表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

01 邂逅

 

「あぁ...眠い...」

 7月13日。俺は、5時間目が終わり欠伸をする。このままホームルームまでぶっ続けで寝ようと思ったが、それも不可能。なにせ、次は実験だ。面倒だが、理科室に行かなければならない。


「おーい、冷泉(れいぜい)!理科室行こうぜ!」

「おう...」

 俺は、友達の洸斗と共に、理科室へと向かう。


「今日、何の実験だっけ?」

「ん?あーあれだよ、あれ。電気分解」

「あー...面倒くさ。俺、あれ一番嫌い」

「お前、どの実験でもそれ言うよな...」


 なんかよくわからん色々な金属イオンの電気分解を行い、教室に戻る。6時間目を終えたので、面倒な学校もこれで、終わりだ。俺は、部活に入っていない。


「俺はパラジクロロベンゼンしか覚えないからな」

 そんなことを呟きながら、帰りの準備をする。C6H4Cl2だ。俺は、賢いから知っている。


「さて、帰るか...」

 俺は、ホームルームを終えて、早々に俺は家に向かう。


 そう、その帰り道だった。

「ううううううッ!」

 そんな叫び声が、後ろから聞こえる。


 ”ゴンッ”


「痛ッ!」

「いったたたたた...」

「な...なんだよ、お前?」


 頭にぶつかってきたのは、箒を持った一人の少女。白髪で白いワンピースを着た、全身真っ白の少女。醤油とか、カレーうどんとか食べてはいけない格好の少女。


「この私を知らないの?私は、氷の大魔女、白魔様よ!」

 その少女は、「白魔様」。そう名乗った。


「何言ってんだ?お前...」

「何よその顔!名乗らせたのはそっちでしょ!」

「あぁ...ヤバい人だったか...すいません、なんでもないでーす...」

 俺は、その場から立ち去ろうとする。


「ちょっと、どこに行くのよ!」

「いや...帰ろうと...」

 俺は、白魔様お名乗るヤバい女から逃げたい。今すぐに逃げたい。


「ここがどこかもわからないし...私を案内しなさい!」

「遠慮しときます」

「瞬殺!」

「ヤバい人には付いていくなと言われているので」


「ヤバい人じゃないわ!私は白魔よ!知らないの?」

 俺は頷く。それはそれは、頷いた。

「ちょ、アナタ常識がないお方?だから、私から逃げようとするのね?」


「常識がないのはそっちだ」

「って...私、追われてるんだった!ちょっと、匿いなさい!」

 そんなことを言いながら、その少女は俺の制服の中に入ってくる。


「おいこら、セクハラだぞ、訴えるぞ、おい」

 中学生位の少女に弄られる高校男子(童貞)。かなり犯罪臭がする。


「匿いなさいよ!」

「服の中に入ってもすぐバレるだろうよ!さてはお前...アホだな?」

「んな!アホだなんて!失礼ね!凍らせてやる!フローズン!」


 が、何も起きない。


「あ...あれ?フローズン!フローズン!」

 その白魔は慌てるも、何も起きない。こいつ、頭がイカれてやがる。関わっちゃいけないタイプの人間だった。

「魔法が...撃てない?」

「あの...」

「な...何よ?わ...わわ...私は...つ...つつ...強い、強いのよ!」

 物凄く慌てている。俺の制服の中から急いで出てきた。


「アンタなんか一発でこりょせるのよ!」

「噛んだ...」

「噛んでない!」

「それは無理があるぞ」


「魔法が撃てないってどういうこと?!ここはどこよ!」

「日本だよ。日本。ジャパン。ジパング。黄金の国」

「どこよ...ジャパン?き...聞いたことないわ...」

「じゃあ、もっと大雑把に。地球だよ」

「ち...チキュウですって?!」

 白魔は驚いている。そして、その場に倒れ込んだ。


「魔法が使えないのも納得よ...こんな技術の遅れた世界に来てしまうなんて...私の大魔法『アブソリュート・ゼロ・オブ・ゼロ』の魔法陣を書き違えてこんな廃れた世界に転移してしまうなんて...あぁ...私、ここで死ぬんだ...お金が無くて食べ物も食べられずに、奴隷になって死ぬんだ...」

「随分と悲観的だが、この国に奴隷制度は無い。多分」


「じゃあ...野垂れ死ぬんだぁ...」

 白魔は泣き出した。感情の忙しないやつ。


「帰る方法は無いのかよ?」

「魔法が使えるならチョチョイのチョイよ...でも、魔法を使うための源、魔素がこの地球には殆どないから帰れないの」

「じゃあ、帰れないのか...まぁ、頑張れ」

 俺は、彼女の肩を叩いてから、家に帰る。


「ちょっと、待ってよ!そこは家に連れて行く流れでしょうよ!」

「別に興味ないし」

「ムキーッ!興味ないって何よ!年頃の男子がこんなに可愛い可愛い女の子に興味がないって言うの?」

「あーはいはい、どっか行けー。しっし。しっし」

「私は犬じゃないわよ!」


「家に来るとて、居候じゃんかよ。俺の家、ペット禁止だし」

「ペットじゃないわよ!人間よ、人間!それに、大魔法使いの白魔様よ!」

「でも、お前魔法使えないじゃん...」

「うぅ...」


「そんじゃ、バイバーイ」

 俺は、そのまま家に帰った。白魔は追いかけてこなかった。


 ***


 数時間後。


「あーっ、卵切らしてる!ちょっと、(みのる)!買ってきて!」

「えー、面倒くさい」

「じゃあ、今夜の晩ごはんは、米だけよ?」

「味噌汁も無いのかよ?!」

「だって、オムライスだし」


「ケチャップライスにもならない...恐ろしいわ...」

「ほら、買ってきて!」


 俺は家から半ば強制的に追い出された。卵を買わない限りは、家に入れない。


「とっとと買って、帰るか」


 俺は、スーパーに向かう。白魔と出会った道を通った。すると、白魔はまだ泊めてくれる家を探しているらしく、おじさんに声をかけていた。


「なんでもするから、私を家に泊めてください!」

「へぇ...なんでもしてくれるの?」

「うん、なんでもする!なんだってするから!」

「じゃあ...おじさんについてきてよ」


 犯罪の匂いがした。考えずに、俺の体は動いていた。

「おじさん、すいません。俺の妹が、馬鹿やって」


「───ッ!」

12月20日16時に2話更新予定です。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「醤油とか、カレーうどんとか食べてはいけない格好の少女」←吹きました(笑)。確かに……。
[良い点] こちらの作品も読ませて頂きました。 個人的には白魔ちゃんみたいなキャラ好きです。 アホすぎるところが可愛いけど、 どんどんウザくなるんでしょうね(苦笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