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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第4章 深い森に迷う二人の姉

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第218話 義姉と姉

 うす暗い空をグレンとクレアの二人は手をつなぎ飛んで自宅へと戻る。眼下に見えるテオドールの町を見つめ二人は顔を見合せて笑っていた。

 赤い屋根の二人の家が見えて来た家の前で、戻って来る二人をレイナは呆然と見つめていた。


「あっ! もう……」


 着地するとグレンはすぐにクレアの手を離した。姉の前で女性と手をつないでいるのが恥ずかしかったようだ。クレアは不満げに口を尖らせてる。

 グレンはレイナの前に来て体を横にしてクレアを手で指した。


「姉ちゃん。ごめんな。騒がしくてこの人がクレアだよ」


 少し恥ずかしそうにクレアをレイナに紹介するグレンだった。レイナは視線をクレアに向ける。クレアはレイナの前へとやってきて頬を赤くして恥ずかしそうに口を開く。


「クックレアです…… ごっごめんなさい。取り乱して……」

「あなたが…… クレアさん…… ふふ。レイナです。弟がいつもお世話になってます」


 頭を下げるクレアを見て、優しくほほ笑み頭を下げるレイナだった。顔を上げたレイナはクレアを見つめた後、グレンの胸を軽く拳でつつく。


「いやぁ。グレン君は愛されてるのね」

「なっなんだよ!!」

「だってぇ。あんなに真剣になってくれるんだよ。大事にしなきゃダメだよ」

「うっうるさい」


 恥ずかしそうにするグレンに笑顔を向けるレイナだった。クレアは二人の様子をうらやましそうに見つめていた。


「ふふふ。でも…・… グレン君と恋人に見えるなんてまだまだ私も若いわね」


 無邪気に子供のように得意げな表情で胸を張るレイナだった。


「若いというか…… ただガキなだけじゃ……」

「何か言った?」


 腕を組み口を尖らせ、グレンに冷たい視線を向けるレイナだった。グレンは気まずくなったのか、レイナから視線を外し家の扉を指した。


「ほっほら…… もう帰ろうぜ。義姉(ねえ)ちゃん」

「「うん!!!」」


 グレンはクレアを呼んだつもりだったが、一緒にレイナも返事をした。(あね)義姉(あね)の初遭遇により呼び名が同じという問題が起きた。困惑してグレンは二人の顔を交互に見て口を開く。


「あっえっと…… 今のは姉ちゃんじゃなくて義姉ちゃんを…… 姉ちゃんじゃないのは義姉ちゃんで…… あぁ! もう!!」


 どっちをどう呼ぼうか悩むグレンだった。クレアが居ない場所ではレイナに向かって、彼女の事を名前で呼べるが目の前だと恥ずかしく言えないグレンだった。

 困っている義弟と実弟に義姉と実姉は気を利かせ自分を指した。


「なら私のことはクレアお姉ちゃんでいいですよ」

「なら私のことはレイナお姉ちゃんって呼んでいいわよ!」

「えっ!? えっっと……」


 ほぼ同時に二人から言われてさらに困惑するグレンだった。二人はグレンを左右から迫ってくる、彼女らを交互に見るグレンだった。


「「じーーー」」


 レイナとクレアは二人して期待した顔で、自分をさしながら目を輝かせグレンを見つめている。

 職業柄か危険察知能力が高い男のグレンはどちらかの名前を呼べば、自分がひどい目にあうであろうことはわかっていた。彼が取れる選択は自分だけが辱めを受けることだった。


「えっと…… もう…… クレア義姉ちゃん…… レイナ姉ちゃん…… これでいいかよ!!」

 

 クレアの表情がぱあっと明るくなった。ただ、同じように名前を呼ばれたはずの、レイナはなぜか涙目で不満げな表情でグレンを睨む。


「ちょっと! なんでクレアさんの方が先なの! グレン君のお姉ちゃんは私の方が先なのに!!」

「あぁ!? うるさいな! さっさと帰るぞ!」


 悔しそうにグレンに文句を言うレイナだった。グレンは心底あきれた顔を首を横に振り家を指した。クレアはなぜか勝ち誇った顔でうなずくのだった。


「ほら姉ちゃ…… レイナ姉ちゃんの飯を早く食わしてくれよ。クレア義姉ちゃんの分も出来るだろ?」

「なっ!? グレン君…… 家に招待するのにレイナさんにご飯を作らせるなんてダメですよ。レイナさんはお客様なんですから」

「えっ!? あっそうか…… じゃあ俺達が飯を作って……」


 クレアが客であるレイナに料理を作らせようとしていたグレンに注意する。グレンはハッとして申し訳なさそうにして自分達が料理を作ってもてなそうとした。慌ててレイナが二人を止める。


