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第126話 洞窟の奥に潜む闇

 現れたオークへと向かって駆けていくクレアとグレン。先を行くクレアが振り向く、彼女と目があったグレンは小さくうなずいた。クレアは走る速度を落として立ち止まった、グレンは逆に速度をあげ彼女を追い抜いて前に出た。

 目を赤く光らせオーラを纏ったグレンは腰にさした剣に手をかけ、先頭を走るオークの目の前へと迫っていく。


「がうわあああああああああああああああああああああ!!!」


 オークはグレンが接近に反応し持っていた斧を振り上げた。にやりと笑ってグレンの目の赤い光が強くなる。彼は剣を抜きながら上へと振り上げた。

 振り下ろされるオークの斧よりもはるかに速く振り上げられた、グレンの剣は腕を切り落としそのままの勢いでオークの首を斬りつけていった。


「あっがががが……」


 オークの頭と斧を握ったままの右腕が、ほぼ同時に滑り落ちるようにして地面へ向かって行った。動きが止まったオークの体がゆっくりと倒れ、グレンの視界が開けさらにオークの姿が見えて来た。グレンの前に居るオークの二体で左右に別れている。右側のオークが前にでた。グレンは右斜め前に出ながらグレンは右腕を引く、前に出て来たオークは彼に向かって木製の棍棒を振り上げた。


「ほっ!」

「うげえええええええええええ!!!!!!!!!!」


 右腕を伸ばしたグレンに重い感触が伝わる。オークの棍棒が振り下ろさるよりも早く、グレンの剣がオークの体を貫いたのだ。苦痛に顔を歪めるオークにグレンは左手を伸ばして肩をつかんだ。

 グレンはオークから剣を引き抜く。剣で貫かれ開いた胸の穴からから、オークの赤黒い血が吹き出し地面へと落ち赤い点ができていく。


「あらよっと!」


 左腕に力をいれグレンはオークの体を自分の左側へ引っ張った。左からは新たなオークが斧を持ってグレンへと向かって来た。グレンは左を前に出し腹を刺したオークを押した。向かって来るオークの前にオークが押し出された。不意に自分の仲間が前に出たオークが驚いた顔をして止まろうとしたが、間に合わず二体のオークは激突した。


「ギャッ!!」


 オークとオークがぶつかった、オークたちはバランスを崩し重なるようにして倒れていく。グレンは前に出て右腕を引きそのまま斜め下へと突き出した。


「あぎゃあああああああああああああああ!!!!」


 グレンの剣は重なったまま倒れようとしてたオーク二体を貫く。そのままオークたちは地面へと倒れ動きを止めたグレンの剣は自然と抜ける。音がして二体のオークは地面に折り重なって倒れた。二体のオークの死体からは赤黒い血が滲みでて地面を染める。グレンは前かがみに地面に向かって剣を突き出した姿勢になっている。彼はゆっくりと腕を引く。


「ふぅ…… まだやるか?」


 剣を引き抜いて小さく息を吐いた、グレンはすぐに体を起こし軽く振って血を血拭った。グレンの前には七体のオークが居て、彼はオークたちを睨みつけ目で牽制している。


「おう!?」


 前に居るオークはがわずかに笑ったように見える。背後に気配を感じたグレンが横目で確認すると、オークが素早く動いて彼を囲んでいた。

 

「囲ったくらいじゃどうにもなんねえよ」


 視線が横に動いたグレンだった。彼の視線の先にオークの背後にキラっと白い光が輝くのが見えていた。背後にオークがグレンに斬りかかろうと剣を構えた。


「グギャ!!!」


 グレンの背後で斬りかかろうとした、一体のオークの頭が背後から来た何者かに踏まれる。同時に黒い人影がグレンの横へと下りてきた。


「よっと!」


 いきおいよくグレンがしゃがむ。しゃがむ彼の髪の毛がふわりと風になびく、頭の上を何か長い物が猛スピードで鋭く一回転したのだ。


「「「「「「ガッ!?」」」」」」


 しゃがんだグレンの耳にオークのつぶれた声が届く。体勢を低くしたため足しか見えなかったオークだが、グレンはすぐに顔と体を次々に拝めるようになった。グレンの足元にオークの首が転がり周囲には首のないオークの死体が倒れていった。

 見上げるグレンの視線の先には、茶色の長い髪がふわりと落ちて優しく凛々しい義姉の横顔があった。グレンの横には伸ばした両腕の先に大剣を握るクレアが立っており、彼女が握る白い輝く聖剣エフォールの刀身から赤黒いオークのが滴り落ちていた。

