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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第三章 従魔激闘杯&古の巨人復活編

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取り戻した自由と幸せな時間

 目的も無事に果たした。そのせいなのか物凄く眠たくなってきました。

 カリーナさんも心配でまだ起きているかもしれません。安心させるためにも屋敷に戻って朝日が昇るまで一眠りしましょうか。

 でもその前に、この子たちをどうするかですね。 

 彼女たちはまだ私の従魔ではありません。ということは別空間で待機してもらうのもそこから呼び出すのも出来ない。

 ワイバーンと中級悪魔なら未だしも魔物の少女、ヒュドラ、黒狼は空を飛べません。ここへ来た時と同じ方法では戻れない。

 夜中だとしてもこの人数で歩くのは……。特にヒュドラは体が大きいので目立ちます。たくさんの魔物を従えて夜中に出歩くのは完全に不審者です。

 一番手っ取り早いのは彼女たちと従魔契約をしてしまうことですが、そうなると一つ問題があります。

 

「彼女たちと従魔契約を結べると思いますか?」

「後々は可能だと思いますが、今は無理だと思いますね」


 バエルに聞いてみるとそう返ってきました。

 私もバエルと同じことを考えていました。

 従魔契約とは本来成功率が低いのです。テルフレアに住む従魔連れの人たちも認められるために諦めずに頑張ったか、従魔となる魔物が主人となる人物を最初から認めていたから従っている。

 要は魔物が主人と認めるかどうか。でも簡単に認めないから成功率が低い。無理矢理認めさせようとするなど以ての外。

 ちなみにバエルは前から私と面識があり──それはもう一人の私という謎の存在ですが──絶対なる忠誠を誓っていたから簡単に再契約できた。タルトはそんな感じではなかったですが、もしかしたら一度戦って私のことを思い出したとか?

 でも仮に記憶喪失とかだとして、私のことを思い出せたのであればバエルのことも思い出すと思うんですけどね。実際は再会しても初対面な感じでしたし、他に別な理由があるかも。 

 まあ今考えることではありませんね。別にこれといって問題があるわけでもないですし。

 

 一応言っておくと、グラは私に忠誠を誓えとバエルから命じられるとすぐに従魔契約を結べました。

 初めて出会った人をすぐに認めて仕える。普通は無理ですよね。私がグラの立場だったらすぐに認めることはできません。

 でもグラの場合、出来なかったらその後が怖いから認めるしかなかったのかもしれませんね……。彼女も色々と苦労しているのです。

 

 さて、話を戻します。

 魔物の少女たちとの従魔契約ですが、カルロスさんから救い出したとして私のことを認めるかどうか。

 主人(カルロスさん)から受けた苦痛は彼女たちの心に深く残っています。それは主人が変わったところで消えるはずもない傷。

 もしかしたらまた同じ目に遭うかもしれない。酷い扱いを受けるかもしれない。

 心の何処かではそう思っているはずです。主人に対して恐怖心を持っていると私は考えます。

 そんな子たちが救われたからといって私を認めるとは限りません。それとこれとは別の話ですからね。 

 かといって、見捨てるつもりはありません。

 私が救ったのだからその責任を放棄してはいけません。最終的には彼女たちの意見を尊重しますが、もし一緒に行きたいと言うなら私が保護します。

 

「もう誰かに縛れらる必要はない。もう誰かに抗えず傷付けられて苦しむ必要はない。あなたたちは自由です」

「ジ、ユウ……?」

「はい。これからはあなたたちの好きなように生きていいんです」

「ホントウ、ニ……? ジユウ、イキテ、オコラレナイ?」

「自由に生きる。それに他人が口を出す権利なんてありません。あなたたちは十分苦しい思いをしました。だからこれからは自由に生きましょう。ああでも、悪い事は駄目ですよ。悪い事をしたら今度は正当な理由で自由を奪われてしまいます。それを踏まえて、あなたたちはこれからどうしたいですか?」

