第33話 天神人
【天明界】
それは【神源教団】と言う神を信仰する異常集団。そこから神の力を利用したいと、思い至った者達の集まりである。
天明界は規模が大きく、力の集合値も果てしなく高い。神の力を利用すると言う狂った方針を掲げている彼等は……皮肉なことにその目的に届きうる力と知恵を保有していたのだ。
未だ、神の力に至っていないが彼等の力は日に日に増している。もしや、いずれ……
【天明界】は力によって階級が分けられている。その中でも最も高い位を天神人と定めた。
そして、その最高位である、天神人が都市リースタルに訪れていた
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アタシとキャルは風車の中の謎の空間を走っていた。やはり、この都市は天明界絡みのようで、やつらが存在していた。
研究物資などもおいてあり、神の力を研究していた。天明界は神の力を自分達のものにしたいというが、どこまで本気なのかしら?
まさか、本当に神の力を自分達の物にできると考えていると……馬鹿らしい。だけど、ここまでの規模だと笑えないのも事実だった。
「キャル、ついてこれてる?」
「勿論ですよ。やってやります」
「そう、ここで頑張ってもあんまりお兄様からの好感度は上がらないと思うけど、やる気があるのはいいことね」
「やる気削ぐ天才ですか?」
アタシ達、二人が地下の研究施設を魔法で壊しながら走り回っている。唐突に空気感が変わる。天明界の、下っ端みたいなのとかは倒したけど
それとは違う、別種の気配。
思わず、魔法を発現していた手を止めた。キャルもあまりの異様さに顔がちょっとブスになっている。
顔が可愛いから、ビックリしても、もうちょっとキリッとした顔にしておいた方がいいわよ。
「まさか、選ばれし者が二人もここに乗り込んでくるとはな。折角だ……俺の管轄下に置かせてもらおうとしよう」
現れたのは顔の半分が焼き切れている男。服装は白の服。本当に上も下も真っ白な服装。
目は片方が白眼で、片方が白布で隠れている。
そして、彼の背後には三人の女がいる。彼女達も服装は同じだ。
いや、服だっさ!
魔力は凄いけど、クソだっさいわね。あの四人がどう言う関係か知らないけど、ダサ過ぎて笑うわ。アタシのお父様とお母様がちゃんとした服着ていて、良かった。
「ダンピール様、その者達捕縛しますか?」
「あぁ、神覚者の貴重な素材だ。丁重に捕縛しろ」
三人の白き女がアタシとキャルに襲いかかる。しかし、代行者様の姿を見て鍛錬を続けているアタシに通用しないわ
アタシはね……お兄様を守る為に、お兄様を手に入れる為に力がいるの。神だかなんだか知らないけど、絶対にお兄様は守る。この程度の雑魚なんて殺してやるわよ
魔力を高め、一人の首を折り、一人を腹骨を砕き、もう一人の顔面を砕くことで戦闘を不能にする。
「素晴らしい。流石は選ばれし者。神覚者へ至る素体……もしかしたら、お前はその中でも更なる原石かもしれんな」
ダンピールと名乗る男はギラギラとした欲深い目を向けてくる。うっざいわね。お兄様以外に見られても嬉しくないのに。
さっさと倒す……と言いたいけどさっきまでの雑魚とは流石に魔力の質が違う。代行者様と比べたら、小石にも満たないわ。
ただ、魔力の質が悪魔……メイドのレイナに近いような気がするのが気になるけど……
いや、どっちにしろ倒せば問題ないわ。かなりの強敵だろうけど……勝てるかは分からないけど、やってやるわ。
「ほう、オレに向かうか。イルザ・ラグラー。神童の娘よ」
「神童。お父様のことね」
「あぁ、あの男の全盛期は凄まじかった。学生時代の強さはまさに神懸っていた」
お母様が言ってたわね、学生時代のお父様はマジで人気者だったって。お母様も実はファンクラブの会員だったとか。
そんな二人が仲睦まじく似顔絵を描き合っているんだから、人生ってわからないものね。
「ゴルザ・ラグラーには遠く及ばないにしろ。見事な魔力だ。だが、残念なことにオレには及ばんがな!!!」
アタシは魔力を高め、炎の矢を放つ。それと同時にあちらも炎の矢を放ってきた。互いにぶつかり、凄まじい衝撃が発生する。そこから発生した衝撃からアタシを守る為にキャルが魔法障壁を展開する。
「ナイス! やるじゃないキャル」
「影薄過ぎて、寂しかったので活躍できて良かったですよ」
「アンタはなんだかんだで、頼りになるわね。学園主席のアタシに勝てない次席だけど」
「喧嘩売ってますよね? 後ろから背中吹き飛ばしますよ」
「まさか、感謝してるのよ。お兄様を紹介してとか以外なら、なんでもしてあげるわ」
「おおい! 兄を私に紹介してしてくださいよ!」
お兄様を紹介とかするわけないでしょ。だってお兄様はアタシと結婚するんだから!
