上陸!【アルファモンス】
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三日間船に乗り海を渡って訪れた街──【アルファモンス】
この街は別名『ダンジョン街』と呼ばれているようで、今回の目的である『神々の塔』も【アルファモンス】にあります。
船を降りると活気溢れる街と住民が私たちを出迎えてくれます。穏やかに吹く潮風も心地良くていいですね。
そして、視線を街の中央に移すと雲の上まで突き抜けているのでしょうか? 天高く聳える一本の塔があります。
「あれが『神々の塔』……」
遠目から見ても十分存在感があります。間近で見たら更に存在感を感じるでしょう。
誰も攻略できていないダンジョンと聞くと俄然やる気が出ます。絶対に攻略しようという意欲を掻き立てられるからでしょうか。
さて、ここで立ち止まっていても始まりません。早速あの塔に向かって出発──
「リリィよ。御主、何か勘違いしておらんか?」
「えっ?」
勘違いなどしていないと思いますが。
今見えているのが『神々の塔』で間違いないですよね?
そういえば【アルファモンス】に上陸する前に船の甲板からはあの塔と似たようなものがいくつかありました……。
「あれは『神々の塔』ではないぞ」
「そうなんですか? 私はてっきりあれが『神々の塔』だと」
「まさか下調べせずにここへ来たと言うのか?」
そうですと言うとエルトリアさんは溜め息を溢しました。
だって、言ってしまえば行き当たりばったりの旅だったので下調べとかする余裕はなかったですし。現地についてからでも遅くないかなって思ってましたから。
そんな私にエルトリアさんは詳しく【アルファモンス】のことを教えてくれました。
「ここ【アルファモンス】は世界でも三本の指に入るほどの面積を持った街じゃ。この街は東西南北と中央の全部で五つの区画に分かれておる。ちなみにここは南区画じゃな。そして、それぞれの区画の中心に塔のようなダンジョンが存在しておる。まさにあれじゃな」
エルトリアさんは南区画中央にある塔を指差します。
「あの塔は確か──」
「南区画は『獣神の塔』ですね」
「うむ。あれは『獣神の塔』であり『神々の塔』ではない。故に攻略する必要はないと──いけばどれだけ楽だったことか」
再びエルトリアさんは溜め息を溢しました。
エルトリアさんの表情から察するにどうやら『神々の塔』攻略は簡単にはいかないみたいですね。
まあ、もともと誰も攻略できていない時点で簡単にいくとは思っていませんでしたが。
「『神々の塔』への挑戦には条件のようなものがあるとか?」
「察しがいいではないか。御主の言う通り『神々の塔』へ挑むには条件がある」
その条件とは中央区画にある『神々の塔』以外の東西南北に存在する四つの塔を先に攻略するということ。
この手間があるからこそ『神々の塔』は未だ誰も攻略できていないと言われ続けているらしいです。
あとは単純にそれぞれの塔の攻略が難しい。
塔の最上階にいるボスは一筋縄ではいかないようです。入念な準備をした上で挑戦するべきだとか。
ちなみに、現時点で『神々の塔』に挑戦権を持っているのは、全部で18組のパーティーだけのようですが、そのほとんどが尋常じゃない魔物の強さに攻略を断念しているとか。
また、現在滞在中の冒険者で挑戦権を持っているパーティーがあるみたいですが、そのパーティーのリーダーはアドルと同じ勇者らしいです。
その勇者はどんな方なのか。アドルみたいな方でないことを祈りますが、それよりも『神々の塔』への挑戦権を持っているパーティーが20にも満たないことに驚きです。
しかしながら、これだけ冒険者が集まっているのに、未だに18のパーティーしか挑戦権がないというのが『神々の塔』含め、全ての塔を攻略するのは難易度が高いというのが実感できますね。
はたして私たちは『神々の塔』を攻略することは出来るのでしょうか?
エルトリアさんとパーティーを組んだので戦力に関しての不安は多少消えていますが、それでも前人未踏の場所で通用するかどうかはわからない。
ただ、とりあえず行ってみないとわからないことでもあります。エルトリアさんほどのレベルであれば案外簡単に攻略できるかもしれませんし。
「条件を満たすまで結構時間がかかりそうですね……」
「【アルファモンス】は広大な街じゃしな。他の区画に行くだけでも馬車に乗らないと半日かかると言われておる。北区画なんて南区画からだと一日かかる計算じゃ」
移動の時間と塔を攻略する時間を考えると月単位で考えないと駄目かもしれませんね。
逆を言えば数ヶ月はエルトリアさんの指導を受けられることにもなります。
ここは強くなれる機会が増えたという風に考えましょう。
「とりあえずは『獣神の塔』の攻略に集中しようではないか。『獣神の塔』は他の区画の塔より比較的難易度は低いみたいらしいからな」
「わかりました。では『獣神の塔』から行きましょう。早速向かいますか?」
「そう焦るでない。まずは腹ごしらえと情報収集、そして作戦会議じゃ。朝早く到着したから腹が減ってるじゃろ?」
確かに朝食を取るにはまだ早い時間に到着しましたからね。両手で抱いているタルトもお腹ペコペコなのか元気があまりありません。
「タルト、街の方から食欲をそそる美味しそうな香りがしてお腹が空きましたよね?」
「キュウ……」
「では朝ごはんにしましょう。私もお腹が空きました」
「キュイキュイ!!」
タルトは大喜びで声をあげます。その姿と嬉しいそうにしている顔を見るだけで癒されますねぇ。自然と口角が上がってしまいます。
「決まりじゃな。ロザリー、どこか良い場所は──」
「お任せを。船内にいる時に事前に調べておきました」
食い気味で答えたロザリーさんに私は少し驚き、エルトリアさんは「何やら随分と気合いが入っておるな……」と呟いてました。
「さすがはロザリーじゃな。して良い場所はあったか?」
「この南区画は【セルビス】と同様に出店が充実しています。そしてその出店の数は【セルビス】以上。主でも食したことのない未知なる料理もあるはずです」
「そうか、それは楽しみじゃな」
「では出店の多い通りまで行きましょう。時間が限られている出店もあるので」
そう言うとロザリーさんは私たちを置いて若干早歩きで進んでいきました。
「ロザリーさん、心なしか生き生きしているように見えます」
「ああ見えて観光地を巡るのが好きじゃからな。疲れを癒すようにと数日の休暇を与えるとすぐに何処かへ行ってしまう。帰ってきたらたくさんの土産を持ってくるしな。まあ、妾はロザリーが楽しそうにしていればそれで構わん」
「皆さん、早くしないと置いていってしまいますよ」
「ほれ行くぞ、これ以上待たせてはロザリーに悪いからな」
私たちはロザリーさんのもとへ向かいます。
どうやらダンジョンの攻略はもう少し先になりそうです。
しかし焦っても仕方ありません。せっかく新しい街に来たのですからまずは観光などをして楽しみましょう。