「……ジャア……。イッショ、イキタイ。ズット、イッショ、ガ、イイ」


 その言葉は魔物の少女だけではなく他の魔物たちの言葉でもありました。言葉を話せるのは彼女だけですがそういう目をしていました。

 人間は自分たちに酷い事をする。それでも彼女たちは人間である私と一緒に行くことを選んだ。いや、それしか選択肢がなかったのかもしれませんね。野生に帰っても一人で生き抜ける自信がなかったから。

 彼女たちは不安や恐怖はあれど私なら大丈夫だと信じてくれたのでしょう。であれば、私はそれに応えなければなりません。


「なら一緒に行きましょう。楽しい事がいっぱい待ってますよ」

「ウン! アタラシイ、ゴシュジン、ワタシ、ヤクニタツ!」

「新しいご主人なんて呼ばずにリリィって呼んでください」

「リリィサマ、アタラシイ、ゴシュジン、ナマエ! リリィサマ、ワタシ、イッパイ、ガンバル!」

「ほう、なかなかの心意気ですね。今はまだまだ未熟ですがこの子は素質はある。いずれはリリィ様を守護する立派な戦士になりそうです。期待していますよ」


 バエルが勝手に魔物の少女に期待しています……。

 別に強くなろうとしなくてもいいんですけどね。でもやる気は十分なので止めるつもりはないです。

 それに、私は彼女たちに自由に生きることに口出しする権利はないと言いました。私のために強くなろうとするのは彼女の自由です。無理はしないようにと願いつつ見守りましょう。

 

「それじゃあ帰りましょうか。行きましょう、えっと……」


 そういえば彼女たちの名前を知りません。

 これから一緒に冒険をする彼女たちの名前を知らないとなるとなんて呼べばいいかわからないので不便です。

 ですが、私の予想だと──

 

「あなたたちの名前はなんて言うんですか?」

「ナマエ、ナイ。マエノゴシュジン、オマエ、チビ、ヨバレテタ」


 名前を持っていないのは他の魔物たちも同じみたいです。

 基本的に名付けたりしない限り魔物は名前を持っていません。

 彼女たちを道具として見ていたカルロスさんが名前を付けるとは思わなかったので私の予想通りです。

 流石に魔物の少女が呼ばれていた呼び名で呼びたくないですし、彼女たちが嫌でなければ名前をつけてあげましょう。

 確認のために名前をつけていいか聞いてみると快く了承してくれました。みんな目をキラキラさせながら自分が名付けられるのを待っています。

 なんだか責任重大です。まあ名前は一生残るものなので責任重大なのは確かですけど。

 そして、私はヒュドラに"ドーラ"。黒狼の魔物に"ノワール"。ワイバーンに"バーン"。中級悪魔には"ボロス"という名前をつけました。

 ドーラとかバーンとか適当に思われるかもしれませんが、不満を抱かずみんな喜んでくれたので良かったです。

 ちなみに、中級悪魔にボロスと名付けるとバエルが凄く羨ましそうにしていました。きっと私に名付けられたからでしょう。

 バエルが「中級如きがリリィ様に名を与えられるなど……」とか言ってましたので「まあまあ」と言って宥めておきました。バエルは基本何でも出来ますが、たまに嫉妬深くなるのが欠点かもしれませんね。

 

 そして最後に魔物の少女です。

 彼女とは他の子たちよりも関わりはあります。

 だからといって贔屓するわけではありませんが、もし名前がないのであればこんな名前がいいなという希望はありました。


「あなたの髪は綺麗な青色。宝石のサファイアみたいです。なので"サフィー"というのはどうでしょうか?」


 そのままサファイアと名付けるのも一応考えましたがそのままつけるのはなぁ、って思いました。なのでちょっとだけ変えてサフィーと。

 考えればもっといい名前はあると思います。でも私の中ではもうサフィーしかなかったのです。それでも彼女が気に入らなかったら考え直します。

 

