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第201話 背後に気をつけて

 スピードを上げていく砂上船。激しく砂を巻き上げながらシルバーリヴァイアサンへと迫っていく。


「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 シルバーリヴァイアサンが声をあげ光線を放った。砂上船は船体を傾けわずかに航路をずらしギリギリのところで

光線をかわした。光線が通過すると砂が舞い上がり激しく砂上船は揺れグレン達は必死につかって耐える。

 

「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


 天に顔を向けシルバーリヴァイアサンが吠えた。シルバーリヴァイアサンの首元にある翼が白く光り出した。シルバーリヴァイアサンは激しく翼をはためかせた。

 翼と同じ形のブーメランのような光の刃が二枚ほど砂上船へと向かって飛んでくる飛んで来た。


「ふん…… 当たるかよ」


 ラウルは眉間にシワを寄せ視線を左右へ動かしつぶやいた。左右から発射された光の刃二枚が砂上船へと迫って来る。光の刃の大きさは二十メートルほどで、縦にすればマストを除いた船体よりも大きかった。

 激しくそして優雅に鍵盤を叩くラウル、彼の指の動きに反応して砂上船のスピードが上がっていく。光の刃は砂上船を挟むようにして向かって来る。

 甲板に居るグレンたちが強い白い光に照らされた。砂上船の至近距離に光の刃が迫って来ていた。


「いけえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」


 ラウルが叫んだ速度を上げた砂上船、二枚の光の刃が砂上船を挟むようにしてクロスしていく。狭まっていく光の刃の間に砂上船は突っ込む。眩い光が砂上船を照らし光の刃の熱気がグレンた達へと降り注ぐ。グレン達の視界が真っ白な光に覆われた。


「うわ!?」

「「キャッ」」


 急速に目の前の白い光が消え砂海と青空が広がる光景へと戻った。同時に船がわずかに揺れた船体が、震えるようにしてわずかに左に船首に傾ける。オリビアとキティルとグレゴリウスが声をあげた。クロスするように飛んで来た光の刃がわずかに船尾をかすめていったのだった。

 砂上船は光の刃の間を通り抜け無事に生還した。


「ふう…… ギリギリだったな」


 オリビアが顔をあげ小さく息を吐く。光の刃がかすったことで冷や汗をかくグレン達だった。ふと後ろに顔を向けたグレゴリウスの顔を青ざめていく。


「ねぇ!!! あれ!!」

「はっ!? ラウル! 逃げろ!!! 戻って来るぞ!!!」


 船の後方を指してグレゴリウスが叫んだ。オリビアが視線を彼が指した方向へ向けるとそこには通り過ぎた光の刃が高速で戻って来る姿だった。慌てた彼女は操舵するラウルに叫ぶのだった。

 ラウルはオリビアに言われ、自分も後ろを向いて確認し即座に砂上船のスピードを上げた。しかし……


「クソ!!! ダメだ追いつかれる……」


 光の刃のスピードは砂上船よりも速く。徐々にその距離が詰まっていく。


「なら私が」


 オリビアが立ち上がりメイスに手をかける。彼女の前にキティルが立って手を前に出して止める。


「大丈夫だよ。オリビアちゃん。私に任せて!!」


 胸を叩いたキティルは走って船尾へと向かう。鍵盤を操作するラウルとオルガンの横を通りすぎた彼女は船の最後尾へとやってきた。光の刃はもう船の数十メートル先まで迫って来ていた。

 キティルは右手を背中に持って行き杖を抜いた。右手に持った杖の先端を前へと向けキティルは静かに目を閉じた。


「炎の精霊よ。湧き出る情熱をたぎらせ陽炎の揺らめきを示せ! フレアミラージュ!!」


 杖の先端が赤くなり三つの炎の球が噴き出るように飛び出した。直径二メートル放物線を描いた船体後部に左右と中央の地上五メートルほどの高さにそれぞれ浮かんでいる。

 炎の球はどんどんと大きくり直径が二十メートルほどになった。鍵盤を操作しながらラウルが振り向き炎の球を見た。

 

