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イチオシ短編

しっこ寿司

作者: 七宝

 ここはしっこ寿司。しっこ村唯一の寿司屋にして、創業2年の老舗である。


 今日も村の重役の男が黄色いスーツで来店した。

 歳は恐らく52歳〜52歳4ヶ月。身長は2m、肌の色は銀、血液型はAB型といったところだろう。


「すみません」


「はい!」


 カウンター越しに大将に声を掛ける男。


「お茶くだちゃい」


「えっ」


「お茶くだちゃい」


「あ、はい、かしこまりました!」


 数秒後、カウンターに黄緑色の玉露の入った湯呑みが置かれた。


「大将、これは誰のしっこですか?」


「一昨日入った新人のユミちゃんのですね」


「ほほう⋯⋯」


 男は嬉しそうな顔をして、湯呑みに入った900mlのしっこ玉露を2.19秒で飲み干した。


「この玉露の香り、ハツラツとしたしっこの旨味、繊細な舌触り、僅かな酸味、そしてコンソメ⋯⋯素晴らしいです。シェフを呼んでください」


「おーいユミちゃーん! お客様がお呼びだよ〜」


 店の奥に向かって話す大将。

 出てきたのは紫の髪の推定79歳の乳首が左色(ひだりいろ)の女性だった。


「わたしぃ、なんか悪いことしましたぁ〜?」


 尻を掻きながら不貞腐れた態度で話すユミ。


「あなたのしっこのせいで口内と食道と胃と腸と肛門と便器を火傷しました。つきましては再来週の水曜日までに慰謝料30円をこちらの口座にお振込みください」


「そ、そんなぁ⋯⋯!」


「もし期日までにお支払いいただけなかった場合、大将の両チクビを1週間にわたって引っ張り続け、その後滅多刺しにして川に捨てて、その川を強火にかけて蒸発させたあと犬の散歩しますからね」


「ほーん、分かった」


 一昨日入店してから三日三晩パワハラofパワハラを受けまくったユミには大将に対するプラスの感情などひと欠片もなかったしふた欠片もなかったし、とにかくなかったのだ。


「マジックバーベキューホラーナイト(もも)さん、なんのネタ握りやしょう?」


「え〜⋯⋯っと、エスプレッソとサーモン、あと石と、それからチョコベビー軍艦」


「あいよ!」


 流れるような動きで寿司を握る大将。

 ここのシャリは16gと決まっているが、この道60年の大将は手に取ったシャリの重さは勿論のこと、米粒の数まで分かるというキモいレベルの達人であるため、量りなどは一切使用しない。ちなみに大将は4歳である。


「へいお待ち! 左からエスプレッソ握り、サーモン握り、石、チョコベビー軍艦になります!」


 さっきまで履いていた大将の下駄の上に斜め45度1列に並べられた4貫の寿司は、まるで宝石箱の宝石のようだったと彦摩呂も言わされていた。


 すべてのネタに使用されている黄金に輝くこのシャリは『しっこ炊き』という門外不出の技術によって成された神業(かみわざ)であり、米をしっこで炊いたものだ。


「マヨネーズかけますか」


「お願いします」


 冷蔵庫からマヨネーズを取り出し、袋を空け、赤いフタを取り、中の銀色のシールを剥がす大将。


「マヨネーズかけますね」


「はい。見てますね」


 最終確認をし、マヨネーズを1本下駄の上にぶちまける大将。大雪の如く4貫の寿司に覆い被さるマヨネーズ。


「マヨネーズかけました」


「見てました」


「どうぞ召し上がってください」


「いたーだきます」


 どれがどれだか分からなくなったマジックバーベキューホラーナイト桃はとりあえず右から2つ目のマヨネーズボールに手を伸ばした。


 バリバリボリボリパリンパリン


 ごくん


 この世の終わりみたいな音を出しながら咀嚼し、嚥下する桃。


「あー美味ひかったぁ」


 そう言って桃が口を開けると、中から石がころりと出てきた。歯は1本残らずなくなっていた。これがこの店の石の楽しみ方である。


 桃が2貫目に手を伸ばしかけたその時、ガラガラガラと戸が開いた。


「邪魔するぜぇ」


「ハッ、相変わらずしっこ臭ぇ店だ」


「はぁ⋯⋯またお前たちか」


 入店した2人の大男に対しため息を()く大将。この2人は隣村のはみ出しもので、毎日どこかで悪さをしている札付きの悪で、とても悪い奴らで、毎日悪いことをして歩いている悪い奴らなのだ。


