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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第三章 従魔激闘杯&古の巨人復活編

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従魔激闘杯

いよいよ明日『聖魔女』書籍版第1巻発売!!

 串焼きのおじさんが教えてくれた通り、屋台通りを抜けると大きな闘技場が見えてきました。

 闘技場自体はもう少し歩いた先にありますがここからでも十分な大きさであることがわかります。

 あの場所で従魔関係の大きな大会があると言ってましたね。せっかく街を訪れたのだから参加してみるのもいいかもしれません。

 まあとりあえず出場するかは別としてあの闘技場は間近で見てみたいですね。出来れば中も見てみたいかも。

 というわけで私たちは闘技場に向かって出発します。

 

 向かっている最中、相変わらずタルトやグラを珍しそうに遠くから見られていましたが、いい加減慣れました。まあ、そもそも見られているのが私ではなく二人ですので慣れるも何もないですけどね。

 というか、珍しいからと言って女の子をじろじろ見るのは良くないと個人的には思います。特に男性はあらぬ疑いをかけられても知りませんよ。

 見られていることに恥ずかしさを感じていたグラももう大丈夫みたい。タルトは……最初から気にしていませんでしたね。タルトが気にしているのはこの街にある美味しいものだけです。


 さて、こうして闘技場の前まで来てみたわけですが、実際に間近で見るとその大きさがよくわかりますね。他にも多くの人が闘技場を一目見ようとここを訪れています。この闘技場はテルフレアの観光名所でもありそうです。 

 あと大会も近いこともあってかこの辺も屋台が出ていますね。

 昔アドルたちと冒険していた時もこんな感じでお祭りみたいなことをやっていた街を訪れたことがあります。みんなで楽しい時間を共有できるのですから私はこういうのは好きですよ。 

 そういえばアドルたちは今頃何しているんでしょうかね。

 会いたいわけではありませんが気にはなります。裏世界の住人がアドルたちを襲撃してから結構時間が経ったし、ある程度レベルも上げ終えて別の場所へと移動しているかもしれませんね。 


 アドルたちのことを思い出すのはここまでにして。

 闘技場の前まで来たついでに中も見てみましょうかね。

 人の出入りもあるので立ち入り禁止というわけではないようなので大丈夫でしょう。


 中に入ってみるとこれまた広い。ただ、闘技場は円形に建てられているので迷うことはないと思います。寄り道せずに一周すれば今いる場所に戻れるはずなので。

 闘技場には従魔連れが多い──というかここにいる九割以上の人たちは従魔を連れています。残り一割の人を見つけるのが大変ですね。


 でも、こうしてみると色々な従魔がいるんですね。

 獣系の魔物やオーガ、ゴーレムにスライム、小型のワイバーンまで。それはもう色々です。

 確かに人だけでなく従魔たちのことも考えるとこの広さは妥当なのかもしれません。単純に人口密度が倍かそれ以上になりますし。

 それにしても、流石に知っててこの街を訪れるでしょうから大丈夫なんだと思いますけど、この街のことを何も知らない人が闘技場へ来たら驚いて何も言えませんね。

 もしかしたら失神するかも。いや、ここへ来る前に魔物と共存している街だと嫌でも知るでしょうから失神はないですか。

 

 従魔連れがこれだけ多いのは大会が関係しているからですね。

 そして、そのことについて書かれた紙が張り出されていました。


「第四回従魔激闘杯……」

「この大会は従魔同士が戦う大会みたいですね。こっちの紙には詳しいルールの説明が記載されているようです」


 従魔激闘杯という大会は、従魔のステータスの平均値を参考に階級を分けるそうです。

 レベルで分けてしまうと、同じレベルでも種族によってステータスに大きな差が生まれてしまう可能性もあるから、ステータスの平均値で分けているのでしょう。これなら多少差はあっても一方的な試合になることも少なくなると思います。


 ただ、そうなると私たちの参加はかなり難しいかも。

 タルトはもちろんのこと。グラも最上級悪魔ですからステータスはかなり高いです。

 ちなみにグラのステータスはこんな感じ。


───────────────

《個体名》 グラシャラボラス《性別》メス

《称号》〝第二十五の最上級悪魔〟〝古より生きる者〟

    〝武を極めし者〟〝聖魔女の従魔〟 

《ステータス》 《基礎±補正》【従魔契約前ステータス】

 レベル 1089 【3788】

 生命力 20万6761(11万761+9万6000)

          【64万2046(54万6046+9万6000)】

 魔 力 27万9059(15万8059+12万1000)

          【68万581(57万4581+10万6000)】

 持久力 19万7009(10万1009+9万6000)