 クレアは飛び上がりオークを踏みつけ、グレンの横へとやって来て大剣で周囲を薙ぎ払ったのだ。


「さて……」


 ゆっくりとグレンは立ちあがった。クレアは前を向いたまま剣をゆっくりと下ろしにっこりと微笑んだ。


「がっ!!! があっあうあ……」

「ぐぎぎ……」


 二人の前に生き残ったオークが二体いた。グレンとクレアのを見るオークたちは恐怖に顔を引きつらせている。十体いた仲間はわずかな時間で、二体にまで減らされてしまったのだから当然である。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「あっ!? がうあああああああああああああああああああ!!!」


 武器を捨て一体のオークが逃げ出すとすぐにもう一体も逃げ出した。


「義姉ちゃん! 逃げるぞ」

「ふふふ。無駄ですよ」


 左手を横にしてクレアは逃げたオークへと向けた。彼女の指先から二本の光の剣が伸びていく。剣は鋭く伸びて行き逃げる二体のオークを追いかけていく。

 逃げるオークの背中に光の剣が突き刺さった。


「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」


 悲鳴のような声をあげ上を向き口から血を吐き出す二体のオークだった。オークたちの手足から力が抜けだらんと垂れ下がり光の剣の脇から赤黒い血が垂れていく。ゆっくりと光の剣が短くなりオークの体から抜けクレアの指へと戻った。


「ふう……」


 クレアは小さく息を吐いて倒れたオークたちに視線を向けた。横にしゃがんでいたグレンが立ち上がり彼女に声をかける。


「まさかオークが居るとはな」

「もしかしたら彼らは海賊たちに追われていたのかも知れません…… いや利用されていた?」


 首をかしげて考えていたクレアにグレンは、彼女が何を考えているのかわからず横で同じように首をかしげる。


「どうしたの?」

「いえ。彼らは海賊がわざと逃がしていたのかも知れません。冒険者用の罠として……」

「じゃあ。少し悪いことしたかもな」

「そうですね。怯えて隠れててくれればよかったんですけど……」


 倒れたオークを残念そうに見つめるクレアだった。彼女の横でグレンは気まずそうに頭をかく仕草をしていた。

 二人は武器をしまう。クレアは振り向いてタミーに声をかける。


「タミーさん。終わりましたよ…… あれ!?」


 振り向いたクレアが首をかしげる。棺桶が二つぽつんと置かれているだけで、どこにもタミーの姿が見えないのだ。


「どこいった? おーいタミー!!」

「タミーさん!」


 二人はタミーを呼びかけるが洞窟内で、二人の声がこだまするだけだでタミーは姿を現さない。


「先に行ったのか?」

「みたいですね。何かあったのでしょう。行きますよ。グレン君!」

「あぁ」


 グレンがうなずいて返事をする。二人はタミーを探しに洞窟の奥へと向かうのだった。

 悲鳴を聞いたタミーはクレモント洞窟の奥へと一人で進んでいた。二人と別れた後に鞄から出して灯りをつけたランタンを右手に持ち、左手で地図を見ながら進む彼女が立ち止まりふと後ろを振り返った。

 

「やっぱり…… クレアさんたちを待っていた方が…… ううん! ダメです。急がないと! 自分だって冒険者なんだから!」


 タミーは受付嬢をしているが現役の冒険者でもある。冒険者のランクはB1であり、これまでいくつもの仕事をこなし腕にもそれなりの自信を持っていた。

 意を決した彼女は鞄に手をつっこんだ。


「持って来ておいてよかったです」


 タミーは鞄の中から革の手袋と金属で出来た膝用のプロテクターを取り出した。両足の膝にプロテクターを装着してぶくとをはめる。革の手袋は長く拳の先から肘辺りまで金属に覆われている。


「よし……」


 クレモント洞窟を奥へと進むタミーの前に階段が見えた。


「上ですか……」


 二階へ上がる階段の下で立ち止まったタミーが顔を上にあげるランタンで先を照らす。わずかなランタンの灯りでは階段の先は真っ暗で何も見えなかった。タンタンを腰につけ地図をしまったタミーは緊張した面持ちで慎重にタミーはゆっくりと階段を一段ずつ上っていく。


「やめてええええええええええええええええええええ!!!」


 二階女性の悲鳴が聞こえた。タミーは慌てて階段を駆け上がっていくのだった。

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