「サフィー、ワタシノナマエ! リリィ様、アリガトウ! スゴクウレシイ! リリィ様カラ貰ッタ、ナマエ、大事ニスル!」


 魔物の少女は私に抱き着いてお礼を言ってくれました。

 可愛い笑顔です。可愛すぎて思わず頭を撫でてしまいました。

 酷い扱いを受けていたからかちょっと汚れていましたが私は気にしません。屋敷に戻ったら綺麗にしてあげましょう。

 それにしても、名付ける前はもっと途切れ途切れな感じだったのにサフィーと名付けた後は喋りが少しだけ流暢になったような気がします。

 進化した……わけでもないですよね。その線も考えましたが名前をつけただけで魔物が進化するとは思えませんし。 

 まあ、魔物には未だ解明されていない謎があるとか言われています。これもまたその一つなのでしょう。


 


 とりあえずその件は特に気にすることでもないということで終わらせて。

 従魔契約はまだ出来ないので仕方ないからこのまま彼女たちを連れて屋敷の方へ戻りましょう。

 誰にも見つからないように気をつけながら帰ります。

 もし見つかれば「寝れないので散歩をしている。夜中なので護衛をつけていた」とか言って言い訳をするつもりでした。こんなにたくさんの魔物を連れなくてもいいと言われると思いますけど。

 でもその心配は必要なかったみたいです。

 奇跡的に誰にも見つからずカリーナさんの屋敷に到着しました。

 あとはどうやって屋敷の中に入るかですね。

 外に出た時はお借りしている窓の方から出発しました。でも帰りはそうとはいきません。

 仮に窓から戻ろうにもドーラやバーンなど体が大きすぎて入れない子がいます。まあ飛べない子もいるので窓から入るのは無理なんですけどね。

 門の鍵は夜中なので当然閉まっています。門番をしているドレファスさんや他の門番さんも見当たりませんし困りましたね。


「リリィさん!」


 どうしようか悩んでいると聞き覚えのある声が聞こえました。

 夜中なのであまり大きな声ではありませんでしたが、その声の主はカリーナさんでした。私が帰ってくるのをずっと起きて待ってくれていたのでしょう。

 玄関扉を音を立てないように開けてカリーナさんがこちらに向かってきます。

 

「今鍵を開けますので少し待っててください」


 カリーナさんに門の鍵を開けてもらい無事に屋敷の敷地内へと入りました。


「随分早かったですね。私はてっきりもっと時間がかかるものかと」

「予想よりも早く終わったので」

「この子たちがリリィさんのお友達ですか? ってあれ、この子には見覚えがあります。確か従魔激闘杯で戦ったヒュドラです」

「その……話せば長くなるんですけど……」

「そうみたいですね。では、リリィさんもお疲れでしょうからその話は朝食を食べ終えた時にでもしてください」

「わかりました。ちゃんと全部話します」

「はい。それじゃあ一先ず屋敷の中へ戻りましょう。お父様や他の者たちに見つかっては──」

「私に見つかったら、どうなるんだい?」


 ウォルフさんがカリーナさんの後ろに立ってそう言いました。

 カリーナさんは気付いていなかったようですが私は気付いていました。私の正面から向かってきてるのに気づかないのは無理がありますからね。


「お、お父様!? これはその……えっと……」

「まったく。こんな時間まで起きてるとは夜はちゃんと寝なさいと言っているだろ? 夜遅くまで起きてると怖いオバケが出るんだぞ。怖くて寝れないから私かカトレアに一緒に寝たいと言ってきた頃が懐かしいなぁ。あの頃はたまにおねし──」

「わああああ! リリィさんの前でそんな話しないでください! それに私はもう子供じゃないです! 子供の頃はそんな話も信じていましたが騙されません!」


 私も昔両親からそんなこと言われていましたね。

 その言いつけを守っていたから夜更かしが苦手なのかもしれません。遅くまで起きていようと思っていても習慣が染みついてしまってどうしても眠たくなるんですよね。


「ハッハッハ。リリィさんも、女性がこんな夜遅くに外出するのはいくら強い従魔を連れていても危ないよ」

「はい。これからは気をつけます」

「うん。それで、この子たちをどうするかだけど。屋敷の中へ入れない子たちは外で待機してもらおう。まだ寒くない季節だけど外に居て風邪をひいてしまうと大変だから念のため毛布とか用意するとして。屋敷の中に入れる子たちはリリィさんに貸している部屋を使う感じで良いかな。部屋はまだあるから用意することも出来るけど」

