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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第三章 従魔激闘杯&古の巨人復活編

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新たな街へ

新章 従魔激闘杯&古の巨人復活編 開幕です。

 海を渡り、エルトリアさんとロザリーさんに出会って共にアルファモンスのダンジョン攻略をした。

 あの日々は私にとって非常にいい思い出になりましたし、二人には及ばずとも更に力をつけることも出来ました。

 ただ、途中で攻略を断念することになってしまいました……。

 裏世界の住人がこちらに来てロザリーさんを襲い、エルトリアさんが追い返すもロザリーさんの体に何か残したのかロザリーさんの意識は未だ目覚めることはない。

 許せないと思いましたが、エルトリアさんでも倒すことが出来ないのであれば私など敵うはずもありません。 

 まあ、攻略が中断になったことをどうこう言っても仕方ありません。

 それに、エルトリアさんも言っていましたが今回は一時中断という形になっただけです。いつかは再開するということですからそれまでにもっと力をつける。エルトリアさんにもそう約束しましたからね。

 

 そして、ダンジョン攻略が中断になり、エルトリアさんたちと別れてから5日が経過しました。

 私はまだアルファモンスに滞在しています。

 ダンジョン攻略もいいですが、ここはそれ以外にも美味しい料理や可愛い洋服など色々なものがあります。全てを見るには時間が必要ですからね。力をつけなければいけないと言いつつも、せっかく訪れた街を観光しないのは勿体ないです。

 エルトリアさんやロザリーさん無しで観光するのは少し寂しいですがタルトやグラがいます。

 タルトはこの5日間で美味しいものをたくさん食べれて満足そうにしていましたし、グラには似合う洋服を試着させたり私が楽しんでいました。

 エルトリアさんと一緒にいた時は私が着せ替え人形のようになっていましたが、今ではエルトリアさんの気持ちがわかる気がします。

 

 さて、まだまだ満喫しようと思えば出来るのですが、流石にこれ以上長居するとアルファモンスに住みたいと思ってしまいますのでそろそろ出発する時ですかね。

 アルファモンスに居ればある程度は必要なものが揃いますし、街の中にダンジョンがあるから資金調達にも困らない。すごく暮らしやすいところなんですよ。

 でも、バエルのように私に仕える他の従魔──私自身どんな従魔なのか知りませんが──が別の地で待っているようなので会いに行かないといけません。

 謎ですよね。私の知らない間に従魔契約が済んでいる。しかももう一人の私がそれをやったとバエルは言ってましたね。


 いや、もう一人の私って何?


 よくよく考えるともう一人の私という存在がすごく気になります。違いますね、あの時は割り切ってましたがよくよく考えずとも気になりますよ。

 それでもバエルは教えてくれそうにありませんし──


「グラはもう一人の私と面識はあるんですか?」


 休憩するために立ち寄ったカフェでグラに聞いてみました。


「バエル様から話は聞いたことありますが実際にお会いしたことは……」


 グラも会ったことない、と。

 まあもう一人の私が召喚したのはバエルだけみたいなのでグラは召喚していない。そもそもグラはバエルが悪魔界から連れてきたので召喚とは別でしたね。それならグラが面識ないのも納得できます。

 知っているのはバエルだけだからやっぱり問い詰めよう!

 なんて思ってもこの場にバエルはいませんし……。仮に問い詰めても上手くはぐらかされて終わるだけだと思います……。今は気にせずバエルの言う通り会える日を待つことにすべきですかね。

 

「ところで、バエルはいつになったら戻ってこられるんですかね」


 5日経っても連絡がこないバエルはどうしているのか考えながらも紅茶を一口飲もうとカップに口をつけた時──


(リリィ様、連絡が遅くなりました。現在破損した依り代の修復は終わっています。あとはもう少し調整するだけですね。時間はそうかからないと思います)


 びっくりしました。それはもう本当にびっくりして危うく口に含んでいた紅茶が変なところに入ってむせそうになりましたよ。

 突然バエルの声が聞こえました。ですがこの場にバエルの姿はありません。声が聞こえたのは頭の中で、です。裏世界の住人が話しかけてきた時と似ているような気もします。


(突然のことで驚かせてしまい申し訳ございません。これは"念話"というもので従魔契約をしていれば主人と従魔の間のみという条件はありますが言葉を口に出さずとも念じれば会話が可能となります)


 なるほど。ということはタルトとグラにも念話が可能になる。

 試しにグラ相手にやってみましょう。


(グラ、聞こえますか?)

