表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

204/211

第204話 輝く月

 激しい光が瞬き轟音が砂海の空に響き渡った。何かが爆発し黒煙が上がり風と衝撃波が周囲へと広がっていく。衝撃は地上まで届き砂が震え円形に流れていく。クレアとクロースとメルダは眩い光に目がくらみ顔を背けた。

 彼女たちの真っ白だったが視界が徐々に戻っていく。


「これはグレン君…… 月菜葉…… それぞれが障壁を……」


 顔をあげクレアがつぶやく。三人の周りは、いくつもの月菜葉が浮かび一つ一つが黄色に輝いていた。上下左右と三人を包むように囲んだ月菜葉たちはそれぞれ魔法障壁を作り出していた。


「優しい光…… 本当の月みたいですわ…… ふふふ」


 クロースは手を伸ばし光の壁に触れ嬉しそうにほほ笑む。魔法障壁はくっついて球体となり、黄色く光る月菜葉によって夜空に輝く満月のように輝いていた。

 クレア達の周囲に浮かぶ青い光の球が青く瞬いた直後に赤い光が横切って行った。


「光の球が……」


 頬を青く光らせつぶやくクレアだった。赤い何かが下から上へと上って行った直後に周囲に浮かんでいた光の球が爆発した。


「はっ!? キャッ!!!」

「うわおっと! 悪い悪い!」


 上からグレンが高速で下りて来てクレアの前の前に姿を現した。至近距離に来るまでグレンの動きに気づかずに、驚いた彼女がバランスを崩しそうにそうなった。グレンは慌てて手を出したクレアを腕をつかんで止めた。


「大丈夫? 義姉ちゃん?」

「うん。ありがとう。助かりました」


 クレアの腰に手を回し彼女を引き寄せグレンは優しく問いかける。クレアはうなずいて彼に返事をした。

 

「えっ!? グレン君…… ここじゃ……」


 返事を聞いたグレンは黙って顔をクレアに近づける。近づく最愛の義弟の顔にクレアは頬を赤くし、彼女はグレンに口づけをされるのを期待し目を閉じた……


「へっ!?」


 待っていた最愛の義弟の感触はなく目を開けたクレア、グレンは彼女の鞄を勝手に開け手を突っ込んでいた。それを見たクレアは期待を裏切られたことと勝手に期待したこが恥ずかしく理不尽に怒りだす。


「なっ何しているんですか!!!」

「えっ!? あぁ。悪い悪い。やすらぎの枝を借りようと思ってさ」

「プク!!! ふん」


 赤くした頬を膨らませてそっぽを向くクレアだった。グレンは彼女のことなど気に留めずにやすらぎの枝を探していた。


「もう……」


 グレンはクレアを抱きかかえたまま彼女が腰に下げた鞄をまさぐっている。クレアは特に抵抗することなく抱かれたまま口を尖らせていた。


「なんか…… あんな顔しているけど嬉しそうね」

「素直じゃないですからね。ふふ。あの姿をオリビアとキティルにも見せたあげたいですわ」

「やめなさいよ。キティルが泣いちゃうでしょ」

「ですわね」


 クロースとメルダは顔を見合せて笑う。クレアは眉間にシワを寄せ二人を睨むのだった。グレンは真剣に鞄をあさっているのため、二人の会話をほとんど聞いておらず気にも留めてなかった。

 グレンの表情が明るくなった。どうやらやすらぎの枝を見つけたようだ。


「あったあった」


 鞄からやすらぎの枝を握った手を抜いて嬉しそうに笑うグレンだった。彼はクレアの体からそっと手を離すと顔をあげシルバーリヴァイアサンを見つめた。

 すぐにグレンはすぐに振り返った彼は何かに気づき、やすらぎの枝をポケットへと突っ込みクレアの鞄へとまた手を伸ばす。


「もう義姉ちゃん怪我してんじゃんか。ほら」

「あっありがとう」


 グレンはクレアの左腕から血を流しているのに気づいた。グレンは鞄から薬玉を取り出してクレアに投げた。薬玉はクレアの足元で静かに破裂し、緑色の薄い煙が彼女を包み肩の傷が癒えていく。グレンは煙に包まれたクレアをみて安堵の表情を浮かべる。


