ラウンド3:シノギの流儀~金か?人情か?力か?~
あすか:「Round2では、皆さんのリーダーとしての器、人を惹きつける力の源泉を伺いました。しかし、どれだけ人を惹きつけようとも、組織を維持し、時には拡大していくためには…現実的な『力』、そして『富』…すなわち『シノギ』が不可欠です。(スタジオの空気が一層引き締まる)次のテーマは、まさにそこ。皆さんが組織を動かすために用いた『シノギの流儀』。それは金か?人情か?あるいは剥き出しの力か?その哲学を、包み隠さずお聞かせいただきたいと思います。…このテーマ、まずは、ある意味で最も『ビジネスライク』にシノギを拡大された、カポネさんからお願いしましょうか」
アル・カポネ:「(待ってましたとばかりに葉巻を深く吸い込み)フン、ようやく話が分かるテーマになったな、レディ。そうだ、『ビジネス』なんだよ、結局は。俺の時代、アメリカじゃ禁酒法なんていうクソな法律があった。皆、酒を欲しがってるのに、政府がそれを禁じる。馬鹿げてるだろ?だから俺は、市民が必要としてるモン…つまり、良質な酒を供給してやったんだ。それも、適正な価格でな」
あすか:「しかし、それは非合法な手段でしたよね?暴力的な抗争も伴ったと聞いていますが…」
アル・カポネ:「(顔色一つ変えず)非合法?そりゃ法律が間違ってるだけだ。需要があるところに供給する、ビジネスの基本だろう?もちろん、俺たちの『市場』を守るためには、邪魔者は排除しなきゃならん。他のギャングどもがちょっかいを出してくりゃ、力で分からせるしかない。マシンガンだろうが爆弾だろうが、必要なモンは使う。それがシカゴのやり方だ。人情?そんなもんでファミリーの腹は膨れねえし、ビジネスは守れねえ」
国定忠治:「(我慢ならんとばかりに)ふざけるな!てめえの都合で法律が間違ってるだぁ?人殺しまでしといて、それがビジネスだなんて、よく言えたもんだな!金儲けのためなら、人の道を踏み外しても構わねえってのか!」
アル・カポネ:「(忠治を冷ややかに見て)フン、威勢がいいな、オールドタイマー。だがな、アンタみてえに意地張って逃げ回ってるだけじゃ、誰も救えやしねえぜ?俺は稼いだ金で、多くの部下とその家族を食わせてやった。失業者が溢れてた時代に、雇用を生んでやったんだ。それに、慈善事業にも寄付してやった。どっちが『人の道』にかなってるかね?」
清水次郎長:「(カポネと忠治の間に割って入るように)まあ待て、二人とも。落ち着けや。…異国の親分さんの言うことにも、一理あるのかもしれねえ。綺麗事だけじゃ渡世はやっていけねえからな。俺だって、シマを守るため、子分を食わせるために、博打も開いたし、喧嘩だって繰り返してきた。銭がなけりゃ始まらねぇこともある」
アル・カポネ:「だろう?次郎長のボスは話が分かる」
清水次郎長:「だがな、カポネさんよ。アンタのやり方は、やっぱ俺たちとは違う。俺たちが博打で稼いだ銭は、ただ自分の懐に入れるためじゃねえ。困ってる奴がいりゃ分け与え、シマの衆のために使う。祭りの寄付もしたし、港の整備にも使った。それが俺たちの『仁義』ってもんだ。金は目的じゃねえ、あくまで人を助け、シマを守るための『道具』に過ぎねえ。アンタみてえに、金のために人を殺めるなんざ、もってのほかだ!」
豊臣秀吉:「(これまで黙って聞いていたが、ここで口を開く)ほうら、見ろ。金か、人情か…面白い議論になってきたわい。(次郎長に頷き)次郎長の言う通り、金はあくまで道具じゃ。じゃがな、(カポネを見て)この異国の親分の言うように、大きな事を成すには、莫大な金と、それを動かす『力』が必要なのもまた事実じゃ」
あすか:「秀吉様は、太閤検地や刀狩り、あるいは楽市楽座など、経済と力を巧みに利用して天下を統一されましたね」
豊臣秀吉:「うむ。わしは、この日ノ本を一つの国としてまとめるために、あらゆる手段を使ったわ。検地で全国の土地を測り、石高を定めて税を公平に徴収できるようにした。刀狩りで百姓から武器を取り上げ、無用な争いをなくした。商人が自由に商いできるよう、楽市楽座も奨励した。これらは全て、天下泰平という『大義』のためじゃ。そのためには、多少の反発や犠牲は覚悟の上よ。逆らう者は容赦なく叩き潰す。それが天下人の『シノギ』じゃ!」
国定忠治:「(秀吉を睨みつけ)大義だぁ?結局、てめえが一番偉くなりてえだけだろうが!百姓から刀を取り上げて、自分たちだけが武器を持つ。それが公平か?俺たちみてえな、はみ出し者はどうなるんだ!権力者はいつだってそうだ。自分たちの都合のいいようにルールを作りやがる!」
豊臣秀吉:「(カカカと笑い)青いのう、忠治とやら!国を治めるというのは、そういうことじゃ!全ての者を満足させることなぞ出来はせん。じゃが、わしが天下を取ったことで、戦乱の世は終わり、多くの民が平和に暮らせるようになったのじゃぞ?その大局を見ずに、己の意地ばかり通そうとするのは、ただの子供じゃ」
アル・カポネ:「(面白そうに)おいおい、今度はアンタらがやり合ってるのか?だが、太閤殿の言うことは分かるぜ。結局、最後にモノを言うのは『力』だ。大義があろうがなかろうが、勝てば官軍、負ければ賊軍。歴史は勝者が作るもんさ」
清水次郎長:「(険しい顔で)力だけが全てじゃねえはずだ!道理の通らねぇ力は、いつか必ず滅びる!人としての『筋』を通すこと、それが一番大事なんじゃねえのか!」
豊臣秀吉:「道理だけでは、腹は膨れんし国も守れんわ!」
国定忠治:「だからって、弱い者から搾り取っていい道理はねえ!」
アル・カポネ:「甘いな!ビジネスは戦争だ!食うか食われるかだ!」
(SE:議論の白熱を示す効果音、緊迫したBGMが高まる)
あすか:「(冷静に、しかし強い口調で)金か、人情か、力か、それとも大義か…それぞれの『シノギの流儀』、そして根底にある哲学が、今、激しくぶつかり合っています!これは…少し頭を冷やす時間が必要かもしれませんね。皆さん、一度、休憩にいたしましょうか」
(対談者たちは、まだ興奮冷めやらぬ様子で互いを睨み合っている)