(は、はい! 聞こえています!)


 おおっ、ちゃんと会話ができています。

 タルトにもやってみましたが、タルトの場合は「キュゥ!」と鳴き声で返事をしてしまいました。まあ通じているから返事をしたので一応会話は可能ですね。 

 悪魔界という何処にあるのか分からない場所──私が想像するに別の世界?──にいるバエルとも念話が可能なので距離的な問題も考えなくていい。

 これがあれば他の場所にいる私の従魔たちとも会話ができるのでは?

 そう思いましたが、バエルと同様に再契約しないと使えないみたいで彼らの居場所を聞き出すことはできないとバエルが言っていました。

 

(なら、次は何処に向かいましょうか。手掛かりもないですし……)

(それならここより北西に【テルフレア】という街があります。そちらへ向かうのはどうでしょうか)

(何故そこなんですか?)

(実はタルト殿と私以外のリリィ様に仕える従魔の気配をその方向から微かですが感じていたからです。この感じだとおそらく"デオンザール"でしょう。私たちが別れたのはもう遠い過去の話ですので忘れていましたが、リリィ様と再会を果たした時、デオンザールとはその辺で別れていたことを思い出しました)


 結構大事なことだと思うんですけれども。それを忘れていたって……。

 バエルは私以外に興味無さそうな感じですので忘れていたのもわからなくはないかな。こう言ってはあれですが、バエルは私や興味を持ったもの以外は心底どうでもいいと思っているタイプでしょう。

 それと、バエルはデオンザールという方をあまりよく思っていないらしく出来れば後回しにしたいそうです。

 理由を聞くとデオンザールは知的なバエルとは正反対の性格。簡単に言えば根性論で解決しようとする脳筋な方だそうで、暑苦しくて面倒くさいから好きじゃないと。

 リリィ様と一緒に旅が出来るというのに、すぐにそんな暑苦しい奴と再会するなんて……と不満を溢していました。


 でも実力は認めているみたいです。

 バエル曰く、タルトとバエル、その他4体の従魔の実力を比べるとデオンザールは3番目に位置するそうです。ちなみに1番はタルトで2番はバエルらしいです。

 個人的には順番をつける必要はないと思うんですけど、やはり複数の者が一人の主に仕える者なら序列は気にしてしまうのでしょう。

 ただ、バエルはああ言いましたがこの序列も人によって異なるらしく。

 どうやらタルトが1番なのは揺るがないみたいですが、他は自分が2番目だと言い張っているとか。タルトは他の従魔からもそれだけ認められているということですか。当の本人はバエルのこととか何も知らないみたいですけど。

 この論争にバエルは現実を見てほしいものですと呆れているそうです。

 いつか全員が揃った時には誰が2番目に強いか決めようなんてことが起こるかもしれませんね。

 いや、きっと起こるのでしょう。他の従魔がどんな姿をしているかわかりませんが何となくそんな風になるのが予想できます。その時はタルトと一緒に観戦することになるのかな。


 とまあ、それはさておき。

 次の目的地はテルフレアという街ですか。

 デオンザールがそのテルフレアにいるのかどうか。

 バエルに聞いてみましたが、どうやらそれはわからないみたいで。

 彼らが別れたのがテルフレア付近──というか別れた当時はテルフレアという街は存在せず、そこは森林地帯だったそうです。その森林を開拓してテルフレアが出来た。だからその近辺にいるのではないかと。

 まあバエルも気配を微かに感じただけで確実にデオンザールがテルフレアにいるとは断言していませんでした。

 それでもバエルがテルフレアを勧めたのはデオンザールが居ようが居まいが新しい街には新しい発見や驚きがあると私のことを想っての提案だそうです。


 それにしても『機神の塔』にずっといたバエルがどうしてそんな情報を知っているのか。

 その答えはどうやら悪魔界に生息する下級~中級悪魔を使って外の情報を得ていたからだそうです。

 自分で情報収集をやらないのか疑問に思いました。ずっとあの場所に籠らずに外に出ることも出来たのに。

 しかし、バエルはもう一人の私に命じられていたので動くつもりはなかった。結果的に出会えましたが出会えない可能性だって──ああでもこの再会は偶然ではなく必然とか言ってましたね。

