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第166話 冒険者なら

 開いた扉を見たグレンはクレアの意図を理解した。笑った彼は手を頭の後ろに持って行く。


「ふっ…… そういうことか」

「えぇ。扉が開いてます。あの向こうは鍜治場です。そして…… ミノタウロスさんの目標はおそらく……」

「クローディアだよな」


 顔を見合せてうなずく二人だった。グレンとクレアはミノタウロスをクローディアが相手している間に鍜治場へ行こうと考えているようだ。

 二人の会話を聞いていた五人の顔が引きつった。クロースがあきれた顔で二人に口を開く。


「まったく…… あなた達は冒険者支援課でしょう。いくら帝国の人間だからって彼女を囮を使って目的を達成するのですか」

「あら? いけませんか? それに答えはクロースちゃんが言ってるじゃないですか」

「えぇ!?」

 

 クレアの言葉が意味がわからず首をかしげるクロースだった。グレンはクレアの言葉の意味を理解しており、うなずいてクロースに笑顔で説明をする。


「あぁ。俺達は《《冒険者》》支援課だ。残念だけど…… あいつは冒険者じゃないんでねぇ」

「そうですね。支援対象以外を支援する義理はないんです」


 堂々と宣言する二人だった。クロースはあきれて笑って額に手を当てて首を横に振った。

 キティルが口に手をあて隣のいるメルダに小声で話す。


「グレンさんたちって…… 時々怖いよね」

「でも、別に間違ったこと言ってないでしょ。冒険者あなたのことを見捨てたとかなら苦情言いなさい」

「うん。そうする…… あー。そんなことされたことない…… ふふ」


 指を立て顎に置いて首をかしげ、キティルは今までの二人の言動を思い出していたずらに笑っている。メルダはキティルを見てほほ笑んでいた。

 笑っているキティルにオリビアがうなずく。


「そうだな。彼らは仲間を見捨てないし仲良くしておいた方が良いぞ」

「うん。そうする。さすがオリビアちゃんの元仲間だね」


 拳を握ってキティルに見せるようにするオリビアだった。ただ、彼女の前にいるグレゴリウスは寂しそうにしていた。


「あの…… それだと…… 僕はダメってことに……」

「おぉ! そうだな! 残念だ…… グレ……」

「オッオッちゃん!?」


 悲しそうな顔でしてオリビアはグレゴリウスの肩に手を置く。驚くグレゴリウスにオリビアの口元がわずかに緩み彼女がからかっているのだと分かる。

 二人の様子を見ていたキティルはオリビアに合わせて笑顔をグレゴリウスに向ける。


「それはしょうがないですね。だって冒険者だけですから」

「えぇ!? そんなぁ……」


 しょんぼりとうつむくグレゴリウス、キティルは彼の横で得意気な顔で胸を張っていた。


「グッグレンさーん! 助けてくださーい」

「えっ!? ちょっ!?」


 グレゴリウスは顔を上げ、手を横にしたいわゆる乙女走りで駆けてグレンに抱き着いた。いきなり抱き着かれたグレンは動揺して頬を赤くし彼の背中に手を回してしっかりと支えた。頭ではグレゴリウスは男だと分かっているが抱き着いて来た姿はエミリアという少女なのだ。


「えっ!? なっなんだよ……」

「グレンさん達が…… 冒険者支援課だから…… 僕は料理人だし…… オッちゃん達が僕だけ助けないって言われたから…… 不安で……」


 顔をあげ上目遣いで話すグレゴリウスだった。グレンはグレゴリウスの頭に手を置いて優しく撫でる。


「まったく…… 大丈夫だ。お前は俺の友達だろ。友達は無条件で助けてやるさ」

「やった! えへへ」


 撫でられてグレゴリウスは笑い、抱き着いて浮き上がった嬉しそうに動かすのだった。


「なんか…… 複雑です…… わかってはいるんですが……」

「うん…… 私も…… グレン君め……」

「うふふふふ…… ぶふふふ」


 キティルとクレアは二人の様子を見て腕を組んで悩んだ顔をするのだった。オリビアは笑ってメルダは首を横に振っている。クロースはなぜか拳を握って嬉しそうにしていた。

 グレゴリウスに抱き着かれたままグレンはクレアに顔を向けた。


「義姉ちゃん。早く行こうぜ」

「うっうん…… じゃあみんな私に付いて来てください」

「おう。ほら下りろ」

「はーい」


 グレンが手を離すとグレゴリウスはニコッと笑い明るく返事をして下りた。素直に言うことを聞いたグレゴリウスの頭をグレンはまた優しく撫で彼は気持ちよさそうにするのだった。