「いいんですよ。泊まらせてもらうんですから! ごちそうさせてください」

「でっでも…… レイナさんは長旅で疲れてますよね」

「大丈夫です。それに…… 久しぶりに弟に私の料理を食べてもらいたいんです! お願いします」

「わかりました。じゃあ私は手伝いますね」


 レイナはうなずいてクレアは嬉しそうに笑う。グレンが開けた扉を通って二人は中へ入って行って扉を閉めた。


「えっ!? おい! 待てよ」


 扉が閉まる音でグレンは我に返り、二人を追いかけて家の中へと向かうのだった。

 テーブルにグレンが座っている。彼は椅子に座ってそわそわと、首を伸ばして奥にあるキッチンを気にする素振りを見せている。キッチンでは彼の姉二人が仲良さげに並んで料理を作っていた。時折二人の会話がグレンに聞こえて来る。


「グレン君はちゃんと家事を手伝ってます? あの子ったら実家じゃ手伝いを頼んでも文句ばっかり……」

「大丈夫ですよ。お料理やお掃除もお洗濯もやってくれますー。ねぇ!? グレン君?」

「えっ!? あぁ。もちろんだ」


 キッチンからクレアがグレンに問いかける。急に話を振られ自分が話を聞いていることがクレアはグレンが座っている位置から会話が聞こえていることがわかっていた。なぜならいつも二人でこの距離で会話をしているからだ。


「あぁ。よかった。本当にもう…… もっとお家のこと色々やらせておけばよかった」

「ふふふ。大丈夫ですよ。お姉ちゃんはこうやってたとか言ってやってくれます」

「あぁ!?!?!? もう!!! 余計なこと言うな!!!


 姉同士の会話が不穏な方向へ流れるとすかさずグレンが叫んだ。


「こーら! グレン君! クレアさんに生意気な口を聞かないの!」

「うぅ…… わかったよ……」

「べー」


 レイナがキッチンから顔出してグレンに注意をする。グレンがうつむいて返事をする。彼女が引っ込むと今度はクレアが顔をだして下を出す。グレンは悔しそうに拳を握るのだった。


「さぁ。召し上がれー」


 二人が料理を作り始めてから数十分後、テーブルの上に料理が置かれた。トマトベースのスープにこんがりと焼かれた鶏肉と茄子が浮かんでいる。テーブルにクレアとレイナが並んで座り向かいにグレンが座っている。


「わーい! いただきまーす」

「いただきます」


 喜んでスプーンを持ってクレアだった。グレンは特に喜ぶような様子はないが、スプーンを持つ彼の目は輝いていた。


「うーん!! 美味しいです!」


 スープを一口食べたクレアは笑顔になった。レイナは満足そうに笑って視線を向かいに座る弟へと向けた。


「うまい!!! 懐かしい……」


 姉の味を懐かしむグレン、彼の顔は自然と笑顔になっていた。弟の反応に嬉しそうに笑うレイナだった。グレンの両親は二人共に薬師で忙しく幼い頃からレイナが弟妹の面倒を見ていた。しかし、グレンが唐突に手を止めてスプーンで掬ったスープをまじまじと見つめた。


「姉ちゃん。これ何か特別なことしているの? 何度か作ったんだけど…… 姉ちゃんと同じ味にならないんだよ」


 スプーンを静かに下しグレンがレイナに尋ねる。彼は好物のスープを再現しようとしたが、姉が作るとの微妙に味が違い同じ物が作れなかった。


「ふっふっふ。それはね……」


 レイナはグレンの質問にわざとらしく笑ってもったいぶって答える。


「お姉ちゃんの愛をふんだんに入れているのよ!」


 胸を張って答えるレイナ、グレンは呆れた顔をしなぜかクレアは納得したような顔で静かにうなずいている。


「えぇ…… なんか急にまずくなった」

「ムっ!!! 何よ! もうグレン君は食べなくていい!!」


 グレンは苦い顔をするとレイナは怒った顔で彼のスープの皿に手を伸ばす。


「わっわ! ダメ! これは俺のだ」


 さっとグレンはレイナの手が届く前に皿を持ち上げ、抱え込むようにして持って背中を向けるのだった。不満げにレイナはグレンを睨む。クレアはちょっとだけ賑やかな食卓がうれしくて笑っている。ただ、その笑顔にはどこか寂しさが漂っていた。

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