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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第4章 深い森に迷う二人の姉

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第241話 触れたくない過去を持つ者

「はあああああああああああああああああああああ!!! はっ!?!?!?!?!?」


 気配を感じてルドルフが声をあげ振り向き剣を向けた。手斧を持ったミストゴブリンが背後から忍びよりルドルフに飛びかかろうとしていた。

 直後に口を開け眉間にシワを寄せていたミストゴブリンの顔から剣が伸びて来た。細長い剣はミストゴブリンの後頭部から口を串刺しにしべっとりと赤黒い血が刀身を染め地面に垂れて模様を作る。


「おっお前……」


 振り向いて剣を止めたルドルフが声をあげ固まった。ミストゴブリンの背後に右腕を突き出して姿勢を低くして赤く目を光らせるグレンの姿が見えた。グレンはすっと顔をあげたルドルフと彼の視線が合う。


「ルドルフ…… レイナ姉ちゃんはどこだ!!!!!!」


 大きな声をあげてグレンは雑に右腕を横に振った。ミストゴブリンが飛んで行き地面に転がった。


「落ち着け。私の後ろにいる」


 冷静にルドルフが背後を指した。グレンは首を横に傾けルドルフの背後を覗き込む。


「大丈夫ですよ」


 ルドルフの後方にレイナはおり、彼女の前にはクレアが立っており手を上げほほ笑んでいた。グレンは義姉に守られる姉を見て安堵の表情を浮かべるのだった。


「じゃあ…… さっさとこのミストゴブリンどもを片付けるぞ」

「ふん。お前が来たからかさっさと逃げていったぞ」

「えっ!?」


 ミストゴブリンを倒そうと気合を入れ振り向こうとしたグレンだったが、ルドルフは笑って周囲に視線を向け口を開いた。グレンの登場でミストゴブリンたちは、蜘蛛の子の散らすように逃亡し始めもう姿が見えなくなった。

 レイナが笑顔でグレンの元へと駆けて来た。


「グレン君!」

「レイナ姉ちゃん。怪我は?」

「平気よ」


 拳を握り笑顔で腕を曲げて健在をアピールするレイナだった。元気な姉を見て安堵するグレンの横にいるルドルフにレイナは頭を下げた。


「ありがとうございました」

「えっ!? いや…… 神聖騎士として当たり前のことをしただけだ……」

「ふふふ」


 頬を赤くして顔を背けるルドルフを見てほほ笑むレイナだった。視線を横に向けレイナを見たルドルフは恥ずかしさを消そうとわざとらしく咳ばらいをする。


「ごほん。こちらこそ助かった。あなたが助けてくれなければこちらももっと被害が出ていただろう」

「えへへへ」


 ルドルフがレイナをほめて彼女ははにかんだ顔をして手を頭の後ろに持って行く。ルドルフの横で会話を聞いていたグレンが口を挟む。


「なんだよ。レイナ姉ちゃんが出しゃばったのかよ」

「出しゃばったですって! 失礼ね! 私はただゴンドラが襲われてたから氷玉を投げただけよ」

「そうだぞ。彼女がとっさに防いでくれなかったらもっと被害が出ていたんだぞ」


 レイナとルドルフに同時に攻められグレンふ不服そうに口を尖らせる。

 

「ふーん…… でも素人なんだからこういう時は危ないからひっこんでろよ」

「なっ!? 弟のくせに生意気!!」

「うわ!? やめろ!!!」


 すっと右手を伸ばしたレイナはグレンの鼻を中指と人指し指でつねる。グレンはすぐに彼女の手をはたいて外した。


「まったくもう…… 生意気なんだから…… ルドルフさん。普段からこうやって騎士様に迷惑かけてませんか?」

「えぇ。それはもう…… 多大な迷惑をこうむって……」

「おい余計なことを言うなよ!!!」

「グレン君!!! やめなさい! 騎士様に失礼なことしないの! 本当に申し訳ありません。ルドルフさん……」


 左手をルドルフの顔の前に出して止めるグレンだった。だが、すぐに眉間にシワを寄せたレイナにグレンは叱られ手首を掴まれ腕を下させられた。

 レイナはルドルフに頭を下げたふと彼女の視線に彼が持つ剣が目に入る。


「あの…… ルドルフさんの剣はもう光ってないんですね」

「うん!? あぁ。あれはセントソーラーソードという魔法だ。アーリア様の聖なる光の力を剣に込めたのだ」


 レイナの質問に笑顔で答えるルドルフを見てグレンが顔をしかめる。

 実はルドルフは特殊能力を開花させており。彼の特殊の能力は光魔法を自在に操る空の支配者(サンソブリン)…… そうグレンの因縁の相手であるダイアと同じなのだ。特殊能力は唯一無二ではなく同じ能力を持つ者が現れることもある。グレンがルドルフを毛嫌いするのはこの特殊能力のせいでもある。