          【61万4374(51万8374+9万6000)】

 攻撃力 18万9378(5万1378+13万8000)

          【72万6671(58万8671+13万8000)】

 防御力 19万8997(10万2997+9万6000)

          【60万7912(51万1912+9万6000)】

 精神力 26万4109(15万3109+11万1000)

          【60万827(50万4827+9万6000)】


 スキル

『生命力自動回復』『魔力・持久力自動回復』

『消費魔力激減』『物理・魔術威力上昇』

『多重障壁自動発動』『獄炎魔術』『氷獄魔術』『暴風魔術』

『地烈魔術』『神雷魔術』『暗黒魔術』『空間魔術』

『治癒魔術』『状態異常耐性』『覇気』『覇者』『支配者』

『破壊者』『魔力感知』『鑑定』『隠密』『隠蔽』『悪食』

『魔闘法』『五感強化』『長文詠唱破棄』『並列・多重詠唱』

『状態異常付与成功・思考加速・治癒効果上昇』

『聖魔女の加護(弱体化無効)』『白亜の魔道』

『漆黒の魔道』『最上級悪魔の加護』『古の加護』

  ───────────────


 これでも弱体化しているとはいえ、はたしてステータスの平均値が20万以上の階級があるのでしょうか。

 私の予想だと、絶対にないですね。

 一応、無差別級なんてものもあるみたいですが、これは参加者がいれば開かれるとのこと。おそらく期待するだけ無駄です。

 仕方ありません。参加は諦めて観戦することにしましょう。

 大会が始まるのは3日後。そして、その大会を観戦するためには席を買わないといけないみたいで、闘技場内にある受付でチケットを購入できるみたいです。


「あの、少しいいですか?」


 私に声をかけたみたいなので声の主の方を見ると、そこには金髪が綺麗な女性がいました。

 しかも超絶美人です。闘技場内にいる人もこの人を見ています。けど美人だからというわけではなく、どちらかと言うと有名人という感じですかね。


「えっと……私に何か?」

「あなたの隣にいる黒い子ってもしかして……ドラゴン?」

「ええ、はい。そう、ですが……」


 そう答えるとその女性は私の両手を握りました。


「やっぱり!? じゃああなたが噂になってた方ですね!」

「噂ですか……?」

「ドラゴンを連れた女の子がこの街にやってきたと」


 もしかしてそれって結構広まっています? と聞くと「従魔を連れている人の中ではこの話で持ち切りですよ」と答えてくれました。

 そ、そこまで広まっていたんですか……。

 タルトと一緒に行動するのは不味かったかなぁ……。けど今までずっと一緒にいましたし、私もタルトと一緒じゃなきゃ嫌だったからなぁ。 

 ちなみにグラのこともお見通しのようで、私の耳元で「もう一人の子、上級悪魔とか言われているけど本当は最上級悪魔なんでしょ?」と。

 本人は勘と言っていましたが、当たっていますし驚きを通り越して怖いですね。でもグラが最上級悪魔だということは言いふらさず内緒にしてくれるそうです。


「あっ、ごめんなさい。ドラゴンを連れている子と会って興奮したせいか自己紹介を忘れていました。私は"カリーナ・ストラウス"と言います。一応この街の領主の娘です」

「どうも。私はリリィ・オーランドと言います」


 ……って、自己紹介をしてくれたので私も普通に自己紹介をしましたが、カリーナさんって領主の娘さんだったんですか!? 

 そんな人が闘技場みたいな戦いを求める人たちが集う場所に来ているなんて大丈夫なんでしょうか。


「ああ、心配しなくてもこう見えて私結構この闘技場を訪れているので。屋敷の人たちにも闘技場の下見に行ってくると伝えてきました。それはそうとリリィさん! 一つお願いが!」

「な、何でしょうか?」


 すると再びカリーナさんは私の両手を握って必死にお願いをしてきました。


「その、よろしければリリィさんのドラゴンを触ってみたいんです。ドラゴンは魔物の中でもかなり上位の部類に入ります。人前に現れることも少ないですし何より強い。従魔にするのが最も難しいとされています。それでも一生のうち一度は触れてみたいと思っていました。そんな時リリィさんの話を聞いたのです。しかもリリィさんが連れているのはドラゴンの幼体! ドラゴンの幼体はある程度成長するまで人前に出ず自分の巣で暮らします。だから幼体を見られるのは奇跡に等しい事なのです!」


