乗船
魔物の素材を売って多額の資金を得たので私は思う存分【セルビス】の観光を楽しみました。
まずは洋服を見に行きました。
一応魔術で体や衣服は洗えますし清潔感も保てますが、まともな衣服は今着ているものだけですので後々の事を考えると絶対に困ります。
なので時間までとりあえず洋服を見ることに。
色々と見て回りましたが【セルビス】は港町だけあって他の街から多種多様な品物を仕入れているのでしょう。あまり見たことない珍しい洋服や可愛らしい洋服がたくさんありました。
選ぶのにかなり悩みましたよ。
時間がかかりすぎても他の場所の観光が出来なくなるので気に入ったものは迷わず買いました。
わかってます。収入があったからって後先考えずお金を使うのは良くないということを。
でも三年ぶりのお買い物なんですよ? 少しぐらい財布の紐を緩ませて奮発しても良いじゃないですか。
あと、金貨だと出店などで食べ物を買う時が大変なので両替の意味でも洋服屋を利用しました。
まあ一番の理由は洋服が欲しかったからですけどね。
新しい服に気分が高まり満足している私が次に向かったのは出店です。ここで両替した銅貨や銀貨が役に立ちますね。
ちょうど時間的にもお昼だったので至るところから美味しそうな匂いがしました。
私の胃袋にも限界はあるので気になったもの全てを食べることは無理です。
なので私は本当に食べたいもの、もしくは見たことない食べ物を選んで食べました。タルトは消化が早いのかいっぱい食べましたけどね。
私が食べたものの中で特にこれは美味しかったなと思ったのはタコヤキ(?)という食べ物でした。
どうやらタコヤキという食べ物は遠い東の国にある料理みたいで、丸く整えた生地の中にタコという海の生物の足を切って入れたものです。
これもまた港町ならではなのですかね。他にも色々な国の料理が【セルビス】にありましたよ。
それで、タコヤキを作ってる店主さんにタコの現物を見せてもらいましたが八本ある足が一本一本うねうねしていて少し気持ち悪かったです。
でもタコヤキは美味しかったです。
生地の外はカリカリ、中はアツアツのトロトロ。
タコも歯応えが良く気持ち悪いという印象はすぐに消えました。まあ、もう一度現物を見たら少し気持ち悪いと思いましたけど……。
タコヤキの上にかかっていた甘口のソースも絶品でしたね。タルトも美味しい物が食べれてとても満足していました。
それからも【セルビス】の街を観光し、出航の時間も近付いてきたので船着場へと向かいました。
船着場には当然のことですが船がたくさんありました。
しかし一際目立っていた大きな船──他の船など足元にも及ばないほどの豪華な船です。あれが【アルファモンス】行きの船なのでしょうか。
だとするとなかなかにお金がかかっていますね。
見た感じではとても頑丈そうなので魔物が襲ってきても沈没する可能性は低いと思いますけど。
眺めていても仕方ないので移動しましょう。
場所は……少し離れた場所に乗船の受付をする場所があるようなのでそこへ向かいます。
建物の中に入ると一般の観光客や武具を装備した冒険者たちがいました。人数はそれなりに居ますね。
そして【アルファモンス】行きの船の受付場所を見つけたので早速受付をしようと思ったのですが──
「どういうことだよ。レベルの高い冒険者は【アルファモンス】行きの船だと護衛を条件に料金が免除されるんだろ? 俺たちのパーティーは全員90レベルは超えてるんだぞ」
問題が起きてるようですね。
話の内容は料金の免除がされないことですかね。
冒険者ギルドで私の対応をしてくれたお姉さんが言ってましたけど、レベルが高い冒険者だと料金は一部免除されます。
料金表が見えたので確認してみるとレベルが200を超えていれば全額免除のようですね。
どうしてこう書いているのにレベル90で全額免除の対象になると思っているのでしょうか。
周りの人にも迷惑をかけているのですぐさま止めて欲しいです。それかこの場から立ち去って欲しい。
「申し訳ございませんが規則ですので。レベルが90ですと料金の半分を支払ってもらわないと……」
「レベル90で敵わない魔物なんて出るわけないし、仮に出たとしても普通に考えて十分な戦力だろ」
いや、規則だから駄目なのですよ?
ここで例外を作ってしまったら今後訪れる冒険者も同じことするじゃないですか。自分たちだけ特別扱いにしてもらうなんて図々しいにも程があると思います。
「それにさっき来てた白い服の女とその連れは全額免除になったんだろ。強そうにも見えなかったし、そいつらが全額免除なら俺たちだって全額免除でいいだろ」
その二人はエルトリアさんとその執事さんのことですよね。
強そうに見えなかったって本当に言っているのでしょうか? もしそうなら見る目がないと思います。
まあ私は一度ステータスを見ているのでエルトリアさんの強さを知っていますけどね。
しかし、それでもエルトリアさんから溢れる雰囲気を感じ取れば明らかに只者ではないとわかるはずです。
「先程訪れた方々は条件を満たしていましたので規則に則り──」
「規則規則って、そんなに規則が大事かよ」
大事だと思いますよ。
「いいから俺たちも全額免除にしてくれよ。いいだろ? ちょっとぐらい」
もう見ていられません。同じ冒険者であることが恥ずかしいぐらいです。
「あの、他の方の邪魔になるので場所を避けてもらえますか? あと周りの人に迷惑をかけるのは止めた方がいいですよ」
「なんだ、このガキ。俺たちは今それどころじゃないんだ。さっさとどっかに行けよ」
「じゃあとりあえず受付だけさせてもらって良いですか?」
そう言って私は聞き分けのない冒険者たちの前に出て、受付の方に冒険者ライセンスを渡します。この際ステータスが周りに知られても問題が解決するのであれば構いません。
「リリィ・オーランド様ですね。冒険者ライセンスをお返しします。リリィ様はレベルが条件を満たしているので料金は全額免除になります」
「はぁ!? なんだよそれ!? こんなガキが俺たちよりも上だって言うのか?」
本当に面倒な人たちですね。
論より証拠です。私は自分の冒険者ライセンスを見せてあげます。
「れ、レベル1,082!?」
「言っておきますがレベル90なんて大した自慢になりませんよ。せめて200ぐらいはないと」
「………ッ!」
「良いですか、あなたたちの行動は他の人たちに多大な迷惑をかけています。なので素直に料金を払うかここから立ち去ってください」
説教みたいになりましたね。
そして冒険者たちは素直に言うことを聞いてくれました。
予想では逆ギレして襲い掛かってくると思ったのですがレベルの差を知って止めたのでしょうか。そこは物分かりが良いのですね。
さて無事に受付も終わり、ちょっとした問題も解決したところで【アルファモンス】行きの船に乗るとしましょう。
楽しい船旅の始まりですよ。





