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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第4章 深い森に迷う二人の姉

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第264話 優秀な人

 メルダとグレンとクレアの三人は屋台から、ツリーローダーの冒険者ギルドへとやって来た。ジャスミンは冒険者ギルドで用事がありグレン達と別行動をしていた。

 グレンが押して扉を開け三人は中へと入る。


「うわ!?」

「えっ!? 悪い!」


 扉を開けるとすぐ近くに冒険者が立っており、グレンが開けた扉に当たりそうになって声をあげた。どうやら左手にある冒険者ギルドのカウンターから伸びた長蛇の列が迫っていたようだ。

 グレン達は扉から横にそれるようにして中へと入った。


「すげえ混んでるな……」


 グレンは伸びて来た列を見てつぶやく。彼の言葉にクレアが答える。


「聖者の復活日が近いから護衛の仕事とかが増えているんでしょう」

「そういうことか……」


 三人は列を避けカウンターの近くへと歩いて行く。カウンターでは受付の担当が必死に冒険者達の相手をしていた。


「大変だなぁ」

「えぇ」


 忙しそうな受付を見てグレンとクレアは声をあげていた。同じようにカウンターを見ていたメルダが口を開く。


「ねえ!? ジャスミンはどこにいるのかしら?」

「そういや…… いねえな」

「奥ですかね」


 カウンターの壁には建物の奥へと続く扉がある。クレアはそこを指して答えた。

 そこへ…… 奥の扉が開いて大樹案内人(ツリーフェアリー)制服を着た腰くらいまである長い銀髪の女性が出て来た。


「交代いたします」


 丁寧に頭を下げ銀髪の女性は受付担当を交代した。交代した受付は赤い瞳の美しいエルフの女性だった。


「あの人は…… 確かディープスグランに居た……」


 グレンが女性の顔を見た首を傾げていた。銀髪の女性はディープスグランで見た大樹案内人(ツリーフェアリー)だった。銀髪の女性は優秀なようでどんどんと冒険者を裁きあっという間に列が短くなっていく。


「ふぇっ!?!?!?!? もうそんな時間……」


 人の列が少なくなり顔をあげ前を向いた、銀髪の受付担当は焦った表情をした。


「あっあの! 交代してもらえますか?」

「はっはい」


 右手をあげ銀髪の女性は後ろにに声をかけた。先ほど銀髪の女生と交代した受付担当がすぐに戻って来て代わった。銀髪の女性は顔を隠すようにうつむいてカウンターの奥の扉へと消えて行った。

 少ししてカウンターの奥の扉から、ジャスミンが出て来てグレン達の前へとやってきた。


「おっお待たせしたでござるよ」


 慌てた様子でジャスミンはグレン達に声をかけてきた。


「じゃあ行きますか」

「はいでござる!」


 四人は冒険者ギルドから出て行こうと歩き出した。歩き始めてすぐにグレンがジャスミンに振り返り口を開く。


「そういや…… さっきカウンターにすごい優秀な銀髪のエルフの人がいたんだけどあの人は?」

「ふぇ!? えっと…… はい。彼女はとても優秀でござるよ」

「そうなんだ? 名前はなんていうんだ?」


 グレンは優秀な受付担当の名前をジャスミンに尋ねた。ジャスミンは顔を青くしてひどく狼狽していた。


「えっと…… あの…… はっ!! あの人はマツリカさんでござるよ」

「へぇ。そうなんだ」

 

 うなずいて納得したようにグレンは前を向いた。ジャスミンは前を向いたグレンにホッと胸を撫でおろ……


「でもさぁ。あの人はディープスグランに居なかったか?」

「ふぇ!? あっ…… えっと…… せっ聖者の復活日が近いでござるからな! 優秀な人はここに呼ばれるでござるよ」


 銀髪をディープスグランで見かけたというグレンだった。何の気のないグレンの質問だったが、ジャスミンは慌てて言葉を詰まらせ何とか答えを絞り出したようだった。

 

「そうなんだ。じゃあ忙しいのに俺達の案内をしているジャスミンは優秀じゃないってことか!」

「なっ!? うるさいでござるよ!」

「こら! グレン君! 失礼なこと言わないの!」


 クレアに叱られグレンは笑って舌を出した。ジャスミンはグレンを睨みつけていたいたが、どこか表情は安心したようだった。

 入口の扉を開けグレン達は外へと出た。


「じゃあ魔導ゴンドラを取ってくるでござる。人が多いでござるからな。また村の入り口で待っててほしいでござるよ」


 ジャスミンはグレン達にそう言うと走り去って行った。グレン達は村の入り口まで行きジャスミンと合流したのだった。

 村の外でジャスミンと合流し魔導ゴンドラに乗り込んだ。四人は魔導ゴンドラに乗りガーラム修道院へ向かう。魔導ゴンドラはゆっくりと森を飛ぶ、ジャスミンが前に座るグレンとクレアに声をかける。