 カリーナさん、物凄く熱弁しています。

 その勢いに圧されるほどです。

 タルトは別にドラゴンの幼体というわけではないんですけどね。むしろ成体で大きすぎると一緒に冒険できないから今の大きさになっているだけであって。

 まあ今はそんなことどうでもいい事ですね。

 それよりもカリーナさんです。

 カリーナさんは一生のお願いと言わんばかりに私に目で訴えかけてきています。そんなことせずとも言ってくれれば触らせてあげるのに。


「タルト。この人はカリーナさんと言うのですが、カリーナさんがあなたのことをなでなでしたいそうです。いいですか?」

「キュイ!!」


 タルトから許可を貰ったのでカリーナさんに手渡してタルトを預けます。

 カリーナさんは大切に抱えてタルトの頭や体を撫でています。その表情はもう感激して言葉も出ない感じです。

 思う存分タルトを堪能したのかカリーナさんは満足した表情でタルトを返してくれました。


「ありがとうございました。このような貴重な体験、死ぬまで忘れません」

「大袈裟ですよ。また撫でたくなったら言ってください」


 そうだ。カリーナさんは領主の娘さんですからこの街についてもよく知っているでしょう。聞いてみたいことがあってのでカリーナさんに聞いてみます。


「ところで、少し気になったのですが街の中にたくさん従魔連れがいますけど大丈夫なんですか? 魔物を強く敵視するマリアオベイルという国があるので」

「ああ。それなら大丈夫です。このテルフレアだけは特別ですから」


 カリーナさん曰く、父である領主さんがマリアオベイルの偉い人と繋がりを持っているようで、その方からマリアオベイルの皇帝に進言した結果、テルフレアとその周辺にいる魔物はマリアオベイルの標的にはならないそうです。

 よくそれが通ったなと思いますが、そういうことなら不安になる必要はないですね。従魔連れが多いのも納得できます。


「そういえばリリィさん。何処かへ向かわれるようでしたが」

「大会を観戦するために席を買おうとしていました」

「そうだったんですか。私の我が儘のせいでお時間を取らせてしまい申し訳ないです。ですが、そういうことでしたら早く行かなければ」

「えっ、どうして──」


 すると──


『只今をもちまして従魔激闘杯の観戦席の予約が終了しました! 全日程満員です。皆様ありがとうございます。それでは大会当日をお楽しみに!』


 という声が闘技場一帯に響き渡りました。

 席の予約は私がテルフレアを訪れる一週間ほど前から始まっていたらしく、たった今その予約が終わってしまいました。

 大会の観戦は出来ないようですね。残念ですが過ぎたことです。観戦は出来なくなったがその分デオンザールを探す時間が増える、そう切り替えましょうか。

 

「いやぁ、間に合わなかったみたいですね」

「本っ当に! 申し訳ございません!」


 カリーナさんは深く頭を下げました。周りの人も見ているのですからこの光景は少しまずいんじゃないかと……。 


「あ、頭を上げてください。領主の娘さんが私みたいなこの街の住人じゃない旅人に頭を下げるなんて……。もとはと言えば私がこの街に来るのが遅かっただけですから」

「いえ、私のせいです。私が我が儘を言ったばかりに。その……この程度で許されるとは思っていませんが、私が父に事情を説明して特別席での観戦を出来ないか聞いてみます」


 観戦できる席は一般席の他にも貴族などが利用する特別席が存在するみたいで、カリーナさんがその特別席を用意できないか領主さんに聞いてみるそうです。

 

「じゃあ、図々しいお願いかもしれませんが頼めますか? やっぱり私も大会は見たいので」

「はいっ! 必ずリリィさんの席を用意します! それで……もしよろしければお詫びも兼ねて今夜我が家に来ませんか? 夕食やリリィさんのお話など聞きたくて──って私の方が図々しいですよね」

「招待していただけるなら喜んで行きますよ。私もこの街に来て間もないのでこの街のことなど聞かせてくれたら嬉しいです」

「本当ですか!? では案内します。ついてきてください」


 そして私はカリーナさんの案内で領主の屋敷へと向かうのでした。









 リリィとカリーナを見つめる一人の男性が居た。


悪い虫(おとこ)なら排除しようとしたが、女ならまあいいか。ああ、カリーナ。待っていてね、必ず君を手に入れる。()()()()()()()()()()を従えてね。フフフ……」


 テルフレアに脅威が迫っていることをリリィたちはまだ知らない。

※今話に入れることのできなかった、どうでもいいかもしれない補足

グラには《称号》"魔道を探求せし者"がないにもかかわらず、詠唱系のスキルを所持しているのは、大昔に偶然手に入れた"スキルの書"というアイテム(読めば書かれているスキルを獲得できる貴重な本)でスキルを獲得したから。


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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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