ダンピールね……。あっちの様子は随分と余裕綽々と言う印象ね。魔力の量もアタシより上だし、技術的にも上。
こっちにはキャルが居るけども、トータル値では負けているわね。
「キャル、アンタだけでも逃げなさい」
「急になんですか。どちらにしろ、勝てませんし、逃げられません。ならば、死ぬまで戦うまでですよ」
「そう」
なんとか、キャルだけは逃がしてあげたいところだけど、確かに逃す隙を与えてくれそうな人ではないわね。
代行者様とお父様と代行者一派、とか除いたらトップレベルに強そうね。あれ? アタシの周りって強さ基準値がおかしいような……
まぁ、いいわ。
「ククク、流石はゴルザ・ラグラーの娘。才能はしっかりと継いでいる」
「随分とお父様を意識するじゃない」
「それもそのはず。忘れるはずもない。あの神童はな……嘗ての祭典。準決勝にてオレはあの男と戦った」
あら、勝手に自己語りを始めてしまったわ。祭典ってことはこの間アタシが三位で代行者様が優勝したあの祭典のことよね……お父様は七年連続優勝で殿堂入りしてたから、知ってる人がやっぱり多いわね。
「圧倒的だったのさ、あの男はな。手も足もでないとは、まさにあのことだった。かつては賞金首狩りとして名を馳せていたオレが……」
「お父様にボロ負けしたのね」
「そうだ。そこからオレはあの男を超える為、天明界へと入り【天神人】、その地位を掴んだ」
【天神人】……?
「だが、それでも全盛期のゴルザを超えた気ができん。まだだ、神の力を手に入れ、オレが頂を掴む。お前達も実験体としてオレの糧にしてやろう」
「糧にされてたまるもんですか。逆にアタシの経験値にしてやるわよ」
そう意気込んでいるけど、どうするかしら。それにしてもこいつ……お父様と戦っているんだったらもうちょっと、年配でもおかしくないのに見た目はアタシと変わらない学生に見えるのはなぜ?
若さを保つような何かをしているのかしら? 神の力を手に入れようとしているのだから、永遠の命とかもその中に入っていてもおかしくないのかもしれないけど。
「不可能だ。学生時代のゴルザにはお前は遠く及ばない。お前は食われるだけの弱者だ」
そう語るダンピールの魔力がさらに吹き荒れた。クッソ、まだまだアタシは弱いままなのね。
キャルも苦々しい顔をしている。明らかにこのままだと死んでしまう。
──だが、やはり彼がその場に降り立つ
そう、代行者様はアタシがピンチの時に、二分の一くらいの確率で来てくれる。ちなみに残りの二分の一はお兄様。
【るーるーるるるるー、てーんるるうーるるー】
無数の黒鳥が空に舞っている。まるで神話の一端のように。神々しく煌めき彼は降臨する。
「そうか、お前が代行者か」
「如何にも。私こそ神の意思の代弁者」
「会いたかったぞ。祭典を制し、準なる神すらも打破したお前の話は聞いている。強者だとな。大したものだ。最も、オレや全盛期のゴルザに及ぶことはないがな」
残念だけど、お父様も代行者様の方が上って言葉では言わないけど認めてるのよね。
この勝負、ダンピール死ぬわね
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