「どこへ向かうでござるか?」

「クリアーダウンズヒルに行ってくれ」

「了解でござる」


 ジャスミンは魔導ゴンドラを北へと向けクリアーダウンズヒルへと向けたのだった。しばらくしてガエロの怒りの断崖と黄色く染まったクリアーダウンズヒルが見えて来た。


「今日は静かでござるな」


 眼下に見える黄色に実った、ドリアロンの木を見ながらジャスミンがつぶやいた。彼女の言う通りでこの間はクリアーダウンズヒルに近づいただけで、魔物達が襲って来たが今日は静かなのだ。


「さすがにあんだけドリアーノキラーズマンティスを片付ければしばらくは静かだよ」


 グレンがジャスミンに答える。彼の瞳が横へ動くと光り左手の指を動かした。


「おっと!」

「あっ! 何をするんですか!」


 振り向いて声をあげるクレアだった。彼女は魔導ゴンドラから身を乗り出し大剣の先をドリアーノ実へと向けていた。もう少しでドリアーノの実に届くところだったが、グレンの指の動きに呼応して枝が動いて剣先ははずれたのだった。

 不服そうにするクレアにグレンが厳しい顔をする。

 

「この間たらふく食ったろ! 食いすぎたら実のつき方が悪くなるんだぞ」

「うっ…… ごめんなさい」


 大剣を戻してしょんぼりとうつむくクレアだった。


「まったく。クレアとオリビアが居てクロースはどうやって旅してたのかしら…… 食費とか……」

「本当だよ。絶対苦労してだろうな」


 前に座るメルダが二人のやり取りを見てあきれた様子で口を開いた。グレンは大きくうなずきクレアは恥ずかしそうに頬を赤くするのだった。

 ちなみに勇者候補時代のクレアとオリビアは期待値が高く、各国から援助が豊富にあり食糧には困らなかった。

 クリアーダウンズヒルの中腹にある野原にジャスミンは魔導ゴンドラを停めた。グレン達は魔導ゴンドラから降りた。野原に立ちグレンは視線をクリアーダウンズヒルの頂上へ視線を向けた。


「じゃあ…… ここから頂上までは飛んで行くか」

「はい」


 クレアがうなずいて返事をしメルダは軽く背伸びをした。グレンはジャスミンに向かってたずねる。


「ジャスミンは飛べるのか?」

「大丈夫でござるよ。魔導ゴンドラの操縦は飛行魔法の応用でござるからな」

「そうか。わかった」


 四人は同時に地面を蹴り飛び上がり、クリアーダウンズヒルの頂上へと向かった。先日、クロースとグレンが使った木へと飛んで行く。


「よっと!」

「はっ」

「やっ!」


 幹を中心に左右に別れた枝へとそれぞれ着地する。グレンとクレアが左の枝に右の枝にはメルダがとまった。続いてジャスミンが枝に……


「おわっと!」

「えっ!? ちょっとあんた! 危ないわね!」


 枝に着地したジャスミンだったがバランスを崩して落ちそうになる。慌ててメルダが手を伸ばしてジャスミンの腕をつかんだ。


「大丈夫ですか?」

「おいおい。気をつけろよ」


 心配そうにクレアは体を斜めにし、枝を挟んだ幹から顔を出すようにジャスミンに声をかけた。彼女の後ろでグレンの同じように顔を出していた。


「ふぃ…… 助かったござる。ありがとうございます。メルダ氏! クレア氏とグレン氏も大丈夫でござるよ」


 ジャスミンはメルダに引っ張られ枝の上へと戻った。メルダに礼を言った彼女は心配したクレアとグレンにも答えた。


「えっ!? ジャスミンさん…… どこかで……」

「そういえば……」


 枝から落ちそうになったジャスミンの眼鏡がずれていた。眼鏡が外れた赤い瞳の目を出したジャスミンの顔を二人はどこか見覚えがあった。


「はっ! 大丈夫でござる! ほら!」

「あっあぁ……」

「うーん」


 ジャスミンは二人の視線に気づき、とっさに顔を背けすぐに眼鏡を直して顔をグレン達に向けた。グレンは小さくうなずきクレアは首をひねるのだった。

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