ラウンド1:親分見参!~我らがシマと自己紹介~
あすか:「さあ、皆さん、テーブルにお着きいただきました。改めて、この異色の顔合わせ、スタジオの空気もピリッと引き締まっているのを感じます。(にっこりと)では、最初のラウンドとまいりましょう。テーマは『親分見参!~我らがシマと自己紹介~』。皆さんがその名を轟かせた『シマ』…ご自身の縄張り、あるいは活動の舞台と、そこで果たされた『親分』としての役割について、まずは存分に語っていただきましょうか。では、ここはやはり海道一の大親分、次郎長さんからお願いできますでしょうか?」
清水次郎長:「(頷き、どっしりと構え直して)おう、俺からか。まあ、俺のシマと言やあ、駿河の清水湊よ。あそこは昔、寂れた港だったがな、俺が一肌脱いで、人の流れも物の流れも良くしてやった。湊に来る船乗りや商人、それに食い詰めた連中まで、困ってる奴がいりゃあ面倒を見るのが、この次郎長の役目だった」
あすか:「港の発展にも寄与されたと?それは侠客のイメージとは少し違う気もしますが…」
清水次郎長:「へっ、ただ喧嘩に明け暮れてるだけが渡世人じゃねえ。シマが栄えてこそ、俺たちも生きていけるってもんだ。子分たちにも言ってたぜ、『ただ強いだけじゃ駄目だ、人様に後ろ指さされねぇ生き方をしろ』ってな。まあ、大政や小政、石松みてえな荒くれもいたが、それもひっくるめて面倒見るのが親分の甲斐性ってもんだろ」
国定忠治:「(鼻で笑って)甘っちょろいぜ、次郎長さんよぉ。港だぁ?発展だぁ?そんなもんは役人の仕事だろうが。俺にゃあ、決まったシマなんざねぇ。『無宿』よ。上州の山ん中だろうが、関八州どこだろうが、足の向くまま風の吹くままよ」
あすか:「忠治さんは特定の縄張りを持たなかった、と?では、どのように『親分』として…?」
国定忠治:「親分だなんてガラじゃねぇ。ただ、気に食わねぇことには逆らってきただけだ。天保の頃なんざ、米がねぇってんで餓死する百姓が大勢いた。それなのに役人どもは私腹を肥やすばかり。そんな横暴が許せなくて、ちぃとばかし役人の鼻を明かしてやったまでのことよ。そんな俺を頼ってついてくる奴がいただけだ。意地だけで生きてきたようなもんだぜ」
アル・カポネ:「(葉巻の煙をゆっくりと吐き出し)フン…なるほどな。日本の『ボス』のやり方は、ずいぶんとウェット(wet)らしい。感傷的、とでも言うか?(忠治を見て)シマがない?それはビジネスとしては非効率だな。俺のシマはシカゴだ。街全体が俺の庭みてえなもんだったぜ」
あすか:「シカゴ全体、ですか?それはまた、スケールが大きいですね」
アル・カポネ:「ああ。禁酒法ってバカげた法律のおかげでな、俺たちの『ビジネス』はデカくなった。酒、賭博、その他もろもろ…市民が必要としてるモンを供給する。それが俺の仕事だ。そのためには邪魔者を排除し、組織を守る必要もある。俺の下には何千人もの部下がいて、それぞれが役割を果たしてた。力と金、そして規律。それが俺のやり方だ。同情や感傷じゃ、あの街じゃ生き残れねえ」
豊臣秀吉:「(カポネの話に興味深そうに頷き)ほほう!なかなか面白いことを言うのう、異国の親分よ。力と金、そして規律か。わしも若い頃は、銭も地位もない、ただの猿と呼ばれた男じゃった。じゃがの、知恵と度胸、そして何より『人を見る目』で、ついにはこの日ノ本を手中に収めたわ!」
あすか:「秀吉様の場合、シマは日本全国、ということになりますね」
豊臣秀吉:「うむ!わしが見据えていたのは、湊や山だけではない。この国そのものよ!織田の親父様の下で働き、裏切りや困難を乗り越え、敵対する大名どもを次々と打ち破ったわ!わしにつけば、どんな者でも才覚次第で出世できる。そう示してやったからこそ、多くの侍たちがわしの元に集ったのじゃ。太閤検地で国の石高を把握し、刀狩りで百姓から武器を取り上げ、わしに逆らえぬ仕組みを作った。これもまた、国の『親分』としての務めじゃろう?」
(秀吉のスケールの大きな話に、他の三者もそれぞれの表情で見入っている。次郎長は感心したように、忠治は少し面白くなさそうに、カポネは対抗心を燃やすように)
あすか:「ありがとうございます。いやはや、まさに『親分』と一言で言っても、その在り様は千差万別ですね。では、少し皆さんの話を聞いて、改めてお互いの第一印象はいかがでしょうか?資料で見るのとは、また違う感想もおありかと思いますが…カポネさん、いかがです?」
アル・カポネ:「(次郎長と忠治を交互に見て)まあ、日本のボスたちは…なんというか、古風だな。義理だ人情だ意地だ…そんなもんで巨大な組織が回るのかね?だが、その心意気ってやつは、嫌いじゃねえ。(秀吉を見て)アンタは…食えねえタヌキって感じか?その小さな体で国を獲ったってのは、大したもんだ。俺と同じ、成り上がり(セルフメイド)の匂いがするぜ」
豊臣秀吉:「(カカカと笑い)タヌキとは失礼な!じゃが、そなたの言うことも一理あるわい。わしもそなたも、無から成り上がった者同士、通じるところがあるやもしれぬな。(カポネを見て)じゃが、そなたのやり方は少々、荒っぽすぎるのではないか?力と金だけでは、真に人の心は掴めぬぞ?」
国定忠治:「(吐き捨てるように)どっちもどっちだぜ。デカいことすりゃ偉いってもんじゃねえ。権力振りかざす奴も、金で人を操る奴も、俺ぁ好かねえな。(次郎長を見て)次郎長さん、アンタはまだマシな方かもしれねえが、結局、ヤクザもんはヤクザもんだろ」
清水次郎長:「(苦笑しつつ)手厳しいねえ、忠治さんよ。まあ、渡世に身を置く以上、綺麗事ばかりじゃやっていけねえのは確かだ。(秀吉を見て)太閤殿下のお話は、ちと俺たちとは住む世界が違いすぎるが、国をまとめるってのは並大抵のことじゃねえだろう。(カポネを見て)アンタの国のやり方は知らねえが、力で押さえつけるだけじゃ、いつかしっぺ返しを食らうもんだぜ。肝に銘じておきな」
あすか:「(それぞれの発言に頷きながら)ふふ、早くも火花が散っていますね!自己紹介と第一印象だけで、これだけ皆さんの『流儀』の違いが見えてくるとは…。この先、どんな議論が展開されるのか、本当に楽しみです。さあ、最初のラウンドはここまでとしましょう」