「お〜お〜おじさん、重役がこんな店でランチなんて、しっこ村って貧乏なのかなぁ?」


「⋯⋯くっ!」


 桃は言い返せなかった。この2人の身長は2m4cmと2m6cm。2mの桃では勝ち目がないのだ。


「おいおい大将、その娘どうしたんだよ! その乳首が左色の女の子!」


「ユミちゃんのことか? 一昨日入ったんだ。でもお前たちには関係のないことだろう。冷やかしに来たんなら出ていきな」


「ユミちゃんっていうのか⋯⋯ポッ」


「どうしたんだアニキ?」


「⋯⋯ポッ」


「おーい」


「ピコーン!」


「どうしちまったんだよおい!」


 2m6cmの方の大男が置物のようになってしまった。


「おい大将! アニキに何しやがった! 寿司に何か入れたんじゃねぇだろうな!」


「まだ何も出してないよ」


「ユミちゃん⋯⋯ユミ⋯⋯」


 茫然とした様子でカウンターに立ち尽くすアニキ。頭が天井についている。


「よし、告ろ!」シャキーン!


 突然髪がオールバックになるアニキ。


「ユユユユミたん! あああああのお話が!」


「なんだい?」


「ユユユユユユユユユユユユユユミさん、実は俺、あなたの事が⋯⋯⋯⋯やっぱ言えない!!(*ノωノ)」


「アニキのバカ! 意気地なし!」


「でもよ、弟よ、俺は昔から気が小さくてだな」


「アニキ、そんなこと言ってる間にあの娘の乳首が右色に!」


「ああああああああぁぁぁ!!! 終わりだあああああああああぁぁぁあああああああ!!!!!」


「アニキ落ち着いてええええぇぇぇええ!!!!」


「ああああああああ!!! あああ!!!」ボーン!


 2人は抱き合ったまま爆発し、帰らぬ人となった。カウンターには消えない傷が残った。ので、新調した。


 プルルルルル プルルルルル


「お電話ありがとうございます! しっこ寿司です!」


 桃はいつの間にかいなくなっていた。食い逃げである。


「おしり県ちんちん市しっこ村4545丁目ピュッピュ番地です! はい。そうです。⋯⋯えっ!? 山梨県から来てくださるんですか!? 飛行機でも2ヶ月はかかりますよ! バカじゃねーの! バーカバーカ!」ガチャ


「ただいまー!」


 ちょうど電話を切ったタイミングで、大将の孫である瓶ビールが帰宅した。


「お腹空いたー! なんかあるー?」


「まかない作ってやる! だがその前に、帰ったらしっこうがいしっこ手洗い! 行ってこい!」


「アイアイサー!」


 それっきり、瓶ビールが戻ってくることはなかった。洗面所からの帰り道が分からなくなり、そのまま餓死してしまったのである。


 このことでショックを受けた&自分を責めた大将は寿司屋をやめ、しっこ学の道を極めることを目指した。


 3日後、しっこ大学にトップの成績で入学した大将は、卒業後には政治家になるという目標を立てた。


 9年後、卒業した大将は出馬するも落選。テロリストとなる。


 その半年後に事件は起きた。

 しっこ志士7名を引き連れた大将が総理大臣の家に忍び込み、寝ているところを八方から取り囲み、全員ズボンを下ろして声を揃えて「しっこかけるぞ!」と脅し、逮捕された。


 しっこをかけられた総理大臣は2回りほど縮み、業務に支障が出るようになった。


 けど普通に総理大臣は続けている。


 大将たち8人はその後しっこ裁判にかけられ、しっこでパソコンを作るまで刑務所から出られない罪となった。


 4日で出所した8人はそれぞれが各方面で活躍し、のちに七福神と呼ばれるようになる。

 大将だけグレてしまい、いまだに夜中に爆音でバイクを走らせているという。

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