第140話 こいつのせい
時は過ごし戻ってグレン達がランドヘルズに到着した日……
サウンドロックの中央に建つ教会。オアシスかほど近い位置にある教会は、白く塗られた美しい壁を持ち解放された庭では町の住人たちが穏やかな時を過ごしていた。
ノウレッジにある都市や町には中心に教会があることが多い。もちろんこれはノウレッジの開発が教会の主導して行われているため、ほぼ必ず最初に町の建造されるのが教会だからである。
音がして中庭にた人々の視線が教会の前の通りへと向けられた。通りの荷台に檻が乗った馬車が停まった。聖騎士が檻の中に居た女性を教会の中へと連れて行く。
女性は長い黒髪に白いボロボロのズボンとシャツを着て、両手を縄で縛られ彼女を両脇に挟むように聖騎士が歩いている。
「ここだ。待ってろ」
聖騎士たちは大きな部屋の前で止まり、女性を脇に置き扉をノックして開く。
「失礼します…… テオドールの囚人をお連れしました」
「あぁ。はい。ありがとうございます」
部屋は小さな机と本棚がある狭い部屋だ。右手の壁にはさらに部屋があるのか扉が見える。机の向こうに白い神官服を着た、短く薄い茶色の髪に薄いピンクの細長い瞳を持つ優しくて気が弱そうな中年男性が椅子に座っていた。この男性の名前はレリウス、サンドロックの行政官である。
レリウスは立ち上がり扉までいくと聖騎士に声をかける。
「後はこちらでお預かりするので砂塵回廊への出航の朝に引き取りに来てもらいますか?」
「わかりました。では気をつけて」
「はい。じゃあどうぞ」
レリウスは騎士を帰らせ女性を部屋の中に入れ扉を閉めた。
「やぁ。君がクローディアか……」
連れて来られた女性はグレン達によって囚われたアランドロの部下クローディアだった。名前を呼びかけられても彼女は何も言わずに黙っている。レリウスは彼女に構わず話を続ける。
「僕はレリウス。このサンドロックの行政官だ。君と同じガルバルディア帝国の出身で……」
クローディアは勢いよく振り返り、レリウスを睨みつけ彼の言葉を遮る。
「いまさら私に何か用なの? 帝国は私を見捨てたくせに!」
目に涙を溜め悔しそうにするクローディアだった。レリウスは小さく首を横に振ると顔を横に向けた。彼の視線の先には壁にある小さな扉へと向けられた。
「どうぞ。おはいりください」
レリウスが扉に向かって声をかけた。直後に扉がバーンと勢いよく開いた。扉の中から爽やかな笑顔をしたアランドロが出て来た。レリウスはアランドロに敬礼をする。
「ご指示通りに」
体を横に向けクローディアを手で指すレリウスに向かって、アランドロは静かにうなずいた。
「よぉ。クローディア! 相変わらずけったいなツラしとるのう」
「あっアランドロ様……」
明るく話しかけるアランドロにクローディアは驚き困惑した表情を浮かべる。彼女の顔を見てアランドロはまた彼女に話しかける。
「なーんや? わいが居ておかしいんか?」
「いえ。もう私のことなど……」
顔を背けるクローディアに、目を細め眉を下げわざとらしく悲しそうにして優しくアランドロは声をかける。
「あほやな…… そんなワケあるかい。お前は今でも大事な部下……」
そっとアランドロはクローディアの肩を引き寄せ彼女を抱きしめようと背中へと手を回した。クローディアは困惑しながらも彼を受け入れようと身を任せ……
「とでも言うと思ってるのか! このアホンダラ!!」
「ひいい!!」
目をカッと見開いて背中に回した手で長いクローディアの髪を引っ張るアランドロだった。クローディアは悲鳴をあげた。
「お前も! ロックも役立たずや! 他の奴らは船の一つも調達できん!! わいの部下はみな無能じゃ!!!」
「キャッ!」
興奮しクローディアと直接関係ないことを怒鳴りながら、アランドロは彼女を引きずり倒した。
「はあはあ…… これだから平民上がりは……」
倒れたクローディアを睨んだアランドロは、彼女の前にしゃがみ顔を覗き込む。アランドロは彼女の髪をまたつかみ自分の近くへ引き寄せると、眉間にシワを寄せ凄むようにして話しだした。
「さっきの奴らに余計なことはしゃべってないな?」
「はっはい……」
「よし!」
ニコッとほほ笑んだアランドロは彼女にあることを尋ねる。
「次の船でお前は砂塵回廊へ行くんだろ?」
「はっはい」
怯えて声を震わせて返事をするクローディアだった。アランドロは大きくうなずく。
「よし! 砂塵回廊でプロメテウスの鍜治場を探して来い」
「へっ!? プップロメテウスの鍜治場?」
アランドロからプロメテウスの鍜治場と言われ、意味が分からず首をかしげるクローディアだった。アランドロは彼女の様子など気に掛けることなく話を進めていく。
「おう。それを見つけたらお前を塵回廊から回収して帝国へ連れて帰ってやるわ」