「ギリギリ…… まったく…… 私にももう少し……」


 クレアはグレゴリウスとグレンを見ながら、歯をギリギリとさせ眉間にシワを寄せていた。グレンに優しくされるグレゴリウスに彼女は嫉妬したのだった。


「義姉ちゃん? 早く」

「わかってます!!!!!」

「なっなんだよ……」

「ほら!!! 行きますよ!!! はぁ…… まったくもう…… 私というものがありながら…… デレデレして……」


 ぶつくさ言うクレアに先導されグレン達は鍜治場へと向かうのだった。クレア、オリビア、グレゴリウス、クロース、キティル、メルダ、グレンの順で並んだ七人は小走りで壁沿いを進んでいる。

 部屋の中央では銀色のミノタウロスとクローディアが睨み合いを続けていた。クローディアが愕然とした表情をした。ミノタウロスの足の隙間から異動するクレア達が視界に見えたのだ。


「なっ!? 何してんの!!! あんた達!!!!」


 叫び声が部屋に響いた。クレア達は立ち止まって視線をクローディアへと向けた。銀のミノタウロスは振り返ったがすぐに前を向いた。


「行きますよ。みんな」


 クレアはミノタウロスが前を向くと皆に声をかけて進みだした。うなずいた皆は彼女に続く。


「待ちなさい!!! 行かせないわよ!!!」


 クローディアが走り出した。彼女は銀のミノタウロスの横を駆け抜け、クレアたちの元へ向かうつもりのようだ。


「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「チッ!!!」


 目の前に巨大な斧が振り下ろされ舌打ちをするクローディアだった。銀のミノタウロスはクローディアを行かせないように手斧を彼女前に振り下ろしたのだ。砂埃が舞い上がり床の石の破片が飛び手斧が床に突き刺さる。クローディアは横に移動して斧をかわした。

 逃げようとするクローディアに体を向け、銀のミノタウロスは前に出て斧を振り上げ彼女を追いかける。


「もうすぐです」


 銀のミノタウロスはクローディアだけをターゲットにしており、クレアたちには目もくれない。彼らは鍜治場へ続く扉へと近づいた。


「あっ!?」


 扉の前に来たクレアが驚いた。鍜治場への入り口は鉄格子で閉じられていた。中は暗く何があるのかほとんど見えないが通路のようだ。


「二重になってたなんて……」

「クソ!!!」


 鉄格子の前に並んで中を見つめるクレア達だった、グレンが悔しそうに鉄格子を蹴った。鉄格子がわずかに震えるとうっすらと青く光る。


「実験体…… 複数確認…… 対神獣用試験兵器…… キラーブルーネオヲ起動シマス」


 青い宝石が光り出して声が響いた。グレン達は声に反応して振り返る。音がして部屋の床の一部がスライドし、直径一メートルほどの円形の穴が開いた。直後に下から石造りの台がせり上がって来た、台は一メートルほどの高さの台形で上がやや細くなっている。台の中央には青い宝石が埋め込まれていた。

 台には長い茶色の髪の女性が乗っていた。女性たちは寝ているのか目をつむり、髪は後ろにまとめ黄色の額に金属がついた鉢巻を巻いている。下半身は黄色の靴に白く黄色の線が二本入った靴下を履き膝にはプロテクターをつけ白の短パンを履いている。上半身は中央に青い宝石が埋め込まれた黄色の胸当て装備し、その上から青い上着を羽織りへそがでている。彼女たちが乗っていた台の右後方には長い柄の銀色の槍が台に開いた穴に刺さして置かれていた。

 グレンとクレアとキティルは台の上に服装と髪形は違うが台に乗った女性たちは……


「あれは…… グレンさん!」

「あぁ。キラーブルーだ……」

「気をつけてください! 来ますよ!!!」


 四体のキラーブルーネオは目を開けると槍を握り台から飛び下りた。地面に着地したキラーブルーネオはグレン達へと向かって駆け出すのだった。

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