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天使の翼 【WEB】

作者: 雨澤 穀稼


   天使の翼


 柔らかな (むく)の木の

 四角(しかくい)窓から

 天々(てんてん)見上げて

 見てたんだ

 つ〜んと静かに 澄み渡る

 (あ〜おい)お空を

 天々(てんてん)見上げて

 見てたんだ


 そしたら そしたら

 そしたらさ

 ふわふわ ぱたぱた

 何やら 音も無く

 ふわふわ ぱたぱた

 天使の翼が 天へ天へと

 飛んでたの


 ふわふわ ぱたぱた

 天使の翼は 何処ヘ

 ふわふわ ぱたぱた

 何処へと 何処ヘと

 ゆくのだろう

 きっときっと きっと

 (とおお)い お空に

 ゆくのだろう

 ふわふわ ぱたぱた

 ふわふわ ぱたぱた

 澄んだ 澄んだ

 天々(てんてん) 天々(てんてん)

 ふわふわ ぱたぱた

 ふわふわ ぱたぱた

 (とおお)い お空へ

 飛んで ゆくのだろう


 わたし わたし

 わたしにだって

 幼き頃は あったんだ

 夢幻に 恋焦がれ

 理想の宇宙(そら)

 心 いっぱい

 飛べたんだ

 みぃ〜んな みんな

 大空 いっぱい

 想像の翼 広げて

 大空 いっぱい

 飛べたんだ


 小さく 小さな(つまず)

 重ね 重なり

 積み上がっていく

 わたしの 哀しみたち

 だけどだけど……

 だけど……

 何時の何時の……

 何時から……

 何時の 頃からだろう

 気が付けば

 わたしの わたしが

 わたしよ わたしだって

 わたしの わたしが

 重石(おもし)になって

 心の宇宙(そら)

 わたしの わたしが

 わたし わたし わたし

 わたしだらけ……

 飛べなく なってたんだ


 例え 今

 あの頃の様に

 天使の翼を 持ってても

 あの頃みたいに……

 天使の翼 羽撃かせても

 きっときっと きっと

 飛べないね

 天使の翼 ちからいっぱい

 羽撃かせても

 きっときっと きっと

 飛べないよ


 心の何処の 何処かが

 わたしの わたしを

 卒業して 色んな重石(おもし)

 重ね重なり

 積み重なって……

 大人に なったら

 大人に なったなら

 重くて重くて

 黒く染まった

 天使の翼 羽撃かせ

 バサバサ バサバサ

 飛べないんだよ


 だけど 大人になって

 ただ(いち)

 たったの(いち)

 ただの(いち)度だけだよ

 飛べる瞬間(とき)

 あるのだけれど……


 たぁ〜ったの (いち)

 あるのだ……

 けれど……

 其れぞれ みんなみんな

 みぃ〜んなに 必ずおとずれる

 其の瞬間(とき)は あるけれど……

 其の瞬間(とき)

 なったなら 誰もかれも

 きっときっと きっと

 分かるんだ

 分かるんだよ


 その瞬間(とき)

 なったなら……ね


 (とおお)い 遠くの

 天々(てんてん) 天々(てんてん)

 (とおお)い 遠くのお空から

 貴方にだけ……

 お声が そぉ〜っと そっと

 そぉ〜っと そっと

 貴方だけに

 貴方だけに……お声がかかるから

 必ず分かるから


 天使の翼を 持ってたらね

 逝けない所は 無いんだよ


 天使の翼を 持ってたら

 本当はね

 果たせぬ 夢は 無いんだよ

 果たせ無い わたしはいたといても

 わたしの わたし

 天使の翼 羽撃かせ

 無限の彼方の……世界の渦巻き

 (うつし)世 グルグルグルグル

 飛び廻り……渦巻く光り世界へ……


 それはね 天からの 使いの運命(さだめ)

 わたしの忘れる前の……

 わたしの生まれる前の……

 わたしの星の約束 (なの)だから

 わたしの果たせなかった

 約束なのだから……

 

 でもね みぃ〜んみんな

 現世(うつしよ)世界に溺れて

 忘れてしまう

 思い出せずに……

 知らず 知らずに

 気付かず 果たせないままに……

 還ってゆくんだよ

 去って逝くんだよ……


 果たせた筈の 果たせぬ

 星の約束(たずさ)えて

 誰も 気付けず……

 誰も 気付かず……

 還って逝くんだよ……

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