みんなの質問コーナー②
(最後の討論ラウンドを終え、スタジオには一種の達成感と、それでいて名残惜しいような空気が流れている。対談者たちの表情も、激論を交わした者同士の連帯感のようなものがうかがえる)
あすか:「皆さん、最後の最後まで、本当に示唆に富むお話をありがとうございました。(クロノスを手に取り)さて、全ての討論ラウンドは終了しましたが、視聴者の皆さんからの熱いメッセージや質問は、まだ鳴り止まないようです。…本当に残念なのですが、これが最後の質問コーナーとなります」
(あすかはクロノスに表示された質問に目を通し、いくつかを選び出す)
あすか:「では、さっそく参りましょう。これは皆さん全員へ、先ほどのRound7を受けてのご質問です。『もし皆さんが現代でリーダーになったら、一番最初に何をしますか?具体的な行動を教えてください』とのことです」
豊臣秀吉:「(一番に口を開き)ふむ、わしならば、まずは『人』を集めるな。己の右腕、左腕となるような、才覚あふれる者たちを、身分を問わず見つけ出すことからじゃ。そして、彼らと共に、大きな『夢』…すなわち、事業計画や国家ビジョンを練り上げ、それを世に示す!人心を掴むには、まず魅力的な目標が必要じゃからのう!」
アル・カポネ:「俺なら、まず『金』だな。どんなデカいことをやるにも、元手がなけりゃ始まらねえ。テクノロジーとやらを駆使して、最短で最大の利益を生む方法を見つけ出し、まずは軍資金を確保する。話はそれからだ」
清水次郎長:「俺は…そうさな、まずは地元の飲み屋にでも行って、そこの親父や常連客と話をするかねえ。今の世の中がどうなってるのか、人々が何に困り、何を望んでいるのか…まずは自分の耳で、肌で感じるところから始めたいもんだ」
国定忠治:「…俺ぁ、変わらねえよ。一番偉そうにしてる奴のところに乗り込んで、文句の一つでも言ってやるさ。それが最初の一歩だ」
あすか:「(微笑み)ありがとうございます。それぞれの個性が表れる最初の一歩ですね。…では、次の質問です。『今回の対談で、他の人の意見を聞いて、ご自身の考えが少しでも変わった、あるいは影響を受けた、ということはありましたか?』…これは、皆さん、いかがでしょう?」
(対談者たちは、少し互いの顔を見合わせる)
清水次郎長:「変わった、というよりは…まあ、色んな生き方、考え方があるもんだな、と改めて思ったかねえ。特に、太閤殿下のような国を動かす立場の方のお話は、俺たちとは違う苦労や覚悟があるんだと、勉強になったよ」
アル・カポネ:「フン、俺の考えは変わらねえ。だが…(次郎長や忠治を見て)日本のボスたちの言う『仁義』だの『意地』だのってやつは、非効率だとは思うが…ある意味、筋が通ってるのかもしれんな、とは思ったぜ。俺たちの世界とは違う『ルール』なんだろう」
国定忠治:「(少し照れたように)…別に、影響なんざ受けちゃいねえよ。だが…まあ、どいつもこいつも、自分のやり方で必死に生きてきたんだなってことは、分かった気がするぜ」
豊臣秀吉:「カカカ!わしは楽しませてもらったわい!異なる時代の、異なる国の『親分』たちの話は、実に刺激的じゃった。特に、この異国の親分の発想は、ある意味、戦国の世に通じるものがあるやもしれぬな。参考になったぞ!」
あすか:「皆さん、それぞれに刺激を受けられたようですね。…では、少し個人的な質問を。これはカポネさんに。『もし、禁酒法がなかったら、あなたは本当に違う人生を歩んでいたと思いますか?例えば、合法的なビジネスで成功していた可能性は?』」
アル・カポネ:「(少し考え込むように)…どうだろうな。俺には商売の才能はあったと思うぜ。もしかしたら、普通のビジネスマンとして成功してたかもしれねえ。だがな、俺が生きたのは、そういう時代だったんだ。禁酒法が、俺にチャンスを与えた。俺はそのチャンスを掴んだだけだ。違う人生?考えても仕方ねえことだな」
あすか:「ありがとうございます。…では、秀吉様へ。『もし、息子である秀頼様にもっと時間を与えられていたら、天下人として、あるいは父として、何を一番教えたかったですか?』」
豊臣秀吉:「(ふっと表情が和らぎ、そして少し寂しげに)…秀頼にか。そうじゃな…天下人としての帝王学はもちろんじゃが…それ以上に、『人の心の機微』を教えたかったのう。いかにして人を信じ、いかにして人を見抜き、そして、いかにして人に支えられるか…。わしが、最も得意とし、そして最も苦しんだことかもしれぬ。それを…もっと、じっくりと…」
(秀吉は言葉を切り、遠い目をする)
あすか:「…ありがとうございます。…では、最後の質問にしましょう。これも皆さん全員へ。『皆さんにとって、人生で一番“誇り”に思っていることは何ですか?』」
(この問いかけに、4人はしばし黙考する)
清水次郎長:「…やっぱり、俺を信じてついてきてくれた子分たちや、清水のシマの衆のために、少しでも役に立てたこと…かねえ。親分として、恥じない生き方ができたと、まあ、思ってるよ」
国定忠治:「…どんな時でも、自分の『意地』を曲げなかったこと。ただ、それだけだ」
アル・カポネ:「…ゼロから成り上がり、シカゴの誰もが知る『アル・カポネ』になったこと。俺は歴史に名を刻んだ。それが誇りだ」
豊臣秀吉:「…この日ノ本を一つにまとめ上げ、戦乱の世を終わらせたこと。そして、わしのような者でも、努力と才覚次第で天下を取れるのだと、世に示したことじゃ」
あすか:「(深く頷き)皆さん、それぞれの人生の『誇り』…確かに受け止めました。たくさんの質問にお答えいただき、本当にありがとうございました。これにて、全ての質問コーナーを終了とさせていただきます」
(スタジオには、大きな拍手が鳴り響くような、温かい空気が流れる)