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第156話 協力

「ティラミス様…… タミー様もご一緒に」


 カウンターから出る前にアーラはタミーとティラミスも呼んだ。四人は冒険者ギルドの三階にあるティラミスの部屋へと移動した。


「お茶を淹れて来ますね。皆さまは座ってください」

「私も手伝います」

「いえ…… 話しをする前に少し落ち着きたいので」


 ティラミスの部屋で四人は手前にあるソファとテーブルへ向かう。ソファにティラミスとタミーとクレアが並んで腰かけた。アーラは茶を淹れに行きトレイにカップを乗せて戻って来た。

 アーラが茶を皆の前に置き、ソファの向かいにある椅子に腰かけた。アーラはすぐに茶を一口飲み口を開く。


「クレアさん…… あの殿方が帝国第三統合軍司令官アランドロ准将ですね」

「はい」


 静かにアーラの問いかけにうなずくクレアだった。ティラミスが怯えた表情をする。


「あの人が司令官…… なんか嫌だなぁ……」

「そうですね」


 ティラミスの言葉に横に並んで座るタミーがうなずいた。二人の反応にアーラが微笑む。


「ふふふ。さすがティラミス様ですわ」

「えっ!?」

「第三統合軍は帝国のエリートが集められるそうですが…… 評判はあまりよくありません。司令官の行為が度々問題となるみたいですがラーティス家は帝国創設からの名家ですからね……」


 帝国軍内でもアランドロの横暴は知れ渡っているようだ。アーラの言葉にクレアは悲し気な表情をするのだった。


「そんな人がサンドロックを攻撃…… どうすれば……」

「彼が探しているグレゴリウス皇子はどこに……」


 心配そうなティラミスに腕を組んで真剣な表情のタミーが会話をしている。二人の会話を聞いてアーラはクレアに顔を向けた。

 

「さて、クレアさん。グレゴリウス様についてお話いただけますか? 彼は今どこに?」

「えっ!? どこにいるか知っているんですか?」

「クレアさん?」


 驚くタミーとティラミスにクレアは静かに口をひらく。


「はっはい…… 今はグレゴリウス様ではないですけどね……」


 首をかしげるティラミスとタミー、クレアはゆっくりと三人にグレゴリウスのことについて話した。彼がエミリアに変装しノウレッジへと上陸したことや、上陸の目的は妻であるオリビアと一緒に居るなどを説明した。

 また、現在グレゴリウスはオリビアと合流しランドヘルズに一緒にいることも答えた。


「なるほど変装されていたんですね…… しかも女性に化けていたなんて…… うう!!!」


 クレアの話を聞いたアーラが目を輝かせ拳を握ってなぜか興奮気味に嬉しそうにしている。


「エミリアさんて…… ミナリーさんと一緒に居たってあのすごいかわいい料理人さんですよね?」

「はい。そうですよ」

「あっあの女の子が…… 男の人でしかも既婚者だったなんて……」

「えぇ。信じられません」


 タミーとティラミスは信じらないと言った様子でエミリアについて会話をしている。ティラミスはしょんぼりとうつむき残念そうにする。


「うぅ…… あんなにかわいい上に料理上手で…… 立振る舞いも女子力高くて…… しかも勇者に愛されている…… うらやましい……」

「ティラミス様…… 主に仕える身でなんてはしたないことを…… うう」

「あぁ。ごめんなさい! ノウレッジだと町の皆さんと交流があるから…… つい」

「ふふふ」


 必死に謝るティラミスにアーラはにんまりと微笑んでいた。タミーもアーラにつられて思わず微笑んだ。ただ…… アーラの微笑んだ目は上をむき、二人に向けられているかはわからなかった。すぐに真剣な表情をしたアーラはまっすぐにティラミスを見つめた。


