出発してから早十日、いよいよ!?
なんだかんだありましたけど私が最下層から出発して今日で十日が経ちました。
現在私は【オルフェノク地下大迷宮】の4階層目にいます。
そうです。あの400階層あるダンジョンの中を歩き続け、いよいよ一桁まで登り詰めました。
長かった──ようで短かった気もします。
この三年間は良くも悪くも充実してました。
まるで昨日のことのようにこれまでのことを鮮明に思い出せますよ。
娯楽のない日常。
ハズレたら口から虹が出る不味いご飯。
いつ崩れるかわからず安眠できないボロボロのベッド。
毎日が命懸けの生活。
魔物の攻撃によって失われる四肢。
………
……
…
あれ? 悪い思い出しかないような。
待ってください。もっと振り絞れば良い思い出の一つや二つ出てくるはずです。
えっと……『白魔道士』だった私が本来使えない『黒魔道士』の魔術を使えるようになりましたね。
使えてなかったら未だに私は最下層にある拠点で暮らしていた。それか魔物のエサになってさようならでしたよ。
あとは、忘れてはいけません。タルトとの出会いです。
今でこそ可愛いらしいサイズのドラゴンですが、初めて会った時は大きなドラゴンの姿でしたからね。
ステータスを見た瞬間はその数値に驚きました。こんなの人類が倒せる魔物ではないですよ、とか思ってましたね。
でもタルトが仲間になり、その恩恵を受けた私もステータスが飛躍的に上昇しました。
お陰さまで私も人外ステータスの仲間入り。
冒険者ギルドでライセンスを再発行する際は『隠蔽』でステータスを偽装しておかないと騒動になりそうです。
私のステータスが公になったりでもしたらパーティーの勧誘やら危険な依頼など斡旋されて自由を奪われてしまいますのでね。しばらくはタルトと二人旅をします。
タルトが仲間になって以降は特に何事もなく進み、次に起きた大きな出来事と言えばアドルたちと出会ってしまったことですね。
そういえば無事に生還することが出来たのでしょうか?
アドルは『勇者』ですからね。きっとあの銀髪の男性──名前聞くの忘れてた──の標的になってますよ。
命を狙われるのは『勇者』の宿命というべきか。
こればかりは私に関係ないので勝手に頑張ってくださいとしか言いようがありません。
ファイトですよ、アドル。せいぜい死なないように強くなってください。
さ、心に思ってないことを述べたところで──
えっ? いくら何でもそれは酷いのでは?
別に酷くありませんよ。
何度も言ってるように私はアドルたちが何処で何をして死のうがどうでも良いです。
でも、私が生きていることを知らぬまま死なれても面白くないですね。だからと言って会ってすぐに暴露するのも……。
どうせやるなら大々的にやります。
私がアドルたちを助けるために自ら囮になったと涙ぐんで語ってたなんて言ってたようですし。
捏造もいいところですよ。真実を知ったら周囲からの信用は一気に失うでしょうね。
というわけで、やはり死なれると困ります。アドルには死に物狂いで強くなってもらわないと。
さて、今までの出来事を振り返りながら進むこと30分。
やってきました、【オルフェノク地下大迷宮】の1階層!
おそらくダンジョンの1階層でここまで喜んでいるのは世界中を探しても私だけですよ。
出入り口へ向かう途中で四組の冒険者パーティーを見かけました。
レベル上げでしょうかね。三年前はそんなに【オルフェノク地下大迷宮】に挑戦する冒険者はいなかったです。
視線を感じたので相手側も私を見たでしょう。
そして【オルフェノク地下大迷宮】を単独で行動している存在に疑問を抱く。
普通こんなところに単独で挑むお馬鹿さんはいません。
そもそも冒険者なら危険を減らすためにパーティーを組むのが定石です。だから尚のこと私が気になっていたのでしょう。
だがしかし、私は無視します。気にもなりません。
私の足取りは自然と速くなります。
一歩、また一歩と歩み、奥の方から差し込む光を見つけた瞬間私は走り出していた。
間違いない。あれは──
【オルフェノク地下大迷宮】を抜けて視界に映った世界。
そよ風に揺れて心地よい音を奏でる木の葉。
雲一つない清々しいほどの青空。
煌々と照り付ける暖かい日差し。
「帰ってきた……帰ってきましたよ、地上に!!」
三年ぶりに感じた外の世界に思わず叫んでしまいました。
しかも両腕を大きく上げてですよ。誰かに見られてたらちょっと恥ずかしいかも──
なんて冷静になって考えている私の横には甲冑を纏う兵士二人の姿がありました。
……【オルフェノク地下大迷宮】の警備を行っている衛兵でしょうか。三年前はいなかったはずなのに。
今私の顔は恥ずかしさのあまり赤くなっています。『黒白の仮面』を着けているので兵士さんには見えていませんが。
兵士さんもどう反応したらいいか困っている様子です。
とりあえず……この場から離れましょう。居続けたら恥ずかしさが増す気がします。
コホン、それでは気を取り直して。
向かうは三年前を最後に訪れた街──【カルティエラ】
道は多分覚えているから大丈夫。駄目だったらタルトに乗って空から探せば良し。
というわけで【カルティエラ】に向かって出発!!





