しくほほ笑むのだった。苦しみに声をあげられずうつろな表情でキティルはレイナを見ていた。

 手際よくレイナは草をすりつぶし、グレンが砕いた石と瓶に入った赤い液体を混ぜ薬を調合した。途中でメルダが毛布を抱えて戻って来てレイナの側に置いた。


「出来たわ! 急がないと!!!」


 声をあげたレイナは出来た薬を鞄から出した細い注ぎ口がある器に入れた。


「薬よ! 飲みなさい」

「……」


 レイナはキティルを抱き起こし器に入れた薬を口に注ぐ。キティルはもうろうとして意識はないが、なんとか口に注がれた薬を口に含み飲み込んだ。


「後はこれを…… ちょっとしみるわよ」

「クッ……」


 残った薬を彼女の傷に塗った。苦しみ血の気が悪かったキティルは穏やかな表情に変わった。レイナはキティルの顔を見てほほ笑んだ。グレンはレイナの顔を見てホッと安堵の表情を浮かべたのだった。

 レイナは座ったまま地面に両手をついて空を見上げ小さく息を吐く。


「ふぅ…… グレン君! お茶淹れて! お茶が飲みたい!」

「あーはいはい」

 

 グレンは立ちあがって川に水を汲みに向かおうとする。メルダが彼の腕をつかんで止めた。


「ちょっと! まだ治療中でしょ? お茶なんてまだ……」

「問題ねえよ。レイナ姉ちゃんは治療がうまくいったら茶を飲むんだよ」

「はぁ!?」


 あきれた顔をするメルダだった。グレンは彼女の手を優しく外して茶を淹れに向かうのだった。しばらくしてグレンは茶が入ったカップを三つをトレイに乗せて現れた。彼は農場のキッチンを借り茶を淹れてきたのだ。

 レイナ、メルダの順にカップを渡した、グレンはレイナの横に座りトレイに乗せたカップを横に置く。カップを受け取ったレイナはすぐに口をつける。


「あれ…… 爽やかな良い香り…… 美味しい! これって? 何のお茶?」


 茶を口に含んだレイナが声をあげた。彼女が飲んだことのない茶だったようでグレンに尋ねる。 


「オーサム茶だ。ノウレッジ北のコールドニア名産の茶だよ」

「へぇ…… いいな。これ! 疲れが癒される香りがする。お母さん喜ぶかも! お土産にしようかな…… でもコールドニアって遠いよねぇ」


 寂しそうにするレイナだった。グレンが淹れた茶を気に入り土産として持って帰りたいと思った彼女だが、ノウレッジは南北にも広くコールドニアはテオドールからかなり離れており帰国時に寄ると言うのは現実的ではないのだ。


「テオドールで売ってるぞ。少し高いけどな」

「本当? でも高いのか……」


 カップを持って残念そうにするレイナを見てグレンは優しくほほ笑む。


「でも…… グレン君ってお茶に興味なんか……」


 どこか不満げにほほ笑むグレンを見るレイナだった。グレンは彼女の機嫌など気にすることなく、腰につるした袋に手を入れ包を取り出した。グレンが包を外す中は白い粒を纏ったクッキーだった。


「後…… これもうまいぞ」


 グレンはクッキーをレイナへと差し出した。差し出されたクッキーを見てレイナは首をかしげた。

 

「なにこれ?」

「ギガントヴァレー名物のソルトクッキー」

「へぇ……」


 レイナはクッキーに手を伸ばしてつまんだ。グレンが出したのはギガントヴァレーにある、グダール塩湖で採れる塩を使ったクッキーだ。ちなみにグレンはこのクッキーをグレゴリウスに教えてもらい仕入れてもらい購入した。


「ありがとう……」


 振り向いてグレンは腕を伸ばしてメルダにもクッキーを渡す。レイナはもらったクッキーを口に運んでかじりつついた。一口食べたレイナは目を大きく見開いて驚いた顔をする。


「美味しい! 甘いクッキーと絶妙な塩気がくせになるわ」

「本当ね……」


 レイナはメルダがクッキーを見つめて感心したようにうなずいていた。レイナはクッキーを見つめたまま口を開く。


「グレン君がこんなお茶やお菓子をもっているなんて…… これは誰にあげるつもりだったのかなぁ。お姉ちゃんに教えなさい」


 キリっと目つきを鋭くしグレンにきつく尋ねるレイナだった。


「へっ!? 誰って…… 喜ぶやつがいるんだよ…… 誰だっていいだろう」


 顔を真っ赤にして恥ずかしそうに答えるグレンだった。レイナは不服そうに口を尖らせた。だが、不満げな彼女の態度はわざとらしく表情はどこか緩くニヤついていた。


「ふーん」

「なっなんだよ!」

「別にぃ。私の喜ぶこと全然してくれないのに…… その人は愛されているねぇ」

「はっ!? なんだよそれ!」


 必死に否定するグレンにレイナはあきれたように笑う。


「昔から変わらないねぇ。好きになった人が喜ぶことには一生懸命なのよねぇ。グレン君は!!」

「はあ!?」

「いいなぁ…… クレアちゃんはいっぱい喜んでくれるでしょ? だからグレン君はお菓子とかお茶とかそろえるんだよねぇ」

「うるせえ! ちげえって!!!」


 クレアの名前を出されたグレンは大きな声で叫んで、腕を組んでそっぽをむくのだった。ちなみにグレンは幼い頃はレイナのために一生懸命だった。


「はははっ! レイナ! 良いわねぇ。あんたの面白い話いっぱい教えてもらえる」

「クッ! クソ! はぁ……」


 メルダは勝ち誇ったように笑いグレンは悔しそうにレイナを睨むのだった。


「面白くはないです…… ムカつきます…… はぁ……」

「キティル!」


 目を開けあきれてため息をつきながらキティルが体を起こした。メルダが声をあげキティルの元へと駆け寄り彼女の体を支えた。


「大丈夫? まだ立ち上がらない方がいいわよ」

「うん。ありがとう。でも大丈夫だよ」


 メルダに支えられてキティルはゆっくりと立ち上がった。彼女の元へレイナは水筒と持って近づき彼女の顔を覗き込む。


「うん…… ほら! 水を飲んで! グレン君! 彼女にもクッキーを」

「あぁ。ほら」

 

 レイナはキティルに水筒を渡しグレンにクッキーを持ってくるように指示をした。


「私は食べなくて大丈夫ですよ……」

「ダーメ! 毒と体が戦って体力が落ちてるのよ! きちんと食べて元気にならないと!」

「そうだ。薬師の言うことは聞いておけ」

「わっわかりました」


 うなずくキティルにレイナは満足に笑うのだった。キティルの体力が回復するのを待つグレン達だった。

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