「お借りしている部屋は広いので大丈夫です。ウォルフさん、ただでさえお世話になっている身なのに色々と面倒をかけてしまい申し訳ないです」

「気にすることではないよ。むしろリリィさんのおかげで貴重な体験がたくさんできているんだからその恩を返していると思ってほしい。この程度で恩を返せているかわからないけどね」

「いえ、美味しいご飯に寝る場所まで用意してもらっているんです。すごくありがたいです」

「なら良かった。じゃあ屋敷に戻ろうか」


 ドーラとバーンは外に待機してもらって私たちは屋敷の中へ戻ります。

 ウォルフさんからも今回の話を聞かせてほしいとのことで朝食後にでもと約束をしてお借りしている部屋に戻りました。

 部屋の窓を開けてドーラとバーンにおやすみの挨拶をして、朝日が昇るまで私はタルト、サフィー、ノワールと一緒に少し眠ります。

 バエル、グラ、ボロスの悪魔組は睡眠を必要としないようなので起きているとのこと。起きているのであれば私が寝過ごさないように朝食の時間になる前に起こしてもらいましょう。


「リリィ様、お休みになる前に一つよろしいでしょうか」


 バエルからの頼みでしたが、私はもう眠気が最高潮に達していたので今すぐにでも寝たかったです。しかし他でもないバエルの頼みですので聞くことに。

 ただ、バエルが何かを言っていたのは覚えていますが内容までは覚えておらず。それでもこれは私のために何かするのであろうととりあえず彼の頼みを許可しました。

 この時の私はバエルがまさかあんなものを作っていたとは思いもしませんでした。それを知るのはもう少し先のことです。







 翌日、グラが起こしてくれたおかげで朝食に遅れずに済みました。バエルはまだ戻ってきていないようです。

 今日はいつもの食堂ではなく外で朝食を取ることに。

 外で待機しているドーラやバーンを仲間外れにするわけにはいかないとウォルフさんが提案してくれたそうです。

 私がカリーナさんに渡していた食料も使ってもらい今日の朝食は豪勢かつ大量です。

 この屋敷にいる従魔たちを全員呼び出しているのですから余ることはないでしょう。何よりうちには大食いのタルトがいますからね。

 サフィーたちは大量の料理が目の前に並んでいるのが信じられない様子でした。これだけの量を見るのは初めてですよね。


「リリィ様、コレ、サフィータチ、食ベテイイノ?」

「ええ。作ったのは私ではないですが、あなたたちがお腹いっぱい食べられるようにお願いしました。これからはお腹いっぱいご飯を食べられますからね」


 そう言いましたけど、どうやらもう我慢できないようでサフィーたちは私の指示を今か今かと待っています。

 空腹の状態でこれ以上待たせるのは可愛そうなので「いただきます」と言ってみんなで朝食を食べ始めます。

 サフィーたちは一口食べると勢いを止めずに口の周りを汚して、泣きながら笑って、幸せそうに朝食を食べています。その光景を見ると私も涙が出てきそうです。


「リリィ様、ただいま戻りました」


 私の横に現れたのはバエルです。

 私が寝る前に頼みごとをして何処かへ行っていましたが終わったんですかね。何をしていたのか知りませんけど。

 

「あの件ですが、大方完成しましたので後は私の力を分け与えた悪魔たちを悪魔界から引き連れて任せてきました。ついでに残り三柱(さんにん)の最上級悪魔の様子も見てきましたが、そろそろこちらに来られるようです」

「そ、そうですか……」


 い、言えません。あの時バエルが私に頼んだ内容を覚えていないなんて……。

 とりあえず今は楽しい朝食の時間です。そのことは一度忘れましょう。


「仕事もしてお腹が空いたでしょう? たくさん料理があるのでバエルも一緒にどうですか?」

「そうですね。それではお言葉に甘えて失礼します」


 バエルも戻ってきて楽しい時間を過ごす私たち。

 サフィーたちも救ったことです。あと残っているのはデオンザールの件。そろそろ本格的にデオンザールを探さないといけませんね。

第三章完結まではあと6~7話ぐらいを予定しております。

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