「ルドルフさん! 大変です」


 ウォルターがルドルフの元へと駆けて来た。慌てた様子の彼にルドルフが声をかける。


「どうした?」

「はい。シスターが二人ほどミストゴブリンにさらわれたようです」

「なんだと……」


 視線をシスター達に向けるルドルフ、視線の先にはシスターの前で深刻な顔をするクレアが見えた。クレアはルドルフに向かって静かにうなずいた。男女の接触が禁忌される福音派のシスターたちは被害をクレアに訴えたようだ。

 

「しょうがない。私が助けに行く。ウォルター! 彼女らを連れて先に行け! もうすぐツリーローダーだ」

「了解です」


 背筋を正したウォルターはルドルフに背中を向け走っていく。グレンは駆けていくウォルターの背中を見てルドルフに口を開く。


「そういや。連れているのはシスターだけなのか?」

「ふん。男たちは逃げた。アーリア様の教えなんだとさ」

「はっ…… あいつら……」


 ルドルフと福音派の信徒は三艘の魔導ゴンドラをチャーターした。男性と女性と信徒ではないルドルフとウォルターと魔導ゴンドラを分けた。福音派の男性を先頭に間にシスターが乗るゴンドラ最後尾にルドルフ達が乗るゴンドラの隊列で、霧が出た直後にミストゴブリンは隊列の中央にあったシスターが乗る魔導ゴンドラを襲った。

 福音派の教義に従い乗るゴンドラの距離を離して、おりルドルフの対処が遅れたのだ。福音派の男性たちは後方の騒ぎを止めるルドルフを無視しツリーローダーへ向かったという。


「グレン君…… 私達も行きましょう。先にジャスミンさんに連絡をしないと」

「そうだな」


 クレアがグレンとルドルフの元へ駆けて来た声をかけた。グレンは大きくうなずきルドルフに顔を向けた。


「俺達も後から行く。待ってろ」

「ふん。私一人でも十分だ。先に行くからお前らが勝手に追いつけ」

「あっ! 待って下さい!」


 剣を収めたルドルフはグレン達を置いて先に行ってしまった。


「チッ……」

「ルドルフさん…… 場所は分かるんでしょうか?」

「光属性の魔法には痕跡を終えるトゥルーイルミネーションがあるからな……」


 不満げに話すグレンを見たクレアが吹き出しそうになっていた。グレンはその様子を見てさらに不満げな表情をする。


「なっなんだよ」

「普段毛嫌いしているくせに、ルドルフさんに詳しいなぁって思って」

「うっうるせえよ!!」


 クレアは優しくほほ笑みグレンは大きな声で叫ぶのだった。


「じゃあ悪いな! レイナ姉ちゃん! 俺達ももう行くわ」

「えっ!? あぁ…… うん。またね」

「あぁ。またな」


 二人はジャスミンに連絡するために道を戻り彼女の元へと向かうのだった……


「ジャスミン!? クソ!」


 道を戻った二人に魔導ゴンドラが見えた。だが、そこに居るはずのジャスミンの姿はなかった。オールは地面に落ちて転がっていた。


「グレン君! これを」


 クレアがグレンを呼んだ。彼女は魔導ゴンドラの道脇にある森を指した。そこは草が乱れ森の奥に何かを引きずっていった痕があった。

 

「ジャスミンさんもミストゴブリンに連れ去られたようです。一人にするべきではありませんでした」

「あぁ…… でも今更そんなこと言ってもしょうがない」

「えぇ。行きましょう。グレン君! お願いします」


 うなずいたグレンは右手の人さし指と中指を立てこめかみの辺りへと持って行った。


「月の精霊よ。何事をも見通すその輝きで我に道を示せ! ルーナクリア!」


 グレンの指先が黄色く輝いた。彼は光った指先を森に出来た引きずられた痕へと向けるのだった。

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