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第171話 彼女らの正体

「私はノウレッジをかつて支配していた古代人の末裔なのよ!!」


 部屋中に響くような大声で、高らかに自分が古代人の末裔だと叫ぶクローディアだった。グレン達は呆然としてキティルは目を大きく見開いて驚いた顔をしていた。

 驚くグレン達と小馬鹿にしたように笑ったクローディアは短剣を掲げる。


「祖国ガルバルディアへこの遺跡を……」


 クローディアが掲げた短剣に宝石から青い光が伸びていく。短剣に当たった光は刀身をなぞるように動き鍔へと向かう。光が動く様子にクローディアは満足げに笑った。


「さぁ。扉を開けて! そして今度こそ…… 私は平民から…… 貴族へ!!!」


 青い光は静かにクローディアが持つ短剣から彼女の右手へそして腕、肩と移動し首を通り額へ移動して消えた。


「認証キー…… イチイチゼロヨンハチ…… 所有…… 生体階級コードH…… 下級市民…… 不適合…… 盗品判定……」


 宝石が赤く瞬きながら声が聞こえる。クローディアは笑いキティルは心配そうな表情を浮かべている。


「警告! 下級市民ニ告グ!!! タダチニ認証キーヲ返却セヨ!!! 十五秒後ニ警備システムヲ起動シマス!!!! 十五…… 十四……」


 ブザー音が鳴って宝石が赤く光りだした。クローディアの顔は青ざめて固まっている。キティルは宝石から出た言葉を聞いてクローディアに顔を向けた。


「短剣から手を離した方が……」

「黙って!!! 我が一族はこの地を支配し……」

「十三…… 十二……」


 短剣に力を込めてキティルの喉に強く押しつけるクローディアだった。宝石が瞬く赤い光が彼女達を照らし耳には無機質なカウントダウンが響く。

 キティルは負けじとクローディアに叫ぶ。


「いいから! 短剣を返して!! じゃないとあなた死んじゃうわよ!! 石の言葉が分からないの? あの石はあなたを盗賊だと思っているの!!!」


 必死に叫ぶキティルだった。クローディアの手から力が抜けいく。呆然としているクローディアにキティルは優しくほほ笑み短剣を受け取ろうと手を自分の首へ持って行く。しかし……


「いやよ。私はこれで……」

「もう…… タルパ!!!」

「はっ!? ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 首を振って声を震わせたクローディアが短剣返却を拒否した。キティルはクローディアを見て眉間にシワを寄せローレンから教わった呪いの言葉を言い放った。電撃に撃たれような衝撃がクローディアに走り、腹部への激痛が彼女を襲った。クローディアは短剣を落としその場にうずくまってしまった。


「グレンさん! クレアさん! お願いします」

「おう!!」


 キティルは振り向いてクレアとグレンと呼んだ。二人はすぐに駆けつけクローディアを拘束する。キティルはしゃがんで落ちた短剣を拾い上げた。

 グレンはクローディアの両手をつかんで立たせ、クレアは彼女の前に立った。


「そういや…… 囚人には呪いがあるんだったな……」

「よく覚えていました。えらいですよ。いいこいいこ」

「もう。やめてください。あっ! いそがないと」


 身をかかがめたクレアがキティルの頭に手を伸ばして撫でる。撫でられて恥ずかしそうにしていたキティルは何かを思い出した

 扉の前でキティルは銀色の短剣を掲げた。赤く光っていた宝石は青くなり再び細長い光が銀の短剣へと伸びて行った。


「五…… イラッシャイマセ…… プラティニア家ノオ嬢様! ゴ用件ヲ選択シテクダサイ」


 機械的な声がしていたカウントダウンは終わり、響いていたブザーも鳴り止んだ。以前、クレア達と来た時と尾内上に青く光った宝石はキティルの前にディスプレイを映し出した。

