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第193話 ちっぽけな銀

 にやにやといやらしく笑い拘束されたクレアと近づくアランドロだった。必死な顔でクレアは両手足に力を込め拘束から抜け出そうとしていたが、がっしりと彼女の手足に食い込んで動けない。


「どや? わいの右腕ええのになったやろ? 銀細工は偉大や!」


 近づいて来たアランドロはクレアに右腕を見せつけている。


「銀細工…… 古代の技術のようですね? イプラージと言い。どうやってそれを帝国は?」

「あぁ。教えてやってもええで……」


 にやけてながらうなずいたアランドロはクレアの頬へと手を伸ばす。


「さっ触らないで!!!」


 顔を歪ませ嫌悪感をにじみ出しながら叫ぶクレアだった。彼女の態度に眉間にシワを寄せアランドロは怒りだす。


「黙れ!!!」

「キャっ!!!!」


 近づけていた手を大きく振り上げクレアの頬をはたくアランドロだった。赤くはれた頬でクレアは彼を睨みつける。クレアの態度にアランドロは舌打ちをする。


「チッ! まぁええ。もらうで!」

「はっ!?」

「さっさとはなさんかい!!!」


 アランドロはクレアの背後へと移動し彼女が右手に持つ大剣を奪い取ろうとした。クレアは抵抗したがアランドロは激高し彼女の手を右拳で強く叩いた。衝撃と痛みでクレアの右手の握力が弱まり大剣は彼女の手から離れ甲板に転がった。


「ふん…… 最初から大人しく渡せばええんや!」

「やめて!!!」


 落ちた大剣を見たアランドロがクレアの太ももに手でさすってにやけるのだった。拒絶するクレアを見たアランドロは満足げな表情を浮かべ太ももから手を離し大剣に右手を向けた。大剣が静かに浮かび上がり彼の元へと飛んでくる。


「こいつがワイの腕を……」


 クレアの前へと戻ったアランドロは自身の体を前に浮かぶ、白い刀身を持つクレアの大剣エフォールを浮かべまじまじと見つめた。エフォールはクレアを陥れようとした彼の腕を切り落とした大剣だ。


「せや!」


 何かを思いついたアランドロはにやあっとクレアに笑い。大剣をクレアの元へと飛ばした。


「キャッ!!! なっなにをするんですか!!」

「はははっ。ええ眺めや!!」


 大剣がクレアの前に振り下ろされた。彼女の胸当てと服に切れ込みが入った。入った切れ込みからクレアの豊満な胸の谷間が覗く。服を着られクレアは悲鳴のような声をあげアランドロは満足げに笑っている。


「すぐにひんむいて裸にしてやる。そしてあの邪魔な男を殺してお前はワイのや!」


 右手を下に向けるアランドロだった。大剣はアランドロの右手の下に移動した。ニヤニヤと笑ったまま彼はクレアの横にくると身を乗り出して耳元でささやく。

 クレアは彼を睨むとアランドロは勝ち誇った表情で、またクレアの前に戻り今度は右手を上に向けた。静かにまた大剣が飛びクレアの太ももに剣先を当てる。


「どうや…… 自分の剣で脱がされる気分は? あぁ! あと銀細工についてもちゃんと教えてやる…… ベッドの上でな!!」


 にやにやと笑いながらアランドロはゆっくり右手を上げていく。大剣はクレアの太ももを這うように移動し、ストッキングを斬り裂いていく。途中でスカートに当たると構わず上に移動し裾からスカートに切れ込みが入っていく。


「やっやめてください……」

「大丈夫や。命はとらへんって…… ただ夜は寝かさへんけどなあああ!!!!」

「うぅ…… グレン君…… 助けて……」

「グレンだと!!??!? あいつが来て何ができるんや! あんな雑魚! わいがすぐにしばいたるわ!」


 うつむいてグレンを呼んだ。他の男の名前がだしたうつむいているクレアの顔を覗き込み、眉間にシワを寄せアランドロは怒鳴りつけるのだった。しかし…… クレアは静かに顔をあげにっこりと微笑んだ。


「なーんて…… 遊びすぎました…… ねっ!」


 右手と左手の人指指を互いに向かい合うようにするクレア、彼女の指先から光の剣が瞬時に伸びていき手首をつかんでいた銀色の手に当たる。光の剣は銀色の手の甲を横から貫通した。銀の手はクレアの手から落ちていった。

