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第5話「ロケットスタート成功」

作戦会議の日がやって来た。


俺の自宅に顔を出したグリーンヒルのOB&OGは計4人。


1人は言わずと知れたティア。


もう1人の少女は、ティアの冒険者仲間のボーイッシュな少女のアイナ・リーフ。


狼耳が特徴的な獣人でもある。


年の頃は12~13歳くらいとかなり若く、妹分と表現した方が適切かもしれない。


少年たちの方も、14~15歳くらいの年齢で、まだまだあどけなさが抜け切れていない様子だ。


ちなみに、メガネをかけた神経質そうな少年が冒険者ギルド職員のカイト。


坊主頭で小太りな少年が木工のライドとのことだ。


ティアらをリビングに招き入れ、紅茶とお茶請けのクッキーを出すと、さっそく本題に入ることにした。


「資金集めの件なんだけど…」


「ここはシンプルに料理の屋台で調達しようと思っていてさ」


「既に出す料理なんかは考えていてね」


「まずは君たちに飲んで貰い、感想を聞きたい」


やや強引な展開ではあるが、残された時間を考えると、悠長に話し合いをしている暇もない。


出来ればすぐにでも屋台経営に乗り出したい都合もあり、事前に用意しておいた抹茶ラテを試飲して貰うことにした。


「この色は…植物の汁か何かですか?」


「地理的には東方圏のヤレドですが、文化は別」


「東方特有の薬膳はあまり人気が…」


とはいえ、白みを帯びた黄緑色の抹茶ラテは、お世辞にも食欲をそそる見た目ではない。


その弱点がよほど気になったのか、カイトが飲む前から駄目だしを始めた。


「おいおい、カイト」


「そんな言い方、サワムラさんに失礼だぞ」


そんな理屈っぽい言動はいつものことなのか、ライドが手慣れた様子でカイトを諫めた。


「ライドの言う通りよ」


「それにちゃんと匂いを嗅いでみたらどう?」


「ミルクの甘い匂いに混じって、嗅いだことのないすがすがしい香りがするじゃない」


おまけに、ティアまでライドに同調したものだから、カイトはバツの悪そうな顔をして黙り込んだ。


「言い争いはそこまでにしておこうぜ」


「あんまりグダグダ言い争っているとせっかくのドリンクも冷めちゃうしさ」


「ホットな内に飲まなきゃエイジさんにも失礼だろ」


続いて、アイナが呆れた表情を浮かべながら抹茶ラテを飲み始めたため、他の3人も追随することになった。


「うん…」


「何だか不思議な味だけど…」


「普通においしいよ、これ」


そして、真っ先に感嘆の声をあげたのもアイナだった。


抹茶ラテに限らず、抹茶系の料理といえば、前世でも女性に大人気のメニューだったが、その辺の感覚は異世界でも変らないようだ。


「前言を撤回します」


「この味ならば、確かに市場で勝負出来ますね」


空気が読めないだけで悪い奴ではなかったらしく、カイトの奴もあっさりと矛先を収めたため、俺の提案はすんなり通ることになった。


その後は、屋台の営業許可証を貰うために、商業ギルドに足を運ぶことになったわけだが…


グリーンヒルの一件に同情的な職員たちの特別な計らいにより、通常1週間はかかる手続きがその日の内に終わるサプライズが起こった。


「屋台に関しては、中古の業者とかいてさ…」


「銀貨50枚もあれば手に入るから、明日までに俺が調達しておくよ」


以降もライドが屋台の調達に名乗りをあげるなど、とんとん拍子に準備が進んだこともあり、作戦会議から3日後には市場での営業に漕ぎつけることが出来た。


ただし、営業開始にあたりまったく不安がないわけではなく…


どんなに原価の削減を試みても1杯あたり銅貨2枚のコストがかかってしまう都合上、抹茶ラテの料金を銅貨7枚に設定せざるを得なかった。


これは、市場で販売されている一般的なドリンク類と比べても銅貨2枚分は高かった。


「確かに、抹茶ラテは新鮮な味覚ですけど…」


「銅貨7枚はさすがに強気すぎる値段じゃないでしょうか?」


そのせいか、値段が高すぎて売れない可能性が頭をよぎり、ティアたちも不安気な表情を浮かべていた。


しかしながら、大都会でも人情あふれるヤレドの街。


俺たちの事情を理解しているお客たちが、割高を承知で抹茶ラテをどんどん注文してくれた。


そして…


「なんだ、こりゃ!」


「ほろ苦くてまろやかで…後を引く味だわ」


「も、もう一杯飲ませてくれ」


狙い通り抹茶ラテの独特の風味に惹かれてリピーター化した結果、屋台は連日大賑わいとなった。

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