「ほッ本当ですか?」
帝国へ帰れると聞いて、目を輝かせるクローディアに満足そうにうなずくアランドロだった。
「当たり前やアホ! わいが約束破ったことなんかないだろ?」
「えっ!? はっはい……」
「帝国に帰ったらお前にも銀細工をしてやる」
「銀細工! わっわかりました。見つけだします」
アランドロの言葉に目を輝かせうなずくクローディアだった。
「おい。レリウス! こいつに見つかった鎧を手配してやれ! 後わいが待機できる船もな」
「えっ!? しかし…… あれは証拠品で冒険者ギルドに返却を…… それに船は貴重で……」
「じゃあかしい!!! あれがないと鍜治場が開かんのじゃ!! アホか! あとなんでわいがまた庶民と同じ船でいかなあかんのじゃ! ぼけぇ!!!」
怒鳴られたレリウスはうつむいた。レリウスは拳を握りアランドロに気づかれないようにうつむいたまま彼を睨む。レリウスがうつむいて反省しているように見えたアランドロは怒鳴るのをやめた。
「ふん。お前の権限で一時預かりにでもしとけ! 行政官ならそれくらいできるだろ!」
「はっはい」
顔をあげたレリウスが彼の指示を了承した。
「よーし! ならほら立て!」
レリウスの言葉ん笑顔になったアランドロは、クローディアに手を差し出して立たせた。立たせた彼女をアランドロは壁際へと連れて行く。
「ほっ!」
アランドロはクローディアに壁際に立たせると、いきなり彼女のズボンをずり下した。細長い綺麗な足に派手な緑色の下着がさらされる。
にやにやと笑いながらアランドロは彼女の下着をなぞるように指先で触っている。
「えっ!? あっあの…… なっなにを!?」
いきなりズボンを下ろされたクローディアは困惑した表情を浮かべる。
「決まってるだろ? 久しぶりにお前にわいの相手してもらおうと思ってな…… 田舎の娼婦じゃ満足できへんからな」
「そっそんな……」
「うるさい! おらぁ!!!!」
「ひん!!!!!」
パチンという音が響く。クローディアの尻をアランドロが引っぱたいたのだ。頬を赤くしてクローディアが声をあげる。
「どや? 懐かしいだろ」
「ひっ…… あは…… いいえ……」
クローディアの尻を撫でまわしながら笑うアランドロ、彼女は頬を赤くし怯えた様子で首を横に振るのだった。
「なんだ嫌なのか? じゃああっちに奉仕するか?」
にやりと笑ったアランドロはレリウスを指した。さらに怯えた顔でクローディアは大きく首を横に振った。
「おいおい。冷たいなぁ!! お前を砂塵回廊まで連れていくよう手配した恩人やぞ! あほ!!! ほら奉仕せい!」
「きゃあ!!!」
アランドロはクローディアの体をレリウスに向けると、彼女の上着を引きちぎった。悲鳴をあげるクローディアに引き締まった上半身と小振りな胸を下着がさらされ顔を真っ赤にしたレリウスは顔を背ける。
「うるさい!」
悲鳴を聞いたアランドロは不機嫌な顔をして手を振り上げた。また叩かれる覚悟をしたクローディアは目をつむった。
「あっあの!!! わたしは主に仕える身なので奉仕は遠慮します。それにこの部屋は執務室ですので…… 誰かが来るかも知れません」
レリウスが断るとアランドロはつまらなそうに彼を見た。
「そうか…… じゃあ使える部屋を貸し!」
「では、向かいの扉から地下室をお使いください…… あそこなら誰も」
「おう。ありがとうな。来い!」
「いっいや……」
アランドロはレリウスに礼を言いうと、クローディアの髪を引っ張って連れていく。彼女はズボンを下ろされたまま彼女は引っ張れていく。足がもたつき転びそうになるクローディアを心配そうに見つめるレリウスだった。
「ほな! また後でな」
クローディアは引っ張って部屋からでた、アランドロは振り向いて笑顔で手を振り扉を閉めた。呆然と見送るレリウスだった。いきおいよく扉を閉めたためすぐに開いた。
呆然としていたレリウスは部屋の扉が開いているのに気づき我に返って扉を閉めようとした。ふと視界に入った向かいの廊下を見て顔をしかめるレリウスだった。彼がアランドロに案内した地下室への扉が開いていることに気づいたのだ。レリウスは静かに部屋から出て扉を閉めようと近づく。
「まったく…… なぜあんな奴のいうことを…… 陛下…… おいたわしい……」
不機嫌そうに扉に手をかける彼の耳に地下からの声が届く。
「ほら! さっさとしゃぶらんかい!!!!」
「ううぅ…… はむ…… ジュボ!!! んっんんんーーーー」
「そうそう…… やればできるやないかい」
「んん! んちゅ…… ジュル……」
地下からクローディアを弄ぶアランドロの声がわずかに聞こえる。レリウスは悲し気に首を横に振るとそっと扉を閉めた。胸の前で手お合わせ祈ると静かに自分の執務室に彼は戻るのだった。