 手の拘束を外した彼女は光の剣が伸びたままの指先を今度は下に向ける。指先を下に向けクレアは指を前から後ろに移動させた。光の剣は今度は足首をつかむ銀の手を斬りつけた。銀色の手は足から離れ光の剣は消えた。

 クレアは両手を体の前で素早く剣を握るように上下に合わせた。彼女の手から刀身が一メートルはある光の大剣が一瞬で伸びた。


「なっなんやて…… ぐあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


 光りの大剣を構えるとほぼ同時にクレアはアランドロを横から切りつけた。光の大剣はアランドロの右腕に命中し彼は吹き飛ばされ甲板の上を転がった。クレアは黙ったまま膝を曲げ剣を振り切った姿勢で立って居た。


「ふぅ」


 息を吐きながらゆっくりと両手を戻すクレア、伸びていた光の剣は短くなって消えていった。姿勢を直したクレアは両手を胸の前ではたきながら立って、転がったアランドロをみながら見下ろして笑っている。


「ふふ。聖剣大師(ソードマスター)の作った魔法剣はどんな剣より鋭いんです。こんなちゃちな銀の塊が貫けないわけないですよ」


 足元に転がっていた銀の手の残骸をクレアはつま先で軽く蹴った。アランドロの顔の前に真っ二つに斬られた四本指の銀の手の上部が転がって来た。

 クレアの使う魔法剣の最大出力の切れ味は聖剣エフォールよりも鋭く強い。ただ、魔力と体力を消費する魔法剣は継戦能力にかけるため大剣エフォールをクレアは使用している。


「クソ! 武器がないのに…… こいつ……」


 悔しそうに顔をあげクレアを見るアランドロだった。クレアはにっこりとほほ笑んでうなずく。


「えぇ。あなたのおかげですよ。剣を奪われてもさらに奪われない強い剣があれば良いんですからね」


 右手の拳を握って上に向けたクレアだった。彼女の手から光の剣が伸びていく。クレアは微笑んだままアランドロを見つめる天使のような彼女の笑顔だが目は冷たく殺気がこもっていた。


「クックソが!!! 舐めやがって…… うん!?」


 アランドロは起き上がりクレアを睨みつけた。だが、彼が起きると空から武器が甲板へと落ちて来た。直後、アランドロが大きな影で覆われた。彼は視線を上に向ける。直後にアランドロの視界には目を赤く光らせオーラを纏い、眉間にシワを寄せ怒りの表情で牙をむき出しにしたグレンだった。上空から猛スピードでグレンは右腕に持った大剣を構えままアランドロの前の前まで下りて来ていた。グレンが右手に力を込める。


「グバアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」


 大きな声がしてアランドロの姿が飛んで行った。グレンは大剣を振り抜きアランドロの左肩に命中した。アランドロは耐えることが出来ずに引き飛ばされ猛スピードで飛んでった。エフォールは床に転がり音を立て、吹き飛んだアランドロはマストに命中しマストは簡単に折れた。アランドロは背中から甲板にずり落ちうつむいている。

 アランドロを見たグレンは小さくうなずき腕を戻して右肩に大剣をかつぎ振り向いた。


「義姉ちゃん!? 大丈夫か? 何もされてないか?」


 服が破れているクレアを見てグレンは声をかける。顔を上げたクレアは泣きそうな顔で彼を見つめていた。義姉の様子に心配そうな表情のグレン…… しかし、クレアから抑えなられない欲望が表情へとじみ出て、徐々に顔をゆるませていく。グレンは表情が一気に冷めていく。


「グレンくーん!!!」


 顔をあげにやついたまま、クレアはわざとらしく泣きそうな声を出しグレンに抱き着いた。抱き着かれたグレンは怪訝な表情をして軽く彼女を抱きしめすぐに手を緩める。


「怖かったですーーー!! あいつにいっぱい触られて私は怖くて! 泣きそうだったんですよ…… いや泣いてました」

「あっあぁ……」


 必死にアランドロを指して怖かったとアピールするクレアだった。グレンは小さくうなずいて興味なさげにうすい返事をする。クレアは義弟の反応が薄いのを見て口を尖らせるのだった。

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