「あっあれは……」

「このまままっすぐ逃げてください」

「えっ!? わっわかった」


 返事をしたラウルは前を向き鍵盤を叩くと、砂上船は猛スピードで前進する。速度があがり小さくうなずいたキティルは両腕を広げた。左右の炎の球が砂上船と反対に動き出し光の刃へと向かって行った。炎の球が旋回すると、光の刃は砂上船ではなく炎の球へ追いかけて離れていく。炎の球に光の刃が追いつき、炎の球を光の刃が切り裂いた。

 音がして炎の球が爆発し光の刃も消滅する。爆風が吹き付け赤い光に照らされたキティルは目を手で覆ってその様子を見つめていた。


「よし!」

「まだだ! やつが次の攻撃してくるぞ」


 喜ぶキティルにラウルが前を指して叫ぶ。シルバーリヴァイアサンが口を開けて砂上船へ顔を向けた。


「大丈夫です! はあああ」


 キティルが杖を前に突き出した。残っていた炎の球が円を描くように旋回してシルバーリヴァイアサンへと向かっていく。前に進みながら炎の球は徐々に右にそれていき砂上船と左右に別れるような進路を取る。

 

「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


 吠えたシルバーリヴァイアサンが青い光線を発射する。発射された光線は砂上船ではなく炎の球へと向かって行く。炎の球は旋回して青い光線をかわした。

 ラウルは視線を横に向け驚いた顔をする。


「なっなんだ…… どうしてやつは炎の球を……」

「ふふ。シルバーリヴァイアサンには炎の球が砂上船に見えているんですよ」


 驚いた表情のラウルに得意げに話すキティルだった。彼女が使った魔法フレアミラージュは囮を作りだす魔法だ。フレアミラージュは揺らめく激しい炎の魔法が、熱せられた空気が屈折することに作り出される蜃気楼のようになって炎の球を標的だと敵に錯覚させる。


「さぁ! 今の内です! 進みましょう」

「あぁ。行くぞ」


 シルバーリヴァイアサンを指した、ラウルへ船を進むように指示するキティルだった。胸を叩いたラウルは砂上船を前へと進めるのだった。

 船首でクレアとグレンがシルバーリヴァイアサンが、キティルが出した囮を攻撃するのを見つめていた。


「すごい…… 本当に良い魔法使いになりましたね」

「あぁ」


 キティルがしっかりと船を守っていることに監視するクレアだった。笑ったグレンが返事をする。二人は笑って互いに顔を見合せうなずいく。二人の背後からクロースとメルダが近づいて来た。


「そうですわね。でも…… 彼女ばかりに活躍させるわけには行けませんわよ」

「えぇ。まだ私の方が先輩だった見せてやらなきゃ」


 クロースは静かにハルバードを抜き、メルダは弓を回転させ笑っていた。クレアは顔をあげシルバーリヴァイアサンを見た。雄大な銀色の竜が砂漠の強い太陽に照らされて神々しく輝いていた。すっと彼女は右手を背負った大剣へと伸ばした。グレンはポケットから月菜葉の酢漬けが入った瓶を取り出した。


「じゃあ行きますよ。みんな」


 クレアは強く足で甲板を蹴って飛び上がり猛スピードでシルバーリヴァイアサンへと飛んで行く。


「えぇ。メルダ! 置いて行かれないようしてくださいましね」

「ふん! あんたこそ!」


 ハルバードを構えクロースはメルダにほほ笑みクレアに続いて飛び出した。メルダはクロースの言葉に不服そうに口を尖らせ地面を蹴った。二人は並ぶようにしてクレアを追いかけて飛んで行く。


「さぁて…… じゃあ行きますか」


 グレンは瓶を開け月菜葉を一枚を口へと放り込んだ。右手の親指を舐めると蓋を閉め瓶をポケットへ戻す。シルバーリヴァイアサンに視線を向けると地面を蹴って飛んだ。飛びながらグレンはムーンライトを月樹大剣(ムーンフォレスト)へと変形させた。

 四人はシルバーリヴァイアサンへ向けて飛んで行く。

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