「ティラミス様…… グレゴリウス様を帝国に引き渡しますか?」


 アーラの質問を受けたティラミスは真剣な顔でしばらく悩んでから口を開く。タミーとクレアの視線は彼女に集中していた。


「えっと…… サンドロックは…… 大事な私達の町です…… でも…… ノウレッジ開拓精神は過去を問わないです…… 皇子でも勇者でも…… ノウレッジに来たみんなが開拓民で仲間です。これを変えてはいけないと私は思います。だから…… 渡しません! グレゴリウス皇子はノウレッジ市民です」


 顔を上げたティラミスはタミーに顔を向けた。タミーはティラミスに笑顔で静かにうなずいた。二人を見たアーラは優しくほほ笑み口を開く。


「ふふふ。ありがとうございます。クレアさん…… そういうことです。サンドロック冒険者ギルドは帝国第三統合軍の要求には屈しません。あなた達と協力します」

「ありがとうございます」


 クレアは立ち上がって礼を言うのだった。彼女は立ったまま残っていたアーラが出した茶を飲むと再び三人に頭をさげた。


「じゃあ、私はみんなのところに戻ります。ミナリーさんの事をグレゴリウス様やオリビアちゃんに知らせてあげないと」

「わかりました…… あの! 一つよろしいですか?」

「はい? なんですか」


 アーラがクレアを呼び止めた。首をかしげて尋ねるクレアにアーラは微笑んで答える。


「わたくしたち三人もランドヘルズにご一緒してよろしいですか?」

「えっ!? それは構いませんが…… 大丈夫なんですか?」

「はい。業務は問題ありませんわ。さすがのアランドロ様もいきなり約束は破らないでしょうしね。さぁティラミス様、タミー様、行きましょう」


 手を出したアーラはティラミスとタミーに立つように促すのだった。


「わーい。お出かけだ!」

「ティラミス様…… そんなのんきな」

「ふふふ」


 両手をあげて嬉しそうにするティラミスを注意するタミーだった。二人の様子を見てアーラは微笑んでいた。クレアはアーラたち三人とランドヘルズへと戻ることになった。

 ランドヘルズのオアシス沿いを小さな女の子を肩車する大柄な男が歩いている。女の子が男の頭の上にあるぴょこぴょこ動く犬耳をいじりながら嬉しそうに笑った。


「よかった。ベルちゃん……」

「へい。すっかり元気でがんすよ!」


 肩車されていたのはグレゴリウスで彼を肩車していたのはベルナルドだった。ベルナルドはグレンの治療により呪いを除去され元気になっていた。


「でも本当に良いの? 治ったばかりなのに?」

「大丈夫でがんすよ。ぼっちゃんを肩に乗せて歩くのがあっしの鍛錬がんすよ。だから協力してほしいでがんす」

「ふふふ。わかったよ」


 心配するグレゴリウスにベルナルドは体を前に倒し顔を覗き込んで尋ねる。ベルナルドは笑顔でグレゴリウスに答え歩く速度をあげて元気だとアピールするのだった。

 二人は静かにオアシスのほとりを歩いている。オアシスの周囲には豊富に草が茂り砂海の中とは忘れるような青々していた。その茂みの中から人影が二人の背後に飛び出して来た……


「まぁまぁ…… まあまあまあ!!!!! まあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあまあ!!!!!」


 目を輝かせてアーラが二人の背後から声を上げながら近づいていく。


「!!!!????」


 ベルナルドは声をあげるアーラを横目で見つめて困った顔をする。


「なんでがんすかね…… あのお嬢さんは……」

「僕にもわからないよぉ……」

「とりあえず危険はなさそうでがんすか」


 手を組んでくねくねと動いて背後から、近づくアーラを二人は魔物のように警戒していた。徐々に近づいてはっきりと見えて来るアーラにエミリアがハッと目を見開いた。


「あっ!」

「えっ!? ぼっちゃんの知り合いでがんすか?」

「違うよ。ぼっ…… 私の屋台に来てたお客さんだよ! ミナリーが言ってた助けてくれた人だよ」

「えっ!? そういえば…… なんとなく思い出して来たでがんす」


 グレゴリウスがアーラが屋台に来た客だと教える。ベルナルドもアーラを思い出しのかこっそりと後ろを見ながら小さくうなずくのだった。

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