【セルビス】に到着
本日2本目の投稿になりますので1本目をお読みでない方はまずそちらを読むことを推奨します。
新章 最難関!?神々の塔攻略編 スタート!!
村を後にしてから私はタルトに乗って【セルビス】へと向かいました。
タルトに乗れるのかという疑問。
そこに関しては心配ありません。
元々タルトは巨大なドラゴン──厳密に言えばカタストロフドラゴン──であり、今までは共に行動しにくいので両手で抱えられるぬいぐるみ程度の大きさになっていただけです。
姿を小さく出来るなら大きくもなれる。
さすがに本来の大きさでは目立ちすぎるので人が一人乗れるぐらいの中型に変化していますけどね。
空の旅を始めて3時間が経つ頃には大海原が見えてきました。
このまま飛び続けるのも考えましたが、タルトに無理をさせたくありません。タルトが行けると言っても私は止めます。
ゆっくり船旅を満喫するのも悪くないでしょう。たまにはそういう日も必要です。
──というのは建前で私は泳げないので万が一落ちたら大変なんですよね。魔術でどうにかなる気もしますけど。
そんなことはさておき、いよいよ【セルビス】に到着します。
このまま【セルビス】正門に着陸しては他の方に迷惑をかけて大騒ぎになります。
もしかすると既に確認されて遅いかもしれませんが、見えないところに着陸してシラを切ればやり過ごせるでしょう。
私たちは【セルビス】から少し離れた場所に着陸して、そこからは徒歩で向かいます。
30分もしないうちに【セルビス】の正門が見えてきましたが衛兵さんでしょうか、少し慌ただしい様子です。
まあ、何が原因なのかは言わずともわかるでしょう。
「仮面の君、たった今この辺で黒いドラゴンが目撃されたが襲われたりしなかったか?」
一人の衛兵さんが心配した声で私に問い掛けます。
実はそれ私とタルトです。
なんて言えるわけないのでここは適当に──
「いいえ。特にそのようなものは見ませんでしたね。偶然遭遇しなかっただけかもしれません」
──と返しておきました。
衛兵さんは「そうか、それは良かった」と言って安心しましたが、ふとタルトの方を見ました。
「ん? このドラゴン……肌の色が黒いし……」
万事休すでしょうか……。
衛兵さんが見た黒いドラゴンがタルトと気付かれた場合、討伐するなんてことにならなければ良いのですが。しかし、従魔であることを証明すれば解決する話ですよね。
緊張しながら衛兵さんを見ましたが、
「でも大きさが全然違うな。報告にあったのはもっと大きなドラゴンだった。このドラゴンほどの大きさではない」
どうやら都合よく勘違いしてくれているようですね。
訂正すると面倒なことになりそうなのでここは黒いドラゴンとタルトは別物という認識でいてもらいましょうか。
「あの……私【セルビス】に用事があって来たのですが」
「ああ、済まない。では身分を証明出来るものを提示してもらえるかな? 一応この街の決まりなのでね」
どうしましょう。身分を証明出来るものは持っていません。
いえ、正しくは持っているけど期限が切れて意味を成さないですね。
無理なのはわかっていますが一応試しに期限の切れたライセンスを衛兵さんに見せました。
「うーん、この冒険者ライセンスは期限が切れてるなぁ。それに誰かから盗み取った可能性もある。悪いが別の場所に移動して詳しく話を聞く。同行してもらっても良いかな?」
嫌です、と言ったら確実に【セルビス】へ入ることは出来ません。というか断る理由は一つもありませんので言うことを聞いて衛兵さんについていきます。
「では、ステータスを見せてもらおうか」
「えっと、名前だけでも良いですか?」
私のステータスを見せたらきっと衛兵さんは驚いて椅子から転げ落ちます。
騒ぎにもなってほしくないのでここは名前だけ見せたいところです。
「別に構わないぞ。我々が知りたいのはこのライセンスに書かれた名前と君の名前が一致するかどうかだ。ステータスの数値は教えなくて良い」
それならと私はステータスを開き、名前のみを衛兵さんに見せました。
「リリィ・オーランド。このライセンスにも同じ名前が書かれているな。おい、このライセンスが隠蔽等で書き換えられている可能性は?」
「調べた結果そのような反応はありませんでした」
「……ふむ。ステータスに表示される文字や数値はその人間の存在そのものを表す。偽装するのは難しい。よし、君がリリィ・オーランド本人であると信じよう」
納得してもらえたようで何よりです。
そして、衛兵さんは机に水晶を置きました。キラキラと輝いていて大きさは両手で持てるぐらいの大きさです。
「これは犯罪者であるかどうかを判断する魔道具だ。君がリリィ・オーランド本人だとしても犯罪者かもしれないからな。【セルビス】に入る前にこれで検査させてもらうよ」
この魔道具は手を翳すとその人物のステータスから犯罪履歴を確認して赤もしくは青に光るようです。
赤に光れば犯罪者。青に光れば問題なしという判断されるそうです。
もちろん私は青色に光ります。赤色に光るなんて思っていませんので躊躇いなく触れました。
「犯罪者ではないようだな。では仮証を発行しよう」
衛兵さんは部屋から出ていき、しばらくして戻ってくると一枚の紙を渡してくれました。
「これは仮証と言って身分証の代わりになる。ただし有効期限は今日から三日間。その間に身分を証明できるものを用意するんだ。用意できなかったら銀貨一枚の罰金が発生するからな。払えなかったらこの街から追い出されることになるから覚えておくように」
「わかりました。身分証を用意できたらこの仮証はどうしたらいいですか?」
「この街の役所か……君は冒険者だったんだよな」
「はい、この街にも冒険者ギルドがあるならライセンスの発行をしに行こうかなと」
「なら仮証については冒険者ギルドでも対応してくれるから受付の人に伝えるといい」
色々と教えてくれた衛兵さんにお礼を言って私は【セルビス】の冒険者ギルドに向かうことにしました。
うっ…冒険者ギルド……。最初に伝えておくとギルドマスターは出てきません……。
それと今後の投稿についてですが、話のストックをまだまだ作っておきたいので毎日昼過ぎに一本の投稿となります。





