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ラウンド6:親分たちの正義~時代の反逆者か、英雄か?~

(SE:地鳴りのような、あるいは嵐の前の静けさを思わせるような、重く不穏なサウンドが低く流れる)


あすか:「さて皆さん、これまで様々な角度から『親分』としての流儀、そしてその人生を語っていただきました。人を惹きつける力、組織を動かすためのシノギ、非情な掟、そして壮絶な修羅場…。しかし、その全ての根底には、ご自身の行動を支える『何か』があったはずです。(スタジオ全体を見渡し、静かに、しかし強い口調で)最後の討論テーマは、最も根源的で、そして最も難しい問いかけかもしれません。『皆さんのその生き様は、果たして“正義”だったのでしょうか?』」


(あすかの言葉に、スタジオの空気が凍りつく。対談者たちの表情から、先ほどまでの感傷や共感は消え、再び鋭い光が宿る)


あすか:「歴史は、皆さんを『英雄』と称える声もあれば、『時代の反逆者』『悪党』と断じる声もあります。ご自身では、どうお考えですか?法や権力とどう向き合い、何を『正義』として貫いてこられたのか…本音中の本音を、ここでお聞かせください!」


国定忠治:「(真っ先に口を開き、拳を握りしめ)正義だぁ?そんなもんは、いつだって権力者が自分たちの都合で決めるモンだろうが!俺に言わせりゃ、飢えた百姓から年貢を取り立てる役人の方がよっぽど悪党だ!法だ権力だなんて威張り散らして、弱い者いじめをする奴らこそが悪だ!俺は、そんな奴らに一泡吹かせてやりたかっただけだ!それが反逆だっつうんなら、結構!俺ぁ、胸を張って反逆者になってやるぜ!」


豊臣秀吉:「(忠治を諭すように)気持ちは分からんでもないが、それでは世は治まらんぞ、忠治とやら。わしとて、初めは信長様の下で、既存の権威に逆らい、戦ってきた。いわば反逆者の一人じゃったかもしれぬ。じゃが、わしが目指したのは、ただ壊すことではない。戦乱の世を終わらせ、万民が安んじて暮らせる世、すなわち『天下泰平』を築くことじゃ!その大義のためならば、わし自身が法となり、権力となることも厭わん!それこそが、天下人の『正義』じゃ!」


アル・カポネ:「(せせら笑うように)天下泰平、ね。聞こえはいいが、結局はアンタが一番偉くなりたかっただけじゃねえのか?太閤殿。俺はもっと正直だぜ。正義?そんなもん、クソ食らえだ。俺の正義は、俺のファミリーが豊かに、安全に暮らせること。そのためなら、法律だろうが倫理モラルだろうが、破ってやる。警察も政治家も、結局は金でどうにでもなるのさ。力が全てだ。勝った者が正義を作るんだよ!」


清水次郎長:「(カポネと秀吉を交互に見て、静かに)…力や大義だけじゃねえはずだ。俺たち渡世人にも、守らなきゃならねえ『筋』ってもんがある。堅気衆には迷惑をかけねえ、弱い者いじめはしねえ、約束は守る…。確かに、俺たちも法を破ることはあった。だがな、人としての『道』を踏み外さないように、いつも自分に言い聞かせてきたつもりだ。それが俺にとっての『正義』であり、『仁義』だった」


あすか:「しかし次郎長さん、その『仁義』のために、抗争で多くの人の血が流れたことも事実ですよね?カポネさんの言うように、結果としてやっていることは変わらないのでは?」


清水次郎長:「(ぐっと言葉に詰まるが、毅然として)…違う!同じじゃねえはずだ!俺たちは、無意味に人の命を奪ったりはしねえ!守るべきものを守るため、やむを得ず…!」


国定忠治:「やむを得ず、だと?次郎長さん、アンタも結局は、自分のシマを守るためだろうが!俺ぁ違う!俺ぁ、てめえ個人の意地と、虐げられてる奴らのために立ち上がったんだ!」


アル・カポネ:「(面白そうに)おいおい、仲間割れか?だが忠治、アンタのやり方じゃ、結局何も変えられなかったじゃねえか。最後ははりつけだろ?俺はシカゴのキングになった。どっちがマシかね?」


豊臣秀吉:「(一同を見渡し、威厳を込めて)皆、己の正義を語るが、それは所詮、己の立場からの見方に過ぎぬのではないか?わしが見ているのは、個人の意地でも、一家の存続でも、一都市の支配でもない。この日ノ本全体の安寧じゃ!そのためには、時には汚い手も使う!邪魔者は排除する!わしのやり方を批判する者はいるだろう。じゃが、わしがいなければ、この国は未だに戦乱の世だったかもしれぬのだぞ!?それでも、わしの正義を疑うか!」


あすか:「(冷静に、しかし鋭く)しかし秀吉様、その天下統一と泰平のために、朝鮮出兵では多くの命が失われ、国内でも豊臣家の将来に禍根を残す粛清が行われました。カポネさん、あなたの『ビジネス』によって、シカゴの街は暴力と腐敗にまみれました。忠治さん、あなたの反抗は、一部の民衆の溜飲を下げたかもしれませんが、社会を変える力にはなりませんでした。そして次郎長さん、あなたの『仁義』は、結局、法治国家とは相容れない、暴力の連鎖を生んだ側面も否定できません。…皆さんの『正義』は、多くの犠牲の上に成り立っていた、あるいは、結局は自己満足に過ぎなかった、とは言えませんか?」


(あすかの言葉は、4人の核心を突き刺す。誰もが反論しようとするが、言葉にならない。それぞれの表情に、怒り、苦悩、あるいは開き直りともとれる複雑な感情が浮かぶ)


国定忠治:「(叫ぶように)うるせえ!俺ぁ、思ったように生きただけだ!文句があるなら言ってみろ!」


アル・カポネ:「(不敵な笑みを浮かべ)歴史がどう評価しようと知ったことか!俺はアル・カポネだ!それで十分だ!」


清水次郎長:「(目を閉じ、何かを噛みしめるように)…俺ぁ、間違ってたのかもしれねえ。だが…だが、子分たちやシマの衆のために、必死だったんだ…!」


豊臣秀吉:「(天を仰ぎ、深く息を吐き)…わしのかばねを越えて、泰平の世が続くなら、それで本望よ。後の世がどうなるかは、後の世の者が決めればよいわ…」


(SE:激しい議論の応酬を示す効果音、心臓の鼓動のような音、あるいは警鐘のような音が鳴り響く)


あすか:「英雄か、反逆者か…。正義か、悪か…。その評価は、時代や立場によって、あるいは見る人によって大きく変わるのかもしれません。しかし、皆さんが自身の信念を貫き、時代に強烈なインパクトを与えたことだけは、紛れもない事実です。…熱い、そして重い議論、ありがとうございました。Round6、これにて終了といたします」


(激論の余韻がスタジオを満たす中、対談者たちは荒い息をつき、あるいは虚空を見つめている)

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― 新着の感想 ―
 あれ? 次郎長ってある程度政府とは上手く共存できていたのでは?  いや、確かに過去の賭博の罪で服役とかはあったみたいですけど……。
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