 まあそれはいいとして。

 役に立ちたいと願う悪魔たちを使って外の世界の情報をたくさん集めていた。これは主に私のためだそうで非常にありがたい限りです。

 ちなみに、バエルの役に立ちたいと願う悪魔たちの真意はバエルに力を分け与えてほしいからみたいで、階級の低い悪魔はそれで強くなるのだそうです。

 もちろん自分の努力で強くなる方法もありますが、力を分け与えられて楽に強くなれるのであればそれに越したことないだとか。一応働きに応じた報酬を払ったのかバエルから力を得た悪魔は数体いるそうですよ。


 バエルは他に三体悪魔を連れてくると言っていたので私はてっきりその中から連れてくるのかと思いました。でもどうやら連れてくるのは最上級悪魔みたいで……。

 バエルにグラシャラボラス。最上級悪魔が二人いるだけでも十分な戦力になります。私とタルトもいれば大抵の戦いには勝利できるでしょう。

 更には他に私の従魔が4体もいるんですよ。今後のことを考えると過剰な戦力増加な気もしますね。

 でもまあ、一緒に冒険する人数は多い方が楽しいですから増えても構いませんか。戦力が増えても困るわけでもありませんし。


(連れてくる悪魔たちの説得は出来ているんですか?)

(予定していた三柱(さんにん)のうち二柱(ふたり)は快く引き受けてくれました。ただ残る一柱(ひとり)は少々苦戦してまして。ですがご安心を。とっておきのエサがありますので引き受けるのも時間の問題です)


 エサという言葉が気になりますが順調ならそれでいいです。


(でも無理強いは駄目ですよ)

(彼にとってはこれ以上にない好条件なので断る理由はないと思います)

(そうですか。ちなみにその好条件とは?)

(リリィ様の配下になる代わりに好きなだけ私と勝負できるというものです。もちろん相応の仕事をした後に限りますが。彼は私にしつこく勝負を挑んできます。ですがその辺にいる悪魔と違って私と対等に戦える数少ない強者です。必ずやリリィ様のお役に立てる──いえ、是が非でもお役に立たせて見せましょう)


 そういえば、エルトリアさんの従魔であるアスモデウスさんもバエルと度々勝負していたと言っていましたね。

 確か勝負を挑まれるのはバエルが一番最初に生まれた最上級悪魔だから。

 でも待ってください。バエルと対等に戦える悪魔……。

 前にアスモデウスさんがバエルと対等に戦えるのは悪魔界の中でも王と認められた者と言っていたような。

 つまり、そういうことですよね。


(バエルが連れてこようとしているその方はもしかして悪魔界の王ですか?)

(流石はリリィ様。私も彼も王という肩書に微塵も興味はないですが、周りの悪魔からはそう認められていますね)


 バエル並みの強さを持つ悪魔が私の配下になる。

 実際になるかはその悪魔次第というところもあると思いますが、そうですか……。

 ただでさえ強いのにその方と他に最上級悪魔が二人くる、と。この二人は悪魔界の王というわけではないようですが……。

 ……よし! もう考えるのは止めましょう! 私はただ新しい仲間が増えることを楽しみに待つだけです。




 そして翌日。

 私たちはアルファモンスから次の目的地であるテルフレアへ出発します。

 テルフレア行きの馬車はアルファモンスから出ていますが、距離も結構あるみたいですし料金もかかります。

 馬車に乗ってゆっくりのんびり行くのもありかなと思いました。

 でも私には馬車よりも徒歩よりも速い移動手段があります。その方法で行けばテルフレアなんてすぐに着きますよ。

 短い間でしたがいい思い出をたくさん作れたアルファモンスに別れを告げ、本来の大きさに戻ったタルトの背中に乗って空を飛んでいきます。

 あれだけ広かったアルファモンスもあっという間に小さく見えますね。


 それからしばらくして地上に大きな街が見えてきました。

 あれがテルフレアなのでしょう。

 デオンザールを見つけないといけないのもありますが、やはり新しい街を訪れるのはワクワクしますね。テルフレア、今からすごく楽しみです。

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