 クローディアはその光景を愕然とした顔で見つめていた。


「えっと…… 確かスーツ…… クローディアさん! 鎧を……」


 キティルがクローディアに顔を向けた。キティルの顔を見たクローディアは我に返り彼女を睨みつけた。


「クソ! なんで…… あんた…… まさか……」


 眉間にシワを寄せ怒りを向けるクローディアにキティルは意味がわからず首をかしげた。


「私が何か?」

「まさか…… あんたも古代人の末裔だったとわね!!! よくも騙したわね……」

「えっ!? わっ私が古代人の……」


 クローディアはキティルも古代人の末裔だと叫んだ。驚いた皆の視線がキティルに集中する。本人もかなり驚いているようすだが、ただクレアだけはどこか納得した様子で冷静だった


「やっぱり…… そうですか……」

「義姉ちゃん。気づいてたのか?」

「えぇ。もしかしたらとは思ってました。テオドールでもここでもキティルさんにだけ遺跡は反応しますからね」

「そういや…… キラーブルーもキティルには危害を加えなかった……」


 テオドールでの出来事などから、クレアはキティルが古代人と関係があるのではと推測していたようだ。キティルは自身が古代人の末裔と言われ驚いたがすぐに納得できた。


「ふーん。そっか…… 私の家に古い本があったりするのも…… 短剣が反応するのも…… でもそれなら…… あの時…… エリィは私が守れた…… はずなのに……」


 悔しそうに短剣をギュッと握りしめる、自身の右手をキティルはジッと見つめるのだった。キティルは自身が無知であったことで親友のエリィを行方不明にさせたことを後悔していた。


「ダメ…… 過去は戻らない…・… 今は前に進むしかないもの…… メルダ! クロースちゃん! クローディアさんから鎧を外してください」

「わかったわ」

「わかりました」


 返事をしたメルダとクロースがクローディアの元へとやって来た。彼女から鎧を外そうと手を伸ばす。

 

「やめろ!」

「うるさい。大人しくしろ!!」

「がは!!!」


 身をよじって抵抗するクローディア、グレンは足をかけて彼女を前に倒して腕を交差させた。クローディアの背中と交差した腕の上にグレンは膝をのせ拘束する。


「触るな!! これは…… 私の…… 我が一族が遺した財産だ!」

「違うな。これは…… 冒険者ギルドの財産だ! 二人ともさっさと頼むぜ」


 クロースとメルダは倒されたクローディアへ手を伸ばす。体を必死に動かし抵抗を続けるクローディアだった。


「やめろ! やめなさい!!!」

「大人しくなさいまし往生際が悪いですよ」

「そうよ。一族ってあんた一人じゃないでしょ。だいたいそうならみんなで分けるもんでしょ。あたしたち魔族以下ね……」

「やめろ!! やめろ!!! やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 抵抗むなしくクローディアから鎧は外されていく……


「えっ!? ちょっと!?」

「なんなんですの?」

「あわわ……」


 鎧の腰当を外した直後に顔を真っ赤にしてグレンが顔をそむけた。クロースとメルダも驚いた顔していた。鎧の下のクローディアは何も身に着けておらず裸だった。彼女は鎧の下で身に着けていたはずの白い囚人服がいつの間にか消えていた。


「見ちゃダメーーーーーーーーーーー!!! グレンくん!」

「おい! 義姉ちゃん! やめろ! うわ!?」

「キャッ!?」


 裸のクローディアを見たクレアが慌ててグレンの背後から走って来て彼の目を塞いだ。バランスを崩した拍子に拘束が緩みクローディアは起き上がって駆け出した。彼女はキティルの元へと向かっていく。


「返せ!!! それは我が一族の物だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 叫びながらキティルが持つ短剣に右手を伸ばす。


「敵対行動…… 排除シマス!」


 宝石が赤く瞬いた直後に光線が発射された。光線はクローディアが伸ばした手を貫いた。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 右手を弾かれたようになったクローディアがバランスを崩しそのまま倒れた。彼女は激しい痛みと焼けるような熱で右手を押さえて悲鳴をあげ裸で転げまわるのだった。

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