「そこで少し休んでな。後は俺がなんとかするからさ」

「なんとかって…… 大丈夫ですか?」

「平気だよ。俺はノウレッジ大陸に現れた銀色の生物退治の専門家だ。なんせ出現したやつは全部倒しているんだからな」


 得意げな顔で胸を張るグレンにクレアはあきれた顔をするのだった。


「もう…… 全部ってキラーブルーさんとゴールド司教だけじゃないですか。調子にのらないの!!!」

「はいはい。じゃあ行って来る」

「うっうん。お願いします」


 口を尖らせグレンの顔を覗き込んだクレアだった。グレンはクレアの頭を軽くポンと撫でた。グレンの行動にクレアは驚き頬を赤くうなずいた。

 グレンは安らぎの枝をポケットから出すとそのままシルバーリヴァイアサンへと向かって行く。彼を追いかけて浮かんでいた月菜葉も飛んで行く。

 飛び去ったグレンを見上げクレアは嬉しそうにほほ笑み大剣を背中にしまった。


「大丈夫なんですの? 彼一人で?」

「えぇ… 今のグレン君なら大丈夫ですよ…… 私達に女神の光(ルーメ)を降り注いでくれますよ」


 背後から心配そうに尋ねるクロースにクレアは振り向いて微笑んでうなずくのだった。

 飛びながらグレンはフェアリーアンバーをムーンライトへ装着し月樹大剣へと変形させた。グレンの目の奥が赤く光り彼の体が黄色いオーラに包まれた。同時にグレンに続く月菜葉はうっすらと黄色く光り出した。

 

「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


 グレンの接近に気づいたシルバーリヴァイアサンが声をあげた。口を大きく開き青い光線を発射した。グレンの顔が一瞬で青く照らされる。


「ほっ!!!」


 やすらぎの枝をポケットから出してグレンが前へと向けた。グレンは青い光線に包まれて消えて行った。


「えっ!? グレンさん……」

「ちょっと! あっさりやられちゃったじゃない! 何が女神の光(ルーメ)よ!!」

「ふふふ。大丈夫ですよ。ほら」


 グレンが光線に包まれて慌てるクロースとメルダだったが、クレアは余裕の笑みを浮かべ平然としてグレンが居た場所を指した。

 そこには円形の光の盾に守れたグレンが立って居た。グレンが突き出したやすらぎ枝の先端に黄色に光る月菜葉が円形で密集した状態で集まり光の盾を作り出していた。


「もうその光線は俺に効かないぜ」


 左手を下ろしてニヤリと笑うグレンだった。光の盾が消え月菜葉は彼の後ろに並ぶ。


「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


 シルバーリヴァイアサンが鳴き声を上げると翼をはためかせる。青く光る三十センチほどの三角形の刃が無数に翼の前に現れた。刃が放つ青い光が地面を照らし、砂が青く染まっていくシルバーリヴァイアサンの周囲はまるで普通の海のように青々していた。

 青い光が動いた。一斉にグレンに向かって青い刃が飛んで行く。


「うりゃああああああああああああああああああああ!!!!!」


 やすらぎの枝を持つ腕を大きく一回転させたグレンだった。やすらぎの枝に呼応してグレンの周りに月菜葉が集まり彼を守るように囲む。

 グレンは飛ぶスピードを上げて向かってくる光の刃へと突っ込んでいった。

 激しい音が鳴り響く近づいたグレンに鋭く光り刃が襲いかかった。しかし、刃が近づくと月菜葉が激しく黄色い光を放ち黄色い光線が発射された。光線は鋭く伸びて襲い掛かる青い刃を貫く。光線に貫かれた刃は消えていく。無数の刃を月菜葉の光線が次々にはたき落としていく。

 刃を撃ち落としながらグレンはシルバーリヴァイアサンへと向かっていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