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04 戦闘

 

 ***


「稔の帰りが遅いわね...ちょっと白魔ちゃん?」

「どうしましたか?お母様!」

「お菓子あげるから、稔を探してきてくれない?」

「お任せあれ!」

 白魔はキット○ットをもらって、家を飛び出した。チョロい奴。


 ***


「白魔様の登場だぞぉ!」

 白魔は、空気も読まずに俺の方に近付いてくる。

「ほら、稔!帰るぞ!」


「いや...あの...」

「お前が...白魔だな?」

「んぁ...って...うわぁぁぁぁ!なんでぇ?なんで、お前らがここにいるのぉ!?」

「ほら、ホワイトペンダントを返せ!」

「え、あ、ちょっと!やめ!」

 白魔はペンダントを奪われる。酸素ボンベを付けて気付かないとか、マヌケすぎる。

「これでよし」

「ボス!白魔とこの男はどうしますか?」

「白魔は...魔素が足りていないようだ...この男も口封じの為に殺していいだろう!」

「ひぎゃぁぁ!お前らだけ、魔素を吸ってズルいぞぉ!」

 白魔は、俺の椅子を盾に、隠れている。おい、俺を盾にするな。国で5番目に強いんだろ?


「お前ら、やれ」

「「「イエッサーッ!」」」


「じゃあ...ファイヤーアロー!」

 炎の矢が放たれる直前。走馬灯のように蘇るのは、反社共に誘拐された時のことを。

 俺は、酸素ボンベの中を吸って、気を失った。そして、白魔の「お前らだけ、魔素を吸ってズルい」という言葉。


「おい、白魔!俺とチューしよう!」

「はぁ?なんで、お前なんかと...」

「いいから!」

「ふぇぇ?」

 俺は、倒れ込むように、白魔とキスをする。大胆だが、謙虚なキス。大切なものを繋ぐキス。


「ほう...そういう事か」

 白魔はニヤリと笑う。

「フローズン!」

「なっ!」


 飛んでくるファイヤーアローはフローズンで相殺される。白魔は、魔法を使えるようになった。

 それは、何故か。そう、あの酸素ボンベには魔素が入っていた。要するに、魔素ボンベということだ。

 そして、俺はその魔素を吸って失神をした。だから、チューをして魔素を口渡ししたのだ。

 ファーストキスを、こんな貧相な女に奪われてちまった。でも、命の恩人になるはずだから、しょうがない。


「見せてやろう、白魔様の真髄を!」

「まずい、お前ら───」

「アブソリュート・ゼロ・オブ・ゼロ!」


 白魔は、魔法陣をポケットから取り出して、『アブソリュート・ゼロ・オブ・ゼロ』を叫んだ。

 その直後、反社共は凍る。否、凍ったのは反社だけではなかった。この薄暗い部屋の壁が、コンテナが、床が、天井が凍った。


「ほら、逃げるぞ!」

 白魔は、ペンダントを奪い返してからこの部屋の外に出た。そこは、倉庫だった。

 が、ただの倉庫じゃない。巨大な氷塊が飛び出ている倉庫。これが、『アブソリュート・ゼロ・オブ・ゼロ』の力───白魔の力だ。


「討伐成功!」

 その直後、白魔は俺に寄りかかる。

「魔素を使い切って、疲れたぁ...おんぶしてぇ...」

「はぁ?しょうがないなぁ...」

 俺は、白魔を背負う。


「帰るか」

「あぁ!そうだな!今日の飯も楽しみだぁ!」

 白魔は、俺の背中で暴れる。おいおい、左手は爪が剥がれて痛いんだから暴れないでくれ。


「なぁ...ありがとうな?」

「あぁ...まぁ、家に泊めてくれているしな」

「じゃあ...おあいこだな...」

「ねぇ...私、ファーストキスだった...」

 耳元で、そう囁かれる。体がゾクリとした。体は貧相なのに。


「で、でも...俺もファーストキスだったし...それに、お前は命の恩人だからうんぬんかんぬん...」

「あ、雪だ」

 俺の話には興味がないらしく、白魔は空を見上げていた。


 そこには、7月には季節外れ───季節真反対の雪が降り始めていた。

「あぁ...私の魔法の弊害だぁ...」

 白魔は少し笑いながら話している。おい、笑い事じゃないぞ。


「まぁ、いっか!」

「オイコラ、よくないわ。全然、よくないわ」

 そんな会話をしながら、俺らは家に帰った。


「ただいまー、」

「あら、2人共おかえりーって、何その爪?!」

「あぁ...ちょっとね。学校で」

「嘘おっしゃい。学校で寝てるのに怪我するわけないでしょう!」

「えぇ?そんなに信用ない?」

「お母様、これは色々とあって!」


「色々と...あぁ!反社の方がやってきて、稔を誘拐して、白魔ちゃんの居場所を突き止めるために拷問したのねぇ!」

「なんでわかるんだよ!意思疎通しすぎだろ」


 俺らの生活は、ガラリと変わった。

 なにせ、俺の家に、ワガママばかりでメチャクチャウザい氷の魔女(魔素がないので魔法は使えない)が、居候し始めたのだから。



 ───白魔が俺と同じ高校に通い始めたのも、突如倉庫に現れた巨大の氷塊の中に人が凍っていたが発見されたのも、真夏に雪が降ったのも、この物語とは何ら関係ない全く別の話なのである。



 ー完ー

とりあえず、オシマイ。


白魔は雪に使う言葉です。確か、災害級の雪だったかな?

執筆時(2022/12/19)は新潟辺りで大変らしいですね、ニュースで見たよ。

お気をつけて。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  白魔ちゃんは、頑張った! 「キスをして魔素を口渡しする」という展開が、とても面白かったです!  7月に雪が降るシチュエーションも、ロマンチック(?)で良いですね~。 [一言]  テンポ…
[良い点] 爪剥がし……。 ひぐらしの詩音を思い出しました。 そして白魔ちゃん登場。 成る程、口移しか。 というか白魔ちゃん、普通に役に立つとは……。 そして始まる居候生活。 これぞラブコメ! 短い…
[良い点] 面白かったです。 ボンベに残ったものを理科の先生に調べてもらったら代用